2つの世界
「肌見放さず持っておきたくて」
「そういうものなのか?」
「はい!」
「じゃあそれは今からもずっと持っておくことだ。
着いた。ここだ」
目で見ても果てがわからないほどの壁についている大きな扉がある。
「入れ。」
スタスタと歩いていくと建物に入った。そこはなんの飾りもない真っ白場所だった。
「俺から離れるな。」
そう言われ、曲がりくねった道を歩いていく。
着いた場所は両側にガラス越しの人の形をした何かたちが見える。
「こいつらは実験材料だ。ここを覚えておくことだ。この先にお前の居場所がある。」
「僕は一度もここで暮らすと言っていませんよ?」
「お前が言ってなくても俺には『絶対服従』だ。いいな?」
芳蘿は口がニヤリと笑った。
「仰せのままに」
頭を下げる。
「いい子だ。お前はここで魔力の限界を超えるのだ。」
ディランが連れてこられた場所は普通の大きさの部屋だ。
その部屋には手、足、首が固定される物がついており様々な線が後ろに置いてある機会に繋がっている。その他には窓、小さな机、木の椅子が置いてある。
「衣食住は提供する。あの椅子のベットというボタンを押すと椅子が倒れる。そこで寝ろ。
トイレと風呂はそこのドアの中にある。この部屋…この壁の中は全て監視されている。いいな?
こっち来い、他にも紹介することがある。」
白い壁が続く廊下を少し歩くとそこは訓練場らしき場所だった。
「お前にはここで体力の増量と魔法の実践をしてもらう。質問は?」
「あります。なぜ僕はここで鍛えなければならないのですか?」
「お前の願いを俺は知っている。もともとの主に会いたいのだろう?ならば大人しく俺に従え。願いは叶えてやるぞ。」
「主様に会えるのなら…!」
「その意気でがんばれ。明日から始めるつもりだ。今日は部屋に戻って休め。」
「わかりました。ありがとうございました。」
ディランは芳蘿に背を向けて歩いていった。
「さて…あいつの様子を見に行くか」
芳蘿の声が低くなった。
芳蘿が見に行ったのは実験室の一室だ。
「どうだ?暴走はないか」
「芳蘿様!暴走はありません。精神も安定しています。」
実験室には芳蘿含め大人が5人、少女が一人眠っていた。
「そろそろ魔力を魔王様に送れ。」
「承知いたしました。」
「あーあと、王子様が遂に手術を受けることになった。だから、こいつはとりあえず起こすな、何もするな。魔人王様に確認をとって処分することにする。いいな?」
「承知いたしました。質問をしてもよろしいでしょうか。」
「許す。」
「王子様が手術を受ける日はいつでしょうか。」
芳蘿が上を少し見て
「確か…来週だったはずだ。手術は向こうで受けられるらしい。」
「お答えしていただきありがとうございます。」
「では俺はこれで失礼する。こいつに何かあったらすぐに伝えろ。」
「承知いたしました。」
芳蘿は実験室を後にした。
芳蘿が向かった先は仕事部屋についている扉の前だった。
「はぁ、行くか」
芳蘿はため息をついて先の見えない扉をくぐった。
「ようこそいらっしゃいました、リビイ様。魔王様が玉座でお待ちでございます。」
出迎えたのは銀髪で瞳の色は赤紫色をしている180くらいの男だった。