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転生師弟の復讐  作者: 桜紅葉
第一章「転生」
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チャプター25「前世の記憶と今世の夢」

これは15年以上前、シュメール・スメルとして生きていた頃…勇者カーマインが村にやってきた数日後のお話。

「おーい、シュメール。」

「なに父さん?」

「いやな?数日前に来たカーマインさん達が村に来ただろ?それで、歓迎会をしようと思ってな。」

「ほら、この前言ってただろ?森の中にきのこがたくさん生えていた場所があったって。」

「あー言ったね。」

「持ってきてくれないか?」

「えぇ…」

「取ってきてくれたら今日の畑仕事無しにしてもいいぞ?」

「今日って言っても、今から取りに行ったら3時間ぐらいしか仕事時間残ってないじゃないか。拒否させてもらう。」

「なら明日も休みだ!」

「もう一声ほしいなぁ…」

「いい加減にしろ。」

「はぁーい。」

調子に乗ってそんなことを言ってみるが父さんに怒られてしまう。

「たく…まぁ、よろしく頼むよ。」

「うん、わかった。」

会話を終え父が戻った後、俺は籠を背に乗せて森に向けて出発する。

「あれ?シュメールじゃないか。どっかに行くのか?」

そんな時、アクアさんとカメリアさんと偶然出会った。

「うん、森にちょっと用事があってね。」

「森って大丈夫?魔物が出るかもしれないから私達もついて行こうか?」

「そうだな護衛として連れて行けよ。」

「うんん、大丈夫。お客さんにそんなことさせるわけにはいかないよ。それに行き慣れた場所だし、今までそこの道中で魔物に出会ったこともないから。」

「そっか、なら気をつけてね。」

「怪我するんじゃねぇぞ?」

「うんわかった、行ってきます!」

そうして、2人と分かれた後、僕は森の中へと歩みを進めていた。

「さーてーと?あっ、あったあった。」

いつもの収穫場にやってきた僕だったが、早速きのこを発見して採取し始める。

「うん、これだけあれば充分だろ。さてかえ…ろう…か…」

そうして早1時間、たくさんのきのこを収穫して村へと戻ろうと振り返ると、目の前に2匹のハウンドがこちらへとやってきていた。

(嘘!?なんでこんなところに!?)

ここら一帯は魔物が嫌う匂いを発する植物があるため魔物が筈がない。

「うっ、うわ!?」

驚いて後ろに後ずさるが、枝に引っかかり尻もちをついてしまう。

そんな様子を見ていたハウンドたちはジリジリと僕の元へと近づく。

「やめろよ…こっち来るなよ…」

腰を抜かした僕は後ろに後ろに手を使って下がっていくが、それも木によって阻まれてしまう。

その瞬間ハウンドたちは走り出し、一気に距離を縮め始める。

(やっ、やばい!!とにかく逃げなきゃ!!)

足を滑らしながらも必死に立ち上がり籠を捨てて走り出す。

しかし、距離を離すことはできず、少しずつハウンドたちとの距離は縮まっていく。

「グルァァァ!!」

「うっ!!」

何とか左に避け攻撃を避けることが出来たが、依然としてピンチな状況は変わらない。

「うわっ!?」

ひたすら僕は走り続けていたが、木の幹に足をとられ転倒してしまう。

「ぅ…痛い…」

顔面から地面に衝突し、激痛が走る。

「っ…」

(急が…ないと…)

鼻から出血もしていたが、ハウンドが接近している中、そんなこと気にしている暇はなく、僕は立ち上がり走り出す。

「ぐぎゃ!!」

しかし、転倒した際に距離を詰められ、背中に突進を受けてしまう。

「ぐっ…!?」

攻撃を受けた衝撃で前方に2.3転と転がった後、僕は崖から放り出され宙に浮いていた。

「なっ!?ぐっ!!」

落下する中、咄嗟に崖から生えていた枝を掴み難を脱する。

「はぁ…はぁ…」

(こんなところから落ちたらひとたまりもない…っぞ!?)

安心したのもつかの間、枝の上にハウンドが降りてきていた。

(嘘だろ!?バカ!こっちに来るな!!)

ハウンド達が近づくにつれて枝は揺れ、しなり始める。しかし、枝を掴み続けるしかない僕はそれを見ることしかできない。

(駄目だ…落ちる!)

「うわぁぁぁぁ!!」

そうして体重に耐えきれなかった枝は限界を迎え、僕とハウンドは一緒に数十メートルの崖に落ちていき、葉っぱの生い茂った木に飲み込まれていく。



ーー???ーー

目を覚ますと僕は森の中で突っ伏して倒れていた。辺りは真っ暗にになり、追ってきていたハウンドの姿はなかった。

「っ…ぐっ…」

体を起こそうと腕に力を込めたが、痛みで上手く力が入らず、体が鉛のように重く感じる。

「いっ!?」

更に、右足を動かそうとすると今までよりも大きな痛みが走る。

「っ…これ…足が折れてるかもしれないな…」

ズボンを上げ、自分の足を確認すると落下した際にぶつけたのか足が青く変色している。

(はは…ひでぇなこれ…でも、ここに居たらいつ危なくなるかわからない…さっさと移動しないとな…)

立ち上がることができないため体を引きずりながら近くの木に移動して枝を数本折り、ちぎった服の裾と一緒に足へと巻きつけていく。

(考えてみるとあれだけ高い崖から落ちて怪我と骨折だけで済んだのは奇跡だったな…っとよし。)

怪我の応急処置を終えた僕は、大きめな枝を支えにしながら立ち上がる。

「っ…それじゃあ行くか…」

そうして安全な場所を探すため、暗い森の中を足を引きずりながら進み始める。



ーー15分後ーー

「はぁ…はぁ…」

息を切らし、額に汗を流しながら僕は暗い森の中を歩き続けていた。

(なここら一帯は冒険者も立ち入らないから魔物も多いし早めに安全な場所を見つけたいところだな…)

辺りにはハウンドや森に生息する魔物の声が響き、いつ遭遇するかもわからない状態だった。

(村に戻るにも崖を回り込むしか無いし…この足じゃ無理だな…っ!?)

少しずつ歩みを進めていたその時、視界の先に3匹のハウンドの姿が見えた。

(これは静かにやり過ごすしかないな…)

そうして僕はハウンドたちに気づかれないよう息を殺し、木の陰に隠れながらその場を離れる。

(よし、何とか気づかれずに進め…)

「っ…!」

何とか気づかれずに離れることができ安堵したその時、右足に激痛が走りバランスを崩して大きな音を鳴らしてしまう。

(しまっ!?)

その音に反応し、遠くに居たハウンド達が接近してくる。

(やっちまった…!とにかく逃げないと…っ!)

立ち上がり行動に移そうとするが痛みに阻まれ転倒してしまう。

「くっそぉ…」

(ここで僕の人生終わりなのか…っ…お父さんお母さんごめん…こんな不甲斐ない息子で…)

