序章Ⅱ「少女との出会い」
何も意欲がなかった少年シュメール。しかしある日訪れた冒険者達に憧れてそしてその中の女性に恋い焦がれ彼女を守るため強くなりたいと願った。2年後シュメールは自身の夢の為に騎士学校へ入学することを決め、旅に出る。その道中魔物の咆哮が聞こえ…
「はぁ…はぁ…」
私は走っていた森の中を必死に。
「なんで…なんでよ…私は…私はお父さんに元気になってほしいだけなのに!!」
私は逃げていた、森の中で薬草を取るために…そんな時たまたま4匹のゴブリンに出くわしてしまった。
「嫌だ嫌だよ!お願い…助けて!誰かぁ!」
必死に逃げるお気に入りの靴が脱げても怪我をしても…
だけど私は必死になりすぎた。必死になりすぎて足元に気が向いてなかった。そう私は木の根に引っかかり体が前のめりに宙に浮かんでしまった。
「あっ…」
そして地面に衝突してしまう。
すぐに立ち上がろうとしたが、背後すぐにゴブリンがいることに気づいてしまった…
「あっ…あぁ…」
思考が恐怖に染まる…
そして私は立ち上がることが出来ず魔物の方向へと向き直り、後ろへと這いずることしか出来なかった。
そして、死の時は訪れる。ゴブリンが一斉に飛び込んでくる。
(あっ…だめだもう…)
そうして私は目を瞑る。
(ごめんなさい…お父さん…)
………
ドンと何か衝突する音が聞こえた。
だけど私は何も痛くない…強いて言うなら擦った腕や足は痛いけれど…ゴブリンの持っていた剣で斬られるほどの痛みは感じなかった。
疑問に思った私は恐怖に怖がりながらも目を開ける。
そこには少年がいた…
少し大人びてて、顔は普通だけどすごくかっこよく感じた。
そして近くにいたゴブリンたちは少年に吹き飛ばされたのか離れた場所で倒れていた。
「来いよ、ゴブリン。俺が相手してやる。」
そして少年が次々にゴブリンを倒す姿を見て私は見惚れていた。
「ふぅ…大丈夫かい?」
魔物を倒し終わった後、恐怖で足を振るわせていた金髪の少女に声をかける。
「うっうん…大丈夫…です…」
「そうかそれならよかった。」
返事を聞きながら剣を鞘にしまう。
「君名前は?」
「えっと…スフィアです。スフィア・タリル。」
「そっか、スフィアかいい名前だね。ほら掴まって。」
そう言いながら手を差し伸べる。
「っ!!ッッッッ!」
少しビクッとした様子で心配になりもう一度確認してしまう。
「ん?どうした?本当に大丈夫か?」
「っ!うっうん、大丈夫です。ありがとうございます。」
そう言った後スフィア俺の手を掴み起き上がる。
「僕はシュメール・スメルだよろしくな。」
「うん!よろしく。」
その後疲労と安心から眠ってしまったスフィアを抱えながら森を出たが、日が出ている間に村着くには到底たどり着けない為野宿をすることとなり、スフィアが起きた所で話をしていた。
「へぇー、スフィアは【ショバ村】に住んでるんだ。偶然だな、僕もショバ村に向かってるんだよ。」
「えっ!そうなんですか?」
スフィアはすごく驚いた様子だけど嬉しそうにしている。
「うん、騎士学校を目指してね。」
「あぁ、それで村まで…」
「うん、食料とかも欲しいし。後ベッドが恋しんだよ。」
「あはは、それなら期待しててくださいね。自慢の宿があるんで。」
「それは楽しみだな。」
そんな雑談をしながらご飯を食べた後、疑問に思ったことを聞く。
「そういや何でこんなところにいたんだ?村からは結構遠いはずだけど…」
「そっ…それは…」
言いよどむスフィアだったけど、少し立った後理由を話し始めてくれる。
「私にはお父さんがいるんだけど…お父さんが病気になっちