チャプター26「幸せな時間3」
ルディさん達の歓迎会から1週間後、俺は朝から特訓に励んでいた。
「なっ!?ぐふっ!?」
俺は衝撃を受けて宙を舞い、地面に転がる。
「あっはは、まだまだだなシュウ。」
「ずるいよ、ルディさん…剣だけじゃなかったの?」
俺はそうルディさんに問いかけながら立ち上がる。
「武器は剣のみとは言ったが足を使ったら駄目とは言ってないだろ?」
「確かにそれはそうだね…なら、これを使っても文句はないよね?」
そうして、ルディさんに向けて手をかざす。
「いやいや、おい!ちょっと待て!?魔法は禁止だろ!?」
「武器は剣のみって話でしょ!」
「確かにそうは言ったが…ってうぉ!?」
俺の手から放たれた魔法はルディさんのそばに着弾する。
「まだまだ!!」
「うぁ!?待てって!おい!」
こうして朝の特訓は過ぎていく。
歓迎の宴の後、正式な警備兵として村を護衛をしてくれているルディさんたちだか、朝の特訓時に、護衛の交代の時間を合わせてくれて俺の特訓にも付き合ってくれている。
「ふぅ…疲れた…」
久しぶりの実践での特訓に熱が入り、体力を使い果たした俺は地べたに座り込んでいた。
「はは、お疲れさん。」
「うん、ありがとう。」
そう言って、ルディさんは笑いながら水を渡してくれる。
「ゴクゴク…ぷはぁ…いや…まだまだだなぁ…」
「いや、俺を負かしておいて何をいってるんだ。」
「はは…まぁ、魔法を使ってたからね。でも、剣術だけだったら負けていたよ。」
「まぁ、そこは歴が違うからな。簡単に追い越されたら困る。」
「はは、だね。」
そう言って俺は再び水を飲む。
「そういえば、スーはどうしたんだ?いつもは特訓を眺めていってのに。」
「あぁ…今日は街に出かけるからその支度をしてるんだよ。」
「へぇ、街にね…ってシュウはここで特訓してていいのか?」
「うん、昨日に準備は終えてるからね。」
「そっか、なら続きをするか?」
「うん、それじゃ次は魔法の特訓でお願い。」
「あぁ、シュウは魔法の上達が早いから教えがいがあるよ。」
「はは、そう言ってもらえたら嬉しいよ。さぁ、時間も無いし早くやろ!」
「あぁ、そうだな。」
そうして、俺達は特訓を再開する。
ーーカージナル宅ーー
「ただいまー。」
「あっ、お帰りお兄ちゃん!」
「お帰りシュウ。」
特訓を終え家に帰るとスーと街の人にバレないよう変装をしたカメリアさんが出迎えてくれる。
「そろそろ出発するけど準備は大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。」
そう言って玄関に準備していた荷物を背負う。
「それじゃあ行きましょうか。」
「うん!街に向けて出発進行!!」
カメリアさんの話を聞いてスーはそう言って元気に飛び出していく。それを追って、カメリアさんと俺も家を出るのであった。
ーー王都ナルキアーー
「うわぁ…人の量凄いな…」
(何度見てもこの人の量は慣れないなぁ…)
「だね…こんな中を走ったら迷子になりそう…」
子どもの視点になって見る街や人は更に大きく、人混みも多く感じてしまい、呆気に取られていた。それはスーも同じなようで呆気に取られていた。
「ふふ、そうだね。それじゃ迷子にならないためにも手を繋ぎましょうか。」
「うん!」
そうしてスーはカメリアさんの手を抱きしめる。
俺もそれに合わせてカメリアさんの服の裾を掴む。
「シュウ?手でもいいのよ?」
「ちっ、地図を見たり何かあった時の為に片手は空いていたほうがいいでしょ?」
「それも…そうね。わかった、しっかり掴んでてね。」
「うん。」
そうして、俺達はカメリア街を歩き始める。
今日、王都ナルキアに来た理由は2つある。
1つ目は先日入学が決まった、魔法学院の制服の最終調整と受け取りをするため。
もう1つは魔法学園見学の帰りに行う予定だった街探索の代わりを行うためだ。
「それで、今日行く仕立て屋さんって何処にあるの?」
「えっとね…この通りをもう少し進んだら右にもう一つの通りがあるからそこに入って、真っ直ぐ行くと左手に見えてくるのよ。」
「結構遠いんだね。」
「あはは、この街は凄く広いからしょうがないよ。2人共疲れたらすぐに言ってね。」
「うん。」
「わかった。」
大道芸を披露している人や買い物をしている人達、楽しそうに酒を飲んだりや食事を食べている人達など、賑やかな街中を眺めながら俺達は仕立て屋を目指して歩く。
「あった、あったここよ。」
そうして、仕立て屋に到着した俺達は店の中に入っていく。
「いらっしゃいませー。」
店員さんに出迎えられ、中に入るとたくさんの綺麗な服が並んでいた。
(おお…こんなところ初めて来たな…)
前世では、魔族や魔物が蔓延っておりなかなか素材集めが出来ず、こういった服は貴重品だったため驚いてしまう。
「すみません、注文を受け取りに来たリアなんですけど。」
「あっ、リアさんですね。ご準備は出来ていますのでどうぞ、お入りください。」
「わかりました。それじゃあスーはどうする?」
「私は服を見てるよ。終わったらまた言って。」
「うん、わかった。それじゃシュウ行きましょうか。」
そうして奥の部屋へと入ってからは、何度か試着をしながら裾直しをしてもらい、俺の制服は出来上がっていく。
服を見終わったのかスーも途中から俺が試着をしているのを眺めていた。
30分後ーー
「ありがとうございました!」
何度か試着をして、裾直しを終えた俺達は服を受け取り、店員さんに見送られながら店を後にした。
「さて、それじゃあ次の所に行こうか。」
「え?街探索は?」
街探索ができるとワクワクしていたスーはカメリアさんの言葉を聞いてキョトンとしていた。
「ふふ、街探索はその後よ。近くのお店でちょっと人を待たせているから今から行くよ。」
「えぇ…うーんわかった。」
そう言ってがっかりしながらもスーは頷く。
「あはは…まぁ、会ったら2人共喜ぶと思うから少しだけ我慢してね。」
そうして、俺達は次に酒場へとやってくる。
「ここなの?」
「ええ、そうよ。さあ、入りましょう。」
そう言ってカメリアさんが扉を開けると、
「いらっしゃいませー。何名様でしょうかにゃー。」
と、とてもにぎやかな店内の中、たまたま通りかかった猫人族のウェイトレスさんが元気に迎えてくれる。
「ごめんなさい、待ち合わせをしてるんですけど。」
「あぁ、わかったにゃ。それではどうぞにゃ。」
「ええ、ありがとう。それじゃあ、2人とも行きましょうか。」
「うん。」
「はーい。」
そうやってウェイトレスに見送られながら俺達はにぎやかな店内へと入っていく。
「さて、何処にいるかな…」
カメリアさんについて歩いていると、奥の方から、「おーい、こっちだー。」という声が聞こえてくる。
「あっ、いた。あそこよ。」
そう言ってカメリアさんは指差す先を見るとサングラスを掛け、黒い帽子を深く被った人がこちらに向けて手を振っていた。
「って、あれ…お父さん!?」
「え!?」
そこには王都クーゼルトで働いている筈のカーマインさんがいた。
カメリアさんから手を離し大慌てで俺とスーは近寄る。
「なんでお父さんがいるの!?」
「ははは、驚いただろ?本当は今日村に帰る予定だったんだが、ナルキアに来るってカメリアから聞いていたから2人をびっくりさせるために待ってたんだ。」
「流石にびっくりだよ父さん…」
「ふふ、作戦大成功ね。」
「あぁ。」
俺達が驚いているのを見て2人は笑みをこぼしていた。
「それじゃあ、今日はお父さんとも一緒なの!?」
「あぁ、一緒だよ。」
「やったぁ!!」
カーマインさんの返事を聞いて、スーは凄く喜んでいた。まぁ、俺もなんだけどな。
そうして、家族水入らず、楽しく話をしながらご飯を食べ、時間が過ぎていった。
予想外のカーマインさんの登場に驚くシュウとスー。2人は久しぶりの家族全員でのお出かけに心を踊らせ始めているのであった。
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