そうして目の前にまで来たハウンドの姿を見て覚悟を決め、目を瞑る。

「ライトニングアクセル1V!」

その時、遠くから聞き覚えのある声が聞こえ、顔を上げ目を開く。

そこには高速で動き、ハウンドを仕留めるカーマインさんの姿があった。

「シュメールくん大丈夫!?」

「うっ…うん…」

そう言ってカメリアさんが僕の側に近寄る。

「はぁ…よかった…本当に無事でよかった…」

僕の返事を聞いてカメリアさんは安堵する。

「なんで、カーマインさんとカメリアさんがここに…」

「なんでって、普段ならもう帰っている時間なのにいつになっても帰ってこないって、シュメールくんの親から聞いて必死で探してたからだよ。それよりも、じっとしててね…」

そう言って、カメリアさんは僕の体を念入りに調べる。

「うん…骨折までは治せないけれど、この怪我なら治せる…マイン!治癒魔法を使用するから少し時間を稼いで!」

「あぁ、わかった!」

先程よりも増えているハウンドをカーマインさんが相手にしている中、カメリアさんは僕に手をかざして、魔法を発動させる。

僕の体が光に包まれていく中、痛みが少しずつ和らいでいく。

「うわ…凄い…痛みが殆どなくなった…ありがとうカメリアさん。」

「えぇ、どういたしまして。」

お礼を言うと、笑顔でカメリアは答えてくれる。

「治癒は終わったか?」

そんな中、カーマインさんは戦闘を終え、僕達の側に来ていた。

「えぇ、骨折は治せなかったけれどそれ以外は治ったわ。」

「そっか、なら早く移動しよう。いつ魔物に襲われるかわからないからな。」

「そうね。急ぎましょう。」

「うん、わかった、」

そうして僕はカーマインさんの広い背中に乗せてもらい、アクアさんたちとの合流地点に向かう。


ーー???ーー

「よかった、心配したんだよ!」

「ごっ、ごめんなさい…」

みんなと合流した僕はローズさんに抱きつかれていた。

「こらこらローズ心配なのは分かるけどそんなに抱きついたら駄目だよ。」

「あっ!?ごめん痛かったね。でも、まだ帰ってないって聞いて血相変えてたカメリアには言われたくないよ?」

「うっ。」

ローズさんはニヤニヤしながらそう言うとカメリアさんは顔を隠す。

「え?そうなんですか?」

「あぁ、無理にでもついていけばよかったってものすごく後悔して真っ先に飛び出していたしな。」

「そうなんですね。」

「うっ、この話はもうおしまい!」

僕のことを本当に心配してくれていたことに嬉しく思っていると、カメリアさんが話を終えてしまう。

「あはは…でも、本当に無事でよかったよ。」

「うんうん、最悪の事態にならなくて本当によかった。とりあえずこれで一件落着って感じだね。」

「あぁ、だがここからが問題だぞ。」

「あっ、カーマインさん。」

4人で話していると、周囲の探索に出ていたカーマインさんが帰って来る。

「あぁそうだな、っでこれからどうするんだ?このまま崖の上を目指すか?」

「いや、周りの魔物は倒してきたからここで野宿をして、明るくなってから移動しよう。俺達だけならともかくこの状態のシュメールを連れて上がるのは危険だ。」

「うん、確かにそうだね。」

「よし、それで決まりだ。出発は早朝!みんなしっかりと眠っておけよ?」

アクアさんがそう言うと全員が頷き、方針が決まる。

そうして、カメリアさんが作ってくれた夜食をみんなで食べた後、簡易テントの中で睡眠を取っていた。

しかし、目が冴えてしまい寝ることのできなかった僕は枝を支えに立ち上がり、気分転換にテントから出る。

「あれ?どうしたの?」

テントから、出るとそこにはカメリアさんの姿があった。

「あっ、カメリアさん。ちょっと寝付けなくて…」

「そっか。ならちょっとだけ歩く?いい場所を見つけたんだ。」

そうして、カメリアさんに背負われながら一緒に森を歩いていると暗い夜道が明るく照らされ始め、視界の先には輝く湖が広がる。

「うわぁ…凄い。」

「ふふ、きれいでしょ?たまたま見つけたんだけどね。」

「うん、凄くきれい…」

その水場は赤色や黄色、水色など様々な色の明かりに照らされ心が魅了されてしまう。

「あの光って何なの?」

「ふふ、いい質問だね。あれはまだ産まれたての妖精なんだ。これから、育って大きな…それこそ、フェアリーテイマーの人と一緒に戦っている強い妖精になっていくんだよ。」

「へぇ…あれが妖精なんだ初めて見た…」

それからカメリアさんとたくさんの話をして、いつの間にか僕は眠りについていた。




次の日ーー

「さて、それじゃあ村を目指して出発だ!」

早朝になり、アクアさんを先頭に村に向けて出発する。僕は足を骨折しているため、昨日と同様カーマインさんに背負われていた。

「ねぇ、カーマインさん。」

「ん?どうした?」

みんなが先を進む中、僕はカーマインさんにあるお願いをするため話しかけていた。

「僕に稽古をつけてほしいんだ。」

「急にだな。どうした?」

「昨日の僕のことを救ってくれたカーマインさんたちみたいに助けを求めている人達を救えるそんな強い人間になりたいと思ったんだ。」

絶体絶命の窮地から救ってくれたカーマインさんに憧れを持った僕はそう言葉を紡ぐ。

「はは、そっかそっか。嬉しいことを言ってくれるな。」

そんな僕の言葉を受け止め、

「別に稽古をつけてやってもいいが俺の稽古は厳しいぞ?ついてこれるか?」

と快く引き受けてくれるカーマインさん。

そんなカーマインさんに言うことはたった一つだけだった。

「もちろん、ついて行ってみせるよ!」

「よし、言ったな?それじゃ、まずは無事に家に帰らないとな!」

「うん!」

その後は、魔物に襲われることが何度かあったが、難はなく無事に家に帰ることができた。


ーー現在ーー

「ふふ…」

懐かしい記憶を辿り笑みを溢す。

(本当の意味でカーマインさんに憧れ始めたのはあの事件がきっかけだったな…。)

