チャプター15「ヒアルムの森攻防戦Ⅱ」
ルディさんたちゴブリンとオークとの戦闘から5分後、シュウたちは隠し通路を駆け足で進んでいた。
ーーヒアルムの森:隠し通路ーー
「あれって…もしかして!」
そうして、スーが指さす道の先には明るい光が見え始めていた。
「うん、出口だね。」
「まだ日が暮れてないみたいだ。流石に暗い森を進むのは危ないし良かった。」
そうして外へと足を踏み出し出口に振り返る。
(それにしても、こんな所に隠し通路があったんだな…)
隠し通路の出口は岩肌から生えた2つの木間に隠れるようにあった。
「それじゃあ、行きましょう2人とも。早くしないと日が暮れちゃうよ?」
そうやって隠し通路を眺めていると、アルカさんに催促されてしまう。
「うん、そうだね。まずは右方向に向かうんだったけ?」
「あぁ、右方向に真っ直ぐ行けば川に着くはず。」
そうして、道を確認して歩き出す。
5分後ーー
風景があまり変わらない森の中をひたすら進み続けている最中、何かミシミシという音が聞こえた。
「ん?なんか聞こえない?」
「え?…確かに何か聞こえる…」
「うん、本当だね…」
そしてその音を聞いていた時、ドゴンという音とともに視界の先で木が大量に倒れ、その間からオークが現れる。
「見つけタゾ…」
そう言ってニヤッと笑みを見せたオークはこちらへと走り出す。
「オーク!?」
「うそ!?なんで!?」
「な!?」
(どういうことだ!?オークはルディさんたちが…まさか!?…っ…いや、今はとにかくできることをやるしかない!!)
「とにかく走るぞ!!」
嫌な想像をしてしまうが、そんな想像は振り切り2人へそう声を掛け、確認してから走り出す。
しかし、子供の脚力ではオークから逃げることは出来なく少しずつ距離を詰められる。
「っ!!駄目!このままじゃ追いつかれる!」
「諦めるな!!しっかり走れ!!」
そんな時、スーは何かを見つけて指をさす。
「お兄ちゃん!アルカお姉ちゃん!!あれ!川だよ!!」
その言葉を聞いて、先に視線を向けるとそこにはスーが言う通り川が見えていた。
(川が見えたってどうすれば…)
そう考えながらもとにかく走るのはやめない。
(下りだったよな…)
そうして左から右へ流れていくのを確認する。
「右だ!右に走れ!!」
「うっ、うん!!」
そうして、右方向へと向かうが…
「あっ!?」
という声と共にアルカさんが倒れる。
「っ!!」
その声を聞いて俺は足を止めアルカさんの元へと戻る。
「アルカさん大丈夫ですか!?」
「あっ…足が…」
そうして、足を確認すると右足が腫れていた。
(足を捻ったか…)
「お兄ちゃん!!アルカお姉ちゃん!!」
そんな俺とアルカさんの心配をしてスーは足を止める。
「俺たちのことはいい!!走れ!!!!」
「うっ…うん…」
その怒号に驚き、スーは言うことを聞いて走り出す。
(よし、それでいい…)
そうして、スーが走っていったことを確認した後、服の袖をちぎり、アルカさんの足へ巻き付け固定する。
「アルカさん…すみませんが、少しずつでもいいので離れてください。」
「え?」
俺の言葉に理解できなかったのかそんな言葉をこぼす。
「この状況じゃ、逃がすことができないので少しずつ離れてくださ…」
立ち上がり俺はゴブリンの方向へと歩み始めながら、もう一度わかるようにそう伝えようとするが…
「聞き取れなかったんじゃないのよ!そうじゃなくて…」
(あぁ、なるほど…)
アルカさんが「え?」とこぼしたのは聞き取れなかったからじゃなかった。今から俺がしようとすることを想像したから出たんだろう。
「駄目!私を放っていいから逃げて!!」
「断ります。ほら、早く離れて!!」
その瞬間、視界の上からオークが現れる。
「ぐっ!!」
「わっ!?」
遠くから、飛んで来て目の前に着地したのだろう、そしてその衝撃で地響きが起こり俺はバランスを崩し地面へと膝と手をつく。
「よう、鬼ごっこは終わリカ?」
「っ…」
向かい合いその図体の差、その威圧に一瞬怯む。
「あぁ…だけど簡単には倒されてやらねぇぞ?」
そう言った後、俺は剣を抜き出し構える。
「はは、それじゃあ楽しませてくレヨ。」
そうして、オークも棍棒を取り出し構える。
沈まった森の中、オークが棍棒を振りあげた瞬間戦闘が始まる。
「っ!」
その動作を見て俺は後へと下がり、降りてくる棍棒を避ける。
「流石にこれは避けるヨナ」
そう言ってニヤニヤと笑みをこぼしながら棍棒を肩に乗せオークは話す。
(くっそ…全然全力じゃないな。)
手加減された攻撃や口振りなどから舐められていることその態度からわかる。
(まぁ、好都合だけどさっ!!)
そうして少し開いた距離を一気に詰める。
「ナニ!?」
予想外のスピードにオークは動揺し、攻撃が遅れる。
その攻撃をしっかりと回避し、俺は足を攻撃するが手応えはあまりなく手も震える。
(やっぱり、皮膚は斬れないか…)
予測通りの展開に、俺は焦らず振り返ると、視界には棍棒を振り上げるオークの姿が見え、すぐに後へと下がる。
「くっ!」
連続で棍棒を振り、襲いかかるオークに対してバックステップやジャンプ、横に回避してなんとか耐え忍ぶ。
「へぇ、子供のくせにいい動きをするじゃなイカ。まぁ、そんな貧弱な腕じゃ俺の硬い皮膚は斬れないけドナ。」
「だろうな…」
(やはり、この体ではオークを倒すにはあの瞳を攻撃するしかないか…)
満面の笑みを浮かべながら攻撃を続けるオークに対して俺は苦笑いを返しながらなんとか回避をしていたその時、バランスを崩し倒れてしまう。
「ぐっ!?しまっ!?」
以前より、戦闘に集中するとどうしてもシュメールのように体を動かして、意識に身体が追いつかず結果バランスを崩し倒れてしまうことがあった。
(こんな時に何やって…!)
自身の卑下をしている時、今回の戦いが特訓ではなく戦闘であることを思い出し顔を上げる。そこには再び棍棒を振り下ろし始めているオークの姿が見え必死に体を動かし右方向へと飛ぶ。
間一髪の所で攻撃を避けたシュウはそのまま転がり地面に這いつくばる。
オークが次の行動に移ろうとしているのを確認して立ち上がろうと地面に手をついた時、
(これは!)
俺は目の前にあったものを掴み立ち上がり振り返る。
「ぐぅっ!?」
しかし、振り返った時には目の前に棍棒が見え、次の瞬間には宙に舞っていた。
3秒もしない内に地面に体を打ち付けた俺はそのまま転がり、最後には壁に衝突する。
「うぐ……」
(どうにか、防御姿勢が取れたおかげで抑えれたが…いてぇ…)
そうして俺は痛みに耐えながら立ち上がる。
「へぇ、今のを耐えたノカ。」
そう言って俺の状態を見て、ニヤニヤとしながらオークはこちらへと近く。
(さっきみたいな隙はもうない…正面突破はきつそうだな…)
そうして、走り出した俺は左右に動き木を盾にしながらオークへと近づいていく。
「なるほど、ならこれはどウダ?」
そうしてオークは自身の周りにある木を棍棒でへし折り遮蔽物を無くしていくと共にこちらへと折った木を投下してくる。
「なっ!?」
(どうする…このままじゃ近づけても…無駄になっちまう!!)
しかし考えている間もなく、飛んでくる木々を必死に避けながらシュウはオークとの距離を更に詰める。
「今のも避けるか…だが、この先は遮蔽物がないぞ!どうスル!!」
(くそ!こうなったらやるしかない!!)
そして、俺は真正面からオークの攻撃範囲内へと踏み込む。
その瞬間オークは体を捻って勢いよく棍棒を振り始める。
(っ!薙ぎ払いか!!)
確かに遮蔽物が何もない大地、何処から俺が攻撃を仕掛けても当てられるこの攻撃が一番効率的だった。
「っ!!」
咄嗟に判断したスライディングで攻撃を避けオークの目の前まで接近する。
「喰らえ!!」
そうして俺はさっき拾った物をオークの顔めがけて投げつける。
「ぐっ!小細工なんて意味がな…っ!?く…くそ…これはストルベリーか…」
顔に潰れたストルベリーを食らったオークは必死に顔からストルベリーを取ろうと拭う。
(チャンスだ!!)
そして、ストルベリーに意識が向いていた
オークの頭部へと接近し、攻撃を仕掛る。
「舐めてもらっちゃ困ルナ…!」
しかし、その攻撃はオークの手に受け止められてしまう。
(っ!失敗した!?早く逃げ…ぐっ!!)
攻撃が失敗した俺は急いでオークから離れようとするがそれよりも早く手に掴まれて拘束されてしまう。その瞬間に剣も落としてしまった。
「ようやく捕まえタゾ…」
そうしてニヤニヤと笑みを浮かべながらオークと向かい合うこととなる。
「ぐっ…ストルベリーで動きが鈍ったのはフリだったのか…」
どうにか抜けられないか必死に抵抗しながら俺は話す。
「いいや、普段ならもう少し悶えていたさ、ただ連続で刺激臭を食らって今だけ耐性がついていたんダヨ。」
(なんだよそれ…運が悪かったってことかよ…)
俺は悔しさを拳に乗せてオークの拳に叩きつける。
「さて…それじゃあ、お話もそろそろおしまいにするか。」
そう言ってオークは拳に力を込めていく。
「ぐ…ぐあぁぁぁぁ!!」
メキメキといいながら俺の体は痛みに包まれていく。
(くそ…ここまでなのか…)
そう考え始めたその次の瞬間、「エアブリッド」という声が響くと共に風の渦がオークと俺を襲う。
その拍子に手から力が抜け俺は風に吹き飛ばされる。
「うわ!?」
飛ばされた先に木があり衝突するかと思われたが、その前に受け止められた。
「ルディさん!!」
「すまないなシュウ…俺たちが逃がしてしまったばかりに…」
そう言いながらゆっくりと下ろしてくれる。
「いいえ、大丈夫です。それよりも2人とも無事で良かったです。」
オークよりも向こう側にドルクさんの姿も見える。
「ぐっ!?くそ!またお前ラカ…!」
「あぁ、お前の好きにさせるわけにはいかないんでね。おい、シュウ動けるか?」
そう言ってオークに返事を返した後、俺に質問をする。
「ええ、動けます。」
「よし、それなら逃げろ。俺たちじゃ勝てないが数分後なら稼げる。早く!」
俺の言葉を聞いてそう話すルディさんだったが、
「いいえ、俺も残ります。」
「馬鹿なことを言うな!お前も死ぬことにっ!」
気を使わせないため言うつもりはなかったんだろうお前“も“死ぬと言った瞬間ルディさんは口を抑える。
「やっぱり死ぬ気だったんですね。」
「…」
ルディさんはその言葉には返事をしなかった。
「無言は肯定と一緒ですよ…それに、アルカさんが怪我をして動けないんです。」
「っ!本当か!?」
怪我をしたと聞き驚くルディさんに返事をしながら話を続ける。
「えぇ…だから時間を数十分稼いでも無駄になってしまう…それに、今スーが村に向かってくれています。3人で戦って救助が来る時間稼ぎをしたほうがまだ助かると思いませんか?」
「っ…その通りのようだな…」
俺の話を聞いて納得してくれたルディさんは剣を抜き、オークへと向ける。
「ありがとうございます。ルディさん。」
そうして、俺も再び剣を構え直す。
「どうやら、話し合いは終わったらしイナ。それじゃあ俺から行クゾ!」
そうして、仕掛けてくる攻撃を回避し戦闘が再開する。
シュウ、ルディ、ドルク3人が再び揃いオークとの戦いは3ラウンド目へと突入する。
ここまで見ていただきありがとうございました!良ければ次回も見ていってください!




