序章Ⅲ「師弟の約束」
王国へ向かっている最中、森でスフィアという少女と出会った。少女の父親の病気を治すべく2人でサタイル草を探すこととなったが、途中ミューティゴブリン襲われている女性を見つけ助けるが、ピンチに陥ってしまう。謎の援護もあり、ミューティゴブリンを撃破したシュメールだったがそのまま意識を失ってしまった…
ーー???ーー
ピチャンピチャンと真っ暗な視界に音が鳴り響く。
「っは!?」
意識を取り戻し、起き上がると洞窟の中にいた。
「ここは一体…っていっ……」
「あっ!!動いちゃ駄目だよ!」
奥から元気な声が聞こえてくる。
そこにいたのはスフィアだった。
「スフィアか……スフィア!?お前大丈夫か!怪我っ!っう…」
「あはは、怪我人が何人のことを心配してるんですか。まずは自分のことからですよ。」
そう言ってスフィアは笑顔を見せる。
「ほらほら早く横になってください。」
「あっ…あぁ…」
そしてスフィアの言う通りに横になった後、包帯でグルグル巻きになった腕や足などを見ながら、まだ混乱している頭を回転させ状況を整理する。
「あれ?そういや、あの女性はどうなったんだ?」
「あぁ…そこにいますよ。」
ソフィアが指を差す方向を見るとそこには背を向けている女性の姿があった。
「よかった…無事みたいだな…」
ほっと安心する。
「はい、シュメールさんが囮になったおかげでアリスさんは怪我もないですよ。」
「そうか…」
そうしているとアリスと言われた女性がこちらを向く。
「あっ…目が覚めたんですね。丁度よかった。今完成したんですよ。」
そうして、アリスは近づいてくる。
「とりあえずこれをまず飲んでください。」
「?」
そうしてアリスは水の入った木のコップと紙に乗った粉を俺に見せる。
「さっき話してたんだけどアリスさん薬師なんだって。」
「あっ、じゃあこれって…」
「はい、調合した薬です。痛み止めと回復の効能が付与されてるんで是非。」
「あぁ、ありがとうございます、それじゃあいただきます。」
そうして受け取った薬を水で流して飲む。
「少し時間が経ったら効いてくるのでこのまま安静にしててくださいね。」
「わかりました。」
それを聞いたアリスさんは調合セットを片付けるためにその場を離れる。その後、俺が横になるを確認してスフィアが近づいてくる。
「膝枕でもしますか?」
「なっ!?なっ何言ってんだ…!?」
「あはは、冗談ですよ。」
「怪我人をからかってんじゃねぇよ。」
それを聞いてアリスさんもクスクスと笑っていた。
「そういや、なんでスフィアとアリスさんはこんなところにいるんだ?逃げてと言ったと思うんだけど…」
「ああうん、それに関しては…」
そして、あの時俺が誘導した後、2人は一緒に逃げようとしたが、互いにまともには戦えないが、援護ならできるのではないかと考えたことを話す。
「じゃあ、ゴブリンの顔面に何かをぶつけたのスフィアなのか?」
ゴブリンに最後の一撃を決める直前、そのチャンスを作り出した謎の物体を思い出す。
「あぁ、うんそうだよ私の魔法。」
「なるほどな…ってスフィア魔法使えたのか!?」
「ほんのちょっとだけどね。」
手に石を生み出しながらそうスフィアは言う。
「土属性か。」
「うん、それであの時は泥を飛ばしたんだよ。」
「そうだったのか」
この世界には7つの魔法がある。一般的な火、水、風、土、そして稀にしか生まれない雷、光、闇。人それぞれに適性があり、8歳〜10歳の頃になると発現する。大体は1〜2の属性魔法が使えるが、それ以上の能力を持った人は未だに現れていない。
ちなみに勇者であるカーマインさんは火と雷、カメリアさんは光の能力を使える。
「本当に助かったよ。あの一撃がなかったら俺はどうなってたか…」
「ふふ、助けになれたようでよかったよ。」
その後他愛のない話をしながら過ごしていた。
数十分後ーー
俺は体を動かしても問題ないほど回復していた。
「すごいな、この薬…」
「まぁ、それほどでもないですよ。痛み止めで痛みを感じないだけなので。」
「いやいや、数十分で動けるようになれば充分すぎるよ。市販だったら一時間ぐらいかかりますし。」
「それなら良かったです。お役に立てて…あっそうだ。まだちゃんとお礼言えてませんでしたね。私はアリス・メディスン、王国で薬師をやっているの。助けてくれてありがとう。」
「いえいえ、こちらこそ手当てしてもらってありがとうございます。僕の名前はシュメール・スメル、こっちがスフィア・タリルです。」
「2人ともよろしく、後助けてもらったんですから当たり前ですよ。手当てに関しては私の仕事でもありますし。」
そう言ってアリスさんは薬草が入ったカバンを見せる。
「でも、まさかミューティゴブリンがこんなところにいるなんてね…本当ならこんなところにいるはずないし、今まで一回も見たことなかったのに…」
「え!?そうなんですか?」
アリスさんの言葉に驚く。
「えぇ、そうよ。ここはゴブリンはいるけどそんなに強い魔物は住み着いてないのよ。だからこそ、私達薬師だって護衛なくても来れているんだし。」
「…」
「もしかしたら、何か起こる前兆だったりしてね。」
「縁起悪い事いうなよ…」
「いやいや、いい事の可能性もあるでしょ?」
「ならなんで影響出てるのが魔物なんだよ。」
それを聞いて考え込むスフィア。
「確かに。」
(ちょっと抜けてる所あるんだなぁ…)
「あはは、あっそうだ。2人とも何かお礼をしたいんだけど何ない?」
「え?治療してもらったし大丈夫ですよ!?」
「うんうん。」
お礼をしようとするアリスさんに俺はそう言う。スフィアもそれに合わせて頷いていた。
「言ったでしょ?治療はあたしの仕事だって。お礼とは別だから、ほら早く言ってみて。」
「えぇ…そんなこと言ってもです…ね…」
そうして、アリスさんが薬師だということを思い出す。
「そうだ!アリスさん!」
「なんですか?」
「サタイル草!サタイル草持ってませんか!」
「っ!」
俺の言葉を聞いてスフィアもハッと気づいた様子だった。
「あ…ちょっと待ってくださいね?」
そうしてアリスさんがカバンの中をガサゴソあさり始める。
「あった、あったこれこれ。」
「っ!こ…」
「本当にサタイル草だ!!」
俺が話そうとした瞬間前のめりに飛び出すスフィア。
「おい!落ち着けって…」
「だって…だって…!」
そうして、スフィアは涙を流し始め、手で拭っていた。
「事情がありそうですね…」
「はい…実は…」
涙を流すスフィアに変わってアリスさんに父親のことを話す。
「そうだったんですね…なら持っていってください。というか、薬の作成もさせてもらいますよ。」
「本当ですか!!おい!良かったなスフィア!」
「うん…うぐっ…あっ…ありがとう…」
涙を流しながらもアリスさんへスフィアはお礼を言う。
「それじゃあ、すぐにでも出発しましょう。早く治るに越したことはないですし!」
そうして、森を出る準備をした3人は洞窟から抜け、ゴブリンなどの魔物を避けながら森を抜けることに成功する。
森を出る頃には日が傾きもうすぐ月が現れるのも、すぐそこだという様子だった。
「夜か…どうします?夜道を進むのは危険ですが…」
「大丈夫、馬車を置いてあるからそれで移動しましょう。」
そうして、アリスさんの後ろをついて歩き数分進むと馬車が見えてくる。
「ほら、乗って。」
「うっ!うん!」
そうして馬車に乗った俺たちはアリスさんの馬車でショバ村まで向う。
ーーショバ村ーー
「凄いこんな早く着くなんて…」
「ふふん馬車だからね。ってそうじゃなくてほらお父さんの所に行きましょう。」
あれから1時間程でショバ村へと到着していた。
馬車から降りるとショバ村の住民らしき人が近づいて来る。
「スフィア!!よかった無事で!!」
そうして、村人はスフィアの肩を持って涙を流す。
「本当に心配したんだぞ…」
「ごめんなさい…」
そうして村人へ謝るスフィア。
「そうだ!スフィアこれ見てくれ。」
そうして村人は袋をソフィアに渡す。
「これって…金貨!?」
その袋の中には大量の金貨が入っていた。
「あぁ、あれから村全体で出し合ったんだ。サタイル草を買うために…これなら足りるだろ?これなら危険を侵してまで探さなくても済むだろ?」
それを聞いてスフィアは涙を流し始める。
「みんな…ありがとう…」
「別にいいってことさ。スフィアの唯一親だ、それに村の住民を見殺しなんてできねぇよ。」
(良かったな…スフィア…)
そうして、村人たちとスフィアを眺めていた所で村人の一人が話しかけに来た。
「あなたたちは一体…」
「あっ…えっと…」
そう言って説明しようとしたところでソフィアが大きな声で話す。
「この人たちは私のことを助けてくれた人たちなの!」
「っ!そうでしたか…恩人になんて無礼なことを…」
「いやいや、別に大丈夫ですよ何にもされてないですし。ねぇ。」
そう言ってアリスさんへと話を振る。
「えっ…えぇ…それよりも、スフィアさんのお父さんの居場所を教えてくれませんか?ここにサタイル草があるので、早く治療させてほしいです。」
そうすると驚いた様子になる村人たち。
「驚いた…まさか本当に見つけるなんて…」
「ごめんなさい危険なことして…」
「いいさ、スフィアが無事なら。それよりも早速スフィアの家に行こう!」
そうして村人たちと一緒にスフィアの家へと向い、アリスさんがスフィアの父の様態を確認する。
「…筋肉弱酸症。ですか…でも本当によかった…今ならまだ間に合います。」
「っ!本当に!!」
「やった!!本当によかった!」
そうして、村人たちは歓喜の声をあげる。
その後、薬作りのため村人たちは戻ってもらい部屋にはシュメールとスフィア横たわったスフィア父、そして薬を作っているアリスの4人だけが残っていた。
1時間ーー
「できた…」
アリスは作っていた手を止めたそうぼそっと話す。
「っ!!本当か!」
「はい、完成です。」
「アリスさん…本当にありがとう…」
「うんん、これが私の仕事だからね、それよりも早く飲ませてあげて。」
「うっ!うん!」
そうしてアリスさんから薬をもらったスフィアはお父さんの口へと流し込む。
「…これで明日には回復の兆しが見えてくるはずです…」
「よか…った…」
アリスさんの言葉を聞いた後、スフィアは倒れる。
「スフィア!?」
そうしてシュメールは咄嗟にスフィアを支える。
「どうやら緊張の糸が切れて。疲労が一気に来たんでしょうね…」
「なるほど…よく頑張ったなスフィア…」
そうして、アリスさんに背負ってもらいスフィアがベッドで就寝するのを確認して、
俺は宿泊施設でお礼として無料で泊めさせてもらった。
次の日ーー
朝起きた俺は外で準備体操を軽くしていた。
「怪我してなかったら特訓といきたいんだが…しょうがないよな…」
そうして準備体操を終え、体に負担がかからないよう走り込みを始める。
「あれ?シュメールくん。朝早いですね。」
走り込みをしていると途中で声をかけられた。そこにいたのはアリスさんだった。
「あっ、アリスさんおはようございます。まぁ、日課なんですよ朝の特訓。」
「へぇ、そうなんだな。頑張るね。」
「えぇ、夢があるんで。それよりアリスはどうしたんですか?」
アリスさんは木箱を持っており何をするのか疑問に思ってたから、ついでに聞いてみる。
「あぁ、昨日の片付けと薬草の仕分けをしようと思ってね。」
「それなら手伝いますよ。仕分けはできないのでその荷物持ちます。」
「あ、ありがとう。それじゃあよろしくね。」
そうして馬車の元まで歩き始める。
「そういや、アリスさんは王国の薬師なんですよね?いつ出発するんですか?」
「あー、それなんだけど…今日には出発しようと思ってるんだ。」
「えっ!?そうなんですか?なんか寂しいですね…」
驚きながらそうアリスさんへ伝える。
「あはは、嬉しいこと言ってくれるね。だけどしょうがないんだよね。本当なら昨日帰ってる予定だったから師匠たちが、すごく気にしていると思うんだよね。」
「あぁ、それなら確かにしょうがないですね。」
そうして、馬車へと到着し、荷物の片付けと仕分けを始める。
「シュメール君はどうするんだい?」
「僕ですか?」
アリスさんは手を動かしながらそう質問してくる。
「うん、ここの住民の反応から旅の途中かなんかなんじゃない?」
「結構鋭いですね。僕も王国に行く途中なんですよ。」
「へぇ…そうなんだ!目的地一緒なんてなんか凄いね。」
「はは、確かにそうですね。」
「それなら一緒に王国まで行くかい?」
そうアリスは提案してくれる。
「それ凄くありがたいですね。」
「ふふ、そうでしょ。そう…」
「駄目!!!」
アリスさんと話をしていると途中で誰かに話を遮られる。
「ん?スフィア?」
そこにはスフィアが立っていた。
「どうしたんだよ?というか、お父さん大丈夫か?」
ドスドスと近づいてくるスフィアにそう質問をする。
「うん。2人のおかげでお父さんは立っていた歩けるようになってたよ。」
「あっ、よかった。それならもう心配なさそうだね。本当によかった。」
「てかどうしたんだ?…そんな怒ったような…様子で…」
「だって2人とも何にも言わずに行こうとするんだもん!!ちゃんとお出迎えさせてよ!!」
「?」
(行こうとする?何を?家から外にも出たらだめなのか?)
スフィアの言った言葉が理解できず首を傾げる。
「あぁ…なるほど。」
アリスさんは納得した様子で、
「よっと」
言って荷台から降りる。
「スフィアちゃん。ごめん、別に今から出るつもりはないよ?」
「へ?」
「だって私達今荷物片付けてるだけだし。」
「え?シュメールそうなの?」
「あぁ、そうだけど?」
「えっ!?でもさっき王国に一緒に行こうって…」
「あぁ…なるほど。」
つまり、さっきの話を中途半端に聞いたせいで今から2人で出発する所だと勘違いしたのか。
「ッゥゥ////」
頭を抑えて小さくなる縮こまるスフィア。
「ははは!」
「笑わないでよ…」
「安心しなよ、まだ父さんの様態確認しないといけないし。」
「うっ…うん…」
その後は3人で薬草の仕分けや片付けをして、時間を一緒に過ごす。
ーースフィア宅ーー
片付けなどを終えた後はスフィアの父の様態を確認しに来ていた。
「うん…もう問題はなさそうだね。」
「本当にありがとうございました…」
「いやいや、どういたしまして。だけど、まだ、筋肉が戻ってきているわけじゃないからしっかりと安静にしてしっかりとご飯を食べてくださいね。我慢してるってスフィアさんから聞いてますからね?」
「はい…わかりました。」
「うん、そうしたら2週間もすれば戻って来ると思うよ。」
「本当ですか!」
「うん。だから無理はしないでね。」
そうして、スフィアの家から外に出る。
「さて、やることすべて終わったしそろそろ出発しようかな。」
「えっ!もう行っちゃうの?」
「うん、そろそろ向かわないとつくときには夕方になっちゃうし。」
「あの…お礼に今日パーティーを開くんです…そこには参加してほしいんです…」
「…あーわかった!わかったよ!そんな可愛い顔されたら断れないって!」
「本当!!」
「うん、本当。今日は残るわ。師匠たちはなんとかなるでしょ。」
(本当に大丈夫かな…)
能天気に答えるアリスさんの言葉を聞いて、心配になる。
そうして、夜になると広場を使って盛大なパーティーが開かれた。
「驚いたな…こんなでかいパーティーだとは…」
「うん、びっくりだね…」
2人でそう言って驚いていた。
「何やってるの?2人とも!ほらほら美味しそうな食べ物がいっぱいあるよ!」
「あぁ…わかった!ほらアリスさんも行きましょう。」
「あはは、うんわかった!」
その後元気なスフィアに振り回されたり、村の人達から感謝の言葉を受ける。
楽しくパーティーに参加していたら、いつの間にか夜も老け、パーティーも終わりに近づいていた。
「隣いい?」
俺は食事に満足して広場の端っこで一人で座っていると、隣にスフィアが来ていた。
「あぁ、いいぞ。」
「ねぇねぇ、一昨日さ騎士学校に行く途中だって言ってたよね。」
「そうだな。」
「なんで騎士になろうって思ったの?」
「ん?あぁ…」
スフィアの質問を聞いて2年前の事を思い出す。
「俺2年前まで何にもする気力がなくて無欲で同じ毎日を繰り返してたんだ。」
「え?今の姿とは全然思い浮かばないな。」
「はは、そうだろう。俺もこんなに変わるなんてその頃には思ってなかったしな。」
そして冒険者…いや勇者たちが来たときを思い出す。
「でも、ある時に冒険者が来たんだよ。その人たちが輝いて見えたんだよな。そして俺もこんな風に強くなりたい、守れるようになりたいって思ったんだ。」
「憧れの人かぁ。シュメールの憧れの人だしきっとすごい人なんだろうね。」
「あぁ、すごい人たちだよ。」
ずっと村人を苦しめていた魔族を撃破してくれ、村人と仲良くなりよく畑の手伝いなど様々な事をしてくれた時の事を思い返す。
「そうなんだね…ねぇ質問いい?」
「あぁいいけどどうした?」
「私もその人たちみたいになれるかな。」
「…どうだろうな。」
そうしてこれまで2年間頑張ってきたことを思い出す。今でもまだまだカーマインさんたちの足元にも及ばない。でも、2年の間の努力は無駄じゃないそれが少しづつだとしても確実に力にはなってきている。だから俺の答えとしたら…
「でも努力をすれば必ず結果がついてくる。頑張っていればいつか届くと、僕はそう思っているよ。」
「そうですか…」
そうして何か少し考えた後スフィアは再び話し始める。
「お願いをしてもいいですか?」
「ん?」
「私の師匠になってくれませんか!滞在してる間だけでもいいので!」
「え!?なっ、なんで俺?」
スフィアからのお願いに驚きそうしか返答できなかった。
「一昨日魔物から助けてもらった時、私から見たシュメールさんは輝いて見えたんです。この人みたいになりたいって強くなりたい、守れるようになりたいって…だからお願いします。」
「その後、ミューティゴブリンにボコボコにされたけどな…」
「でも、あの魔物は他と違って凄く強いんだよね。そんな相手と互角に戦ったわけだし、アリスさんを助けることもできたし。それって凄いことだよね?それに私はシュメールさんに師匠になって欲しいんだ。これは3日間一緒に行動して思ったこと。だから問題はないよ!」
真っ直ぐな瞳でそう話すスフィアに2年前の自分を重ねる。
「…わかった。だけど、ちゃんと教えられるかはわからないからな?」
「うん、ありがとう!」
俺の返答を聞いたスフィアは嬉しそうに笑顔をさらけ出す。
そうして、俺に弟子ができた。
結局アリスさんとは別で王国に行くことを決め、騎士学校の試験へと行くために必要な日にちを引いて、1ヶ月半ギリギリまで、ショバ村で弟子を鍛えながら俺も鍛えることを決めた。
まず、取り組んだのは基礎。
走り込みでの体力作りや体幹トレーニングから始める。
「こんなことで剣術が強くなるんですか?」
初日の体幹トレーニング中、片足でバランスを取っているとスフィアがそう話をする。
「戦いの基礎として体幹トレーニングは必須なんだ。」
そして、2年前カーマインさんに教えられたことを思い出しながら話をする。
「体幹が良ければ身のこなしが良くなる、どんな体制からも攻撃を仕掛けられるようになるんだ。それに咄嗟の判断にも体が追いつき、バランスを崩しても立て直すことが早くなるんだ。」
「それって、ゴブリンと戦った時に変な体制から蹴りを当てたり吹き飛んでもそのまま行動していたことを言ってますか?」
「あぁ、見ていたならわかるだろ?」
「うん、だけどあんなの本当にできるの?」
「できるさ。っても、俺もまだまだ未熟だけどな。」
1ヶ月半後ーー
そうして、スフィアとの鍛錬が始まってからあっという間に1ヶ月半の時が立ち、シュメールは王国へ旅立つ支度をして、村の外れへと来ていた。
「とりあえず、僕が教えられことは教えたよ。これを活かせるか殺すかはスフィア次第だ。」
「うん…」
「安心しろ、この1ヶ月半でも、凄く強くなっている。2年…いやスフィアのお父さんは駄目だって言ってたから6年後か、その間にしっかりと鍛えて、騎士学校へ来るといいよ。王国で待ってるからさ。」
「うん…」
スフィアは下をずっと向いて返事をする。
「それじゃあ俺は行くよ?元気でな。」
「シューお兄ちゃん!ちょっと待って!!」
振り返り歩き出そうとするとスフィアに呼び止められた。
「これ受け取って欲しいの!」
スフィアの手に中にあったのは手作りの指輪だった。
「これ、持っていて。いつか私が王国騎士になった時受け取りに行くからそれまで人差し指に付けててほしい。」
「わかった…これでいいか?」
そうしてスフィアからもらった指輪を人差し指につけて見せる。
「うん…」
涙ぐみながらソフィアは俺に顔を向ける。
「じゃあ、俺も何か渡しとかなくちゃな…そうだな…あっ。」
そうして目についたのは、2年前に願掛けでつけ始めた手作りのブレスレットだった。
「じゃあ、このブレスレットを君に預ける。王国騎士になって渡しに来てくれよ。」
そうしてブレスレットをスフィアに渡す。
「うん、ありがとう!約束だよ!」
「あぁ。」
ブレスレットをつけ、涙ぐみながら笑顔を見せるスフィアに笑顔で返事をし、王国へと向けて旅立つのであった。
ここまで見ていただきありがとうございました。
どう考えても長いw本当に申し訳ないです。
次回も良ければ見て行ってください!それでは!