「お兄ちゃん。何か嬉しそうだね。」

思い出に浸っていると、いつの間にかスーがすぐ側にいて、俺のことを覗き込んでいた。

「ん?あぁ、昔のことを思い出していたんだよ。」

「あぁ、なるほどね。」

心境が理解できたスーはそう言って隣に座る。

「それにしても、やっぱり綺麗だね。」

「あぁ。」

「あの光って何なんだろうね。」

「ふっ、あれは妖精の子どもらしいよ。」

一瞬、昔の俺と姿が重なり笑みを浮かべる。

「へぇ…あれって妖精だったんだ…初めて見た…」

「そうなのか?前世で見たことぐらいあるだろ。」

「あはは…見てみたいと思ったことはあるけど、私が生きてた頃は魔王と国が対立していて村の外は危険な状況だったから、出ることは殆ど禁止されてたんだよね。」

頬をかきながら悲しそうにスーは言う。

「あぁ、なるほどな。すまない…」

(そうか、忘れていたが魔王が倒されたのは9年前だもんな…平和だったからすっかり忘れていたな…。)

「うんん、いいよ。というかだからこそ、今回はの人生では色んなところに行ってみたいんだ。色んなところを旅してその現地の名物を食べてたくさん楽しみたい。」

そうやってスーは目を光らせながら俺に夢を語ってくれる。

「そっか、いい夢だな。ちなみにその中で一番行ってみたい所は何処なんだ?」

「やっぱり海かな。」

「海か。」

「うん、アアロス海岸っていう。ピレッタ王国にある海に行ってみたいんだ。」

「聞いたことないな…」

少し思い出してみるが思い当たる節がないため、そう答える。

「あはは…まぁ、有名な場所ではないらしいからね。」

「え?そうなのか。」

「うん、前世の私のお父さんがお母さんに告白をした思い出の場所なんだって。

よくお母さんがその話をしてくれていつか家族みんなで行きたいって言ってたんだ。」

「そうなのか。」

悲しそうな、寂しそうな顔をしながらスーはそう話す。

(お母さんたちに会いたいんだろうな…)

心の中でそう思っていると遠くから「シュウ!!スー!!いたら返事して!」と俺達を呼ぶ声が聞こえてくる。

「えっ!?お母さんが来ちゃったよ!!ど、どうしよ!?」

しんみりしていたスーは約束を破ったことに気づかれそうになり、慌て始める。

「どうしようもないな。ここにお母さんが来てるってことは、俺達が森に入っていったのがバレてるってことだろうし、村の誰かに見られたんじゃないか?」

「えぇ!?」

「はは、自業自得だよ。まぁ、一緒に怒られよう。」

「いや、いっそういないフリをしてみる…?」

「やめとけ、2人の歓迎会が大捜索に変わっちまうしそっちのほうが怒られるぞ。」

往生際悪くそんな事を言っているスーの手を掴んで俺はカメリアさんの元へと歩いていく。

結局その後はみんなでカメリアさんに叱られた後、宴に戻っていった。


「夢か...」

(前世の夢は魔王が倒されて叶えられなくなったからな。スーみたいに新しい夢でも...とまぁまだまだ人生は長いんだそんな焦ることもないか。今はまぁ、平和になったこの世界を楽しもう。)

村に戻る中、スーに感化された俺はそんな事を考えていた。

過去の思い出を懐かしみ、憧れのきっかけを思い返していたシュウ。今世の夢を語るスー、2人はそれぞれの思い秘めながらこの今を生きていく。

ここまで見ていただきありがとうございました!

そして、毎週投稿と言いつつ一週目から遅れてしまい申し訳ございません…遅れてしまい今週からは毎週投稿を行っていきますのでまたよければ見てください!

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