チャプター3「魔法」
家族との時間を犠牲にして、あの日から復讐の闘志を燃やすカーマイン。それを知らないシュウはのんびりとカメリアとの日々を満喫して更に1年の月日がたっていた。
あれから1年、生まれてから1年半が経ち、俺は拙いけれど歩けるようになっていた。
早く安定して歩き、走れるようになるため、現在は壁を伝いながら家を歩き回っている。
ちなみに話しても疑われないぐらいになってきたので今は辿々しい話し方で会話するようになっている。
「それにしても沢山の本だなぁ…」
歩き回っているとカメリアさんの部屋のドアが開いていて、隙間から沢山の本が入った本棚が見えた。
(どんな本があるのかな…?)
ふと気になり、カメリアさんの部屋へと入り、本棚の前に立ち見上げる。
(でっ…でかい…いや俺が小さいのか…)
そんなことを考えながら、本の背を見て見てみたい本を探す。
(へぇ…色々あるなぁ…歴史に、騎士の教え…ってこれは…)
2段目に魔法教本というタイトルの本を見つける。
(魔法かぁ…そういや、転生前の俺は魔法使えなかったけど今ならどうなんだろ?)
と考えながら本に手をかける…
「うわぁ!?!?」
魔法教本を取ろうとした時、横隣の本も一緒に出てきてしまい、そのまま本と一緒に後ろへ倒れてしまう。
ゴンという鈍い音と本が床に落ちる音を聞き、昼食の準備をしていたカメリアさんが血相を変えながら部屋へと駆けつけ、俺を抱き抱えて頭を撫でる。
「シュウ大丈夫!?」
「うん…」
「怪我してないかな…本当に大丈夫?」
返事を聞いた後もそうしてカメリアさんは打った辺を確認している。
「怪我してない…よかったぁ…」
そうして、怪我の確認が終わったのかカメリアさんはほっとする。
「おかぁさん…ごめんなさい…」
「うんん、大丈夫だよ…目を離した私も悪いんだから。でも、次からは一緒にしようね。」
「うん。」
そうしてカメリアさんは散らばった本を見て何をしたか理解する。
「本が読みたかったの?」
「うん…」
「よし、それじゃあ料理の途中だけど、時間あるしリビングで読もうか。」
「うん!」
「それじゃあ、これは難しいからこっちのにしましょ。」
床に散らばった本を本棚に直し、1段目にあるいつも読み聞かせてくれる絵本を取り出す。
「いまはえほんやだ。」
首を横に振り違う本を見たいことを伝える。
「えぇ…それじゃあ…」
そう言って困った顔をしながら本棚に指を向け本を選び始めるカメリアさん。
「おかぁさん、これがいい。」
「魔法教本!?流石にこれは早いんじゃないかな…?」
(まぁ、そうだよなぁ…でも今は…)
驚いているカメリアさんに追い打ちをかける。
「だ…め?」
首を傾けて上目遣いでカメリアさんに訴えかける。
「うっ…!?わかったわ。でも、難しかったらいってね。」
「うん!わかった!」
それからカメリアさんと一緒にリビングへと行き、本を読んでもらって色々なことを知った。
驚いたのは5年前より、格段に魔法についての情報か細かくなっていることだ。というのも、魔族との協定が交わされ、人間だけが、魔族だけが知っていた魔法の情報の共有と協同の研究で様々なことが、解明されてきているらしい。
その中で面白い記載があった。
魔法適正計測器についてーー
現在適正魔法を測る装置の開発が進んでおり、いずれは8〜10歳まで待たずとも何属性の適正を持っているのか、わかるようになる時代ももうすぐそこまで来ているそうだ。
(へぇ…凄い時代になったなぁ…シュメールとして生きてた時代では想像できなかったことだな…)
そうしてカメリアさんに本を読み聞かせをしてもらっているとガチャンと玄関の扉が開く音と「おはようございます!」と元気な声が聞こえてきて、しばらくした後リビングの扉が開く。
「おはようございます。カメリアさんにシュウくん。」
「うん、おはようございます。」
「リリアナおねぇちゃんおはよう。」
そうして笑顔のリリアナさん姿が現れる。
挨拶をした後、リリアナさんは読み聞かせをしていることに気がつく。
「あれ?本を読んでもらってるの?」
「うん、そうだよ。」
「へぇ…どんな本なの?」
「魔法教本よ…」
「そっかそっか!魔法教本かぁ…………えっ?えぇ!?」
リリアナさんはカメリアさんの言葉を聞いて復唱した後素っ頓狂な声を出しながら一瞬固まり、次の瞬間に驚きの声をあげる。
「それ、難しくない!?わかるの!?」
「うん!」
「そっ、そうなの…」
俺の返事を聞いてリリアナさんは動揺しながらそう答えた。
その後、鍋が音を立て始めたので2人は俺が本を見ているのを確認して料理を再開していた。
「いやー、驚いたね。絵本かと思ったら魔法教本なんだもん。」
「私も驚いたよ。絵本を出したら魔法教本がいいんだって聞かなくてね。」
「もしかしたら天才なのもね、ほらあんなに話せるようになるのも他の子よりも早かったじゃん?1年1ヶ月ぐらいで話せるようになってたでしょ?」
(え!?そうなの!?)
とリリアナさんの話を聞いて、チラチラと読書しながら聞いていたが、驚いて目を見開きながら2人の方を見てしまう。
(このぐらい話せるのは普通だと思っていたんだけど違ったのか…)
「あはは、そうかも。私みたいに先生とかカイングさんみたいな騎士団長とかになったりするのかな。」
笑顔でリリアナさんはそう話す。
「うんうん、将来が楽しみだね。」
「うん…そうだね。」
(ん?…今、リリアナさんが将来が楽しみって言った時一瞬暗い顔をしたような…)
ただ、その後は笑顔で俺の未来のことを話していたため気のせいだと思うことにした。
前世では魔法を使うことが出来なく、見ることのなかった魔法教本を読め、ワクワクしているシュウであった。
ここまでご視聴ありがとうございました!良ければ次回も見て行ってください!