チャプター20「最小の魔才」
2週間後、シュウ達3人は魔法学園に向かうため馬車に乗っていた。そんな中シュウは風景を眺めながらあることを考えていた…
「うわぁ海だ!すごい!!」
身を乗り出し、スーが風景を楽しそうに眺めている横で俺は、
「最小の魔才か…」
とカメリアさんから聞いた話を思い出して、ぼそっと言葉を漏らしていた。
話は2週間の魔法学園へと行くのが決まったあの食事の時間へと遡る。
2週間前ーー
「そうだ、もう一つ言うことがあるのよ。」
何かを思い出した様子で手をぽんと叩いた後、俺に向けて話し始めた。
「実はね?シュウと同じ年齢で魔法を発現させた子がいるの。」
「…え!?それは本当なの!?」
カメリアさんの言葉を聞いた俺は驚き机に手をついて、身を乗り出してしまう。
その机の音に喜んでいたスーはビクッと体を震わす。
(すっ…すまん…)
「うん、そうなの。『最小の魔才』って呼ばれる金髪の女の子なんだけどね?この前行った後に発現させたんだって。」
(最小の魔才…会うことができたら早期発現の理由もわかるかもな。)
興味が惹かれた俺がそんなことを考えていると、
「最小の前菜?」
と喜び終えたスーが途中から話を聞き始めていたようだったが、何故か変な聞き間違えをしていた。
(どうやったらそんな聞き間違えするんだ?)
「ふふ、違うよ”最小の魔才”。」
そうして、小さい子供に教えるようにゆっくりと話していた。
「最小のま…さい?」
「そう、難しいのによく言えたね。」
そう言ってカメリアさんは頭を撫でていた。
「えへへ…」
(って流石に、今のはわざとか…)
そうして、嬉しそうに笑い合っている2人を見て俺は微笑ましく眺めていた。
現在ーー
「シュウ!ほら見て、あそこがフェイニール村だよ。」
「え?」
そんな事を考えていると、カメリアさんの声が聞こえてきた。
そうして、指さす先に視線を向けると、サゴイ村よりも3倍程ある円形状の村が拡がっており、その中心には魔法学園であろう大きな建物が立っていた。
楽しみにしていた村が見えたことで、
「うわぁ!!あれがフェイニール村!!」
「凄い!すごく大きいよ!お兄ちゃん!」
と座っていても見えるっていうのに、俺はスーと同じく興奮し、無意識に身を乗り出しながら村を眺めていた。
「ふふ、2人共楽しみなのはわかるけど身を乗り出すのはやめてね?」
「「あっ、はーい。」」
そうして、カメリアさんから注意を受けた俺とスーは静かに座る。
(今日はあんなところに行けるのか…)
村を眺めながら俺は期待をどんどん膨らませていた。
「お兄ちゃんお兄ちゃん。」
「ん?なんだ?」
隣で一緒に眺めているスーは目をキラキラと輝かせながら、
「楽しみだね魔法学園。それと魔法の発現についても知れたらいいね。」
と笑顔を浮かべていた。
「あぁ、そうだな。」
そう言って俺も笑みを溢しながらスーに返事をする。
ーーフェイニールーー
「うわぁ!いろんなお店があるね!」
「あぁサゴイ村とは大違いだな。」
あれから数分後、フェイニールへとついた俺たちは馬車から降り街の雰囲気に気持ちを高揚させていた。
「こらこら、勝手に離れないの。ほら手を握っていてね。」
そう言って、カメリアさんは俺たちに手を差し出してくれる。
「「はーい。」」
と俺たちは返事をしながら、その手を握り3人で学園へと向かい始める。
ーーフェイニール魔法学園ーー
その後、学園へとたどり着いた俺たちは今日学園の案内をしてくれるカメリアさんの知り合いに会うため、職員室へと来ていた。
「じゃあ、ついてきてね。」
そう言ってカメリアさんはガラガラと扉を開く。
俺たちもその後ろについて中へと入るが、そこには誰もいなかった。
「あれ?誰もいない?」
「本当だいないね?」
礼儀正しくしないとと思い、緊張していた俺はそう言葉を漏らしてしまう。
「うん、他の先生は今授業中だからね。」
「ああ、なるほど。」
そうして、カメリアさんと話をしていると奥から60代ほどの女性が姿を表す。
「あら、いらっしゃい待ってたわよ。さぁさぁ、長旅で疲れてるでしょ?こちらで座って話をしましょ?」
そうニコッっと笑顔見せ迎えてくれる。
少し疲れていた事もあって、言葉に甘えてソファーに座ってから話を始めていた。
「この方が、今日案内をしてくれるアステナ・カルメルさんよ。」
「2人共よろしくね。」
「はい!よろしくお願いします!」
そう言って頭を下げながら挨拶をしたのだが、聞き覚えのある苗字だったため、
「ん?カルメル?ってことは…」
と言いながら顔を上げ、2人の方へと視線を向ける。
それを聞いたアステナさんは微笑みながら、
「ふふ、よくわかったわね。いつもリリアナがお世話になってます。母のアステナ・カルメルですよろしくね。」
と挨拶をする。
「ええ!?リリアナお姉ちゃんのお母さん!?」
聞いて気づいた俺とは違い、理解していなかったスーは驚いていた。
「ちなみに、この学園の教員になれたのもアステナさんのおかげなのよ?」
「え!?そうなんですか?」
カメリアさんの言葉を聞いて、興味がすごく湧いた俺はアステナさんへ視線を向け聞いてみる。
「おかげって言うとおかしいんだけどね。1時期、私が理由があって授業ができなかった時があったんだけど、その時リリアナのツテで助けてくれたのがカメリアだったのよ。その時のことが楽しかったらしくてね、私が復帰してからも特別授業という形で今も続けてくれているの。」
「へぇ、そうだったんだ。」
(そっかよかった。)
カメリアさんとアステナさんが楽しそうに話している間、俺は下を向きずっと引っかかっていたことを思い浮かべていた。
ずっと心の片隅で俺が死んだ後のことを考えていた。みんなを泣かせてしまったあの日を後悔を残して引きずってみんなの未来の邪魔をしているのではないかと、特にカメリアさんにはそんな思いをしてほしくないと思っていた。それこそ、こうして転生して5年一緒にいても心の奥が読めず拭いきれていなかった思いだった。
だからこそ、今の言葉を聞いてほっとしていた。幸せを求めて未来を生きていることを知れて嬉しく思った。
「…」
そうして考えていると無言でこちらに視線を向けているスーの気配に気づく。
「どう…」
「さて、それじゃあそろそろ、今日の説明をしましょうか。」
「はっ、はい!よろしくお願いします!」
(まぁ、後でも聞けるだろうしな。)
気になって声をかけようとするが、その前にアステナさんが話しを始めたためそちらに集中することにした。
「まずなんだけど、魔法についての勉強をしたいって聞いてるから、今日は魔法学と実演、実戦の授業を見学してもらおうと思ってるんだけど…どうかな?実演と実戦は見るだけだけど、特に魔法学は8歳から始まる所で内容が難しいかも知れないよ…?」
「うん、大丈夫。」
「本当に?」
「うん。」
「あはは、大丈夫ですよ。この子よく魔法教本を読んでるので。」
その瞬間、心配そうな表情をしていたアステナさんの顔は見る間に驚きに侵食され、カメリアさんの方へと顔が高速で動いていた。
その後は授業についての簡単な説明と注意事項を聞き、俺達は1つ目『魔法学』の授業を見学するため、カメリアさんに見送られ俺達は職員室を出発した。
ーーフェイニール魔法学園:3-3教室ーー
1つ目の授業を受けるため3-3の教室へとやってきた俺達はアステナさんについて教室へと入った。
ガラガラガラ…という扉の音に反応して何人かの生徒たちがこちらを見ていたがすぐに振り返り授業へと戻っていた。
授業の邪魔にならないよう静かに教室の後ろで見学を始めていると、一番後ろの席の女の子がコソコソと声をかけてきた。
「ねねね、2人は名前は何ていうの?私はニマ・ココーシンって言うんだ。」
「僕はシュウ・カージナルって言います。」
「私はスカーレット・カージナルだよ。」
「へぇ、シュウ君とスカーレットちゃんか、よろしくね…ってあれ?カージナル?」
聞き覚えがある苗字だったんだろう、ニマさんは首を傾げ続けて話をする。
「ねねね、もしかしてお母さんの名前ってカメリア・カージナルだったりする?」
「はい、そうですね。」
「えぇ本当なんだすごい!あー確かに2人共、目とか口とか似てる!」
できるだけ声を下げながらニマさんは興奮していた。
「ねねね、それじゃあ今日は…」
と次々に質問が飛んでくる中、何か視線を感じ周りを見ると教室の殆どの生徒がこちらをチラチラと見ていた。
(あ…まぁ、気になるよな…)
1人の生徒が小声とはいえ見学しに来た子供たち(それももう一人は3歳)と話をしていたら気になるよな。特に、その中でカメリアさんの子供という言葉を聞けば気になってなかった人だって気にする。だってカメリアさん有名人だし。
「たく…しゃあない。ほら、2人共前に来て自己紹介してあげてくれ。みんなが気になって授業にならないや。」
お手上げといった感じでやれやれと手のひらを上げ顔を横に振った後、先生にそうお願いされてしまい授業は一時中断、自己紹介することとなりやっぱりというかカメリアさんの子供だということを話すこととなり教室の中は驚きに包まれた。
ーーフェイニール魔法学園:廊下ーー
その後は授業が再開され、予定通りに残り2つの授業も受け終えた俺達は廊下を歩いていた。
(いろいろな勉強ができて楽しかった。本当にカメリアさんには感謝しないとな。)
休み時間は生徒に囲まれ、質問攻めをうけて大変だったけれど、授業では見学だけではなく体験させてもらって魔法についてもいろいろ知る事ができた。特に魔法については実際に使えないと分からないような感覚やイメージがあるから、みんなとイメージを掴む授業に参加できたのはいい体験になった。
「この後はどうするんだっけ?」
そんな感じで授業を思い出しているとスーは次の予定をアステナさんに聞いていた。
「この後は、お昼まで食堂で休憩だけれど何か見てみたいものがあれば案内するわよ?」
「そっか、うーん見てみたいもの…」
アステナさんがそう言ってくれたので俺は気になっていたことを話すことにした。
「それじゃあお母さんの授業見てみたいです。」
「あっ、私も!」
「ふふ、わかったわ、それじゃあ今は…うん。1-2の教室で授業をしてるみたいだから行ってみましょうか。」
「「うん!」」
満場一致ということで俺達はカメリアさんの授業を受けるため、1-2の教室に移動する。
ーーフェイニール魔法学園:1-2教室ーー
「こうして、『ウェハマの戦い』は終わりを告げたのでした。」
ガラガラガラと静かに扉を開けるとそこには生徒前で授業をしているカメリアさんの姿があった。
入ってきた事に気づいたカメリアさんはこちらに笑顔で小さく手を振ってから授業に戻る。
カメリアさんの授業は歴史だ。国ごとの出来事や勇者の旅路などを生徒に教えている。
「…」
(あぁ…ここに来て本当によかった。)
俺は静かにカメリアさんの授業を眺めながらそう思っていた。
「ふふ、嬉しそうだね。」
「うっ、うるせぇ…」
スーにそう言われ俺は少し頬を染める。
ーーフェイニール魔法学園:1-2教室ーー
「よかったね。お母さんの授業。」
「あぁ、そうだな。」
最後まで授業を見学し終えた俺達は昼食を取るため2人で食堂へと向かっていた。アステナさんはというと怪我をした子が出たため、急遽別行動することとなっている。
「まだ半分あるけど、お兄ちゃんはどう?授業楽しい?」
「あぁ、魔法についての勉強はあまりできていなかったから新鮮で楽しかったな。」
「そっか。」
そう言ってこちらに笑顔を向けるスー。
「そっちはどうなんだ?」
「うん、凄く楽しかった。特にあの魔法の実戦練習、先生の手からぶわー!って火が上がってて凄かった!」
「そっかならよかった。」
目を輝かせながら嬉しそうに話すスーを眺めながら歩いていると道の角から複数人の生徒が姿を表した。
「うわ、すごい。本当にあんな感じで取り巻きを連れている人がいるんだね。」
「まぁ、居るにいるな。少ないとは思うが。」
前世の知り合いに取り巻きを連れて歩いていた人が居たのを思い出しながらスーに返答をして、俺達は取り巻きと従えている少女の横を通っていく。
「ちょうどよかった。ちょっとそこのあんた。」
「あんたよそこの赤髪!!」
「え?俺のことか?」
「そうよ。」
スーと隣を通り過ぎた辺りで声をかけられ少女の方へ振り向くことになった。
そこには金色の綺麗な長い髪を靡かせたツーサイドアップの少女がこちらに指を差した。
(こんな子知り合いにいたか?)
「どうかしました?」
1度反応してしまった以上無視するわけにもいかず要件を聞くことにした。
「飲み物を買ってきてほしいの。」
「え?なんで?」
「私、喉が乾いたのよ。ほら、お金は渡すからさっさと買ってきてくれない?」
「え?いや自分で買ったらいいんじゃないですか?それかそこの皆さんに…」
理由にならない理由を聞かされ俺は困惑しながらそう返す。
「は?私にお願いされるなんて光栄でしょ?」
「いや、そんなわけないけれど…というか誰?」
(なんで光栄に思わなきゃいけないんだ。)
理由がわからなく困惑し続けていると取り巻きの1人が少女に話しかける。
「この子は今日見学に来た子でわからないんですよ代わりに私が行くので…」
自己紹介したかいあって取り巻き1人がそう説明をして変わってくれそうとしていた。
「は?なに?私に楯突くの?後で知らないわよ。」
「い、いえ、すみません。」
しかし、少女の圧力に負けて後ろに下がってしまう。
「あっ!!」
そんな時、隣りにいたスーが大きな声を出して驚く。
「どっ、どうしたスー?」
「ふっ、どうやら彼女の方はわかったみたいね。」
「お兄ちゃん、あれだよあれ!お母さんが言ってた『最小の前菜』!」
「『最小の魔才』よ!!何よその最底辺の二つ名!まるで私が誰かの前座みたいじゃない!」
(おいおい、最小の前菜って…まじで間違えていたのか…って、ん?『最小の魔才』?)
2人のやり取りを聞いているとふと、カメリアさんが言ったことを思い出す。
(『同じ年齢で魔法を発現させた子』『金髪の女の子』『最小の魔才』...まさかっ!?)
「じゃっじゃあ!お前が…」
スーの言葉に取り乱した少女だったがすぐに立て直し、
「えぇ、そうよ。私はグラジス商団の娘にして、5歳という速さで魔法を開花させた『最小の魔才』マリー・グラジスよ。」
と胸に手を置き高らかに名乗ってみせた。
学園を満喫していた所に現れた、生意気な少女。しかし、その正体はシュウが興味を持っていた『最小の魔才』だった。果たしてこの最悪な出会いはどの様な展開へと向かうのだろうか…
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