記憶
今回はアルスとゼストの物語が中心となっています。
前回の更新日は…うん………
「アルス?」
「ゼスト様!」
アルスはゼストを抱き締める。
「どれだけ心配したと……!」
「ごめんごめん」
ゼストの低い声が鳴り響く。
「そろそろ離してくれないか?」
「すみません」
アルスがゼストから離れる。
「それと、敬語はやめてくれ。敬称もな」
「……………………わかったよ。ゼスト」
さすがだ。と言わんばかりの笑顔を向ける。
「では、ゼスト。魔王様に会いに行かなければ」
ゼストは嫌な顔をする。
「わかった……よ」
「もうそろそろこの代を降りる時間だな」
「父様、自分に努められるとは思いません。ですので、どこか遠い場所で見守っていただけないでしょうか。表向きとしては自分が父様母様を殺したことにし、裏ではどこかで生きていることにするのです。力は自分の力で充分ですので、寿命が尽きるその時まで自分を見守ってくださるならこの世界を守りましょう。」
「そうしなければ魔王の座に就かないということか。」
「はい。」
魔王は数秒間考えた結果了承した。部屋にアルス、ゼスト、魔王だけの状態にしこう伝えた。ただし現魔王から口出しはせず、魔力量が現魔王より多いゼストに封印と言う形で空間に閉じ込めてもらうことにすると。
ゼストも了承し、現魔王に忠誠を誓った。
その一か月後、儀式が行われた。
計画通り表向きには魔王の首を切り、その後ゼストが両親共に復活させ魔界と人間界の空間のはざまに閉じ込めた。ゼストはその時に封印の言葉を自身以外誰も知らない状態にした。
その夜、ゼストは眠りについた。アルスはゼストが眠りについたことを確認するとゼストの頭に手を近づけ、魔法を放った。
次の日ゼストは絶望に満ちていた。自身の両親をこの手で殺したこと。
昨日後悔もしなかったことを。
また次の日その次の日そのまた次の日も後悔していた。
自室で業務をこなすことになり、それが1週間続いた。
入室が出来た人物はただ一人、アルスだけだった。
「アルス…もう、前を向くしかないよな。俺の家族はもういない。だから、亡くなってしまった兄弟の心と共に、歩んでいくしかないんだよな。」
ゼストはいきなりアルスに発した。
「なあ、答えてくれ。俺は前を向いて生きるしかないんだ。どうすれば前を向ける。なあ、なあ、なぜあの時の俺は父様母様をこの手で殺すことが出来たんだ?なあ、なあ、なあ、なぜあの時の民は父様母様の死を悲しむよりも俺の魔王就任を讃えたんだ?なあ、なあ、なぜあの時の俺は………笑う子ことが出来たんだ…?」
ゼストは自身の髪をかきむしり続けた。アルスは止めようとしたが、ゼストの目があまりにも黒く闇に染まっていたので止められなかった。
十数分間続いた。
ゼストはパッと髪をかきむしることをやめ
「アルス。血が出てる。タオルをくれ。」
と言った。
「は、はい」
アルスは実感した。これが魔王の一族だ。これがこの世界に君臨する王だ。
ゼストは立ち上がり、ドアを開けた。
「俺は魔王だ。両親をこの手で殺した王だ。兄妹も全員死んだ王だ。」
そう、一言呟くと謁見の間へ向かった。
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ゼストは足を組み、謁見をしている民を見下ろしている。
「魔王陛下、魔王就任をされたことですしそろそろパートナー探しを始めてはいかがでしょう。」
「お前は……そういえば貴族の中にいたな。残念だが俺はまだ女を取るつもりはない。」
「ですが、女王がいることはこの世界の安定にもつながります。そのようなことはお考えではないのでしょうか。」
皮肉じみた言葉を魔王に言った。
「魔王である俺にそんなことを言っても良いのか?ダメだよな。最近の貴族はパーティーを開くだけ開いて家の財力を見せびらかし…そんなことをしているのにこの魔王にそんな言葉を使ってはいけないなんて知らなかったわけないよな~」
ゼストはドストレートに答えていく。
「そういうわけだから、お前の娘と俺を結婚させるのは諦めろ。」
最後に言い、貴族の男は帰って行った。
その後も謁見に訪れる様々な民と話していった。中には毎日通いいつ魔王が謁見の間に現れるかわからないから今日も来ないと思っていたなどと言う人もいた。
「今日はこのくらいにしておこう。アルス、戻るぞ」
「はい。」
こうして一日が過ぎた。
アルスは一人の男に向けてある手紙を書いた。
「 を連れてくる準備をしろ。我らの主が心待ちにしていらっしゃる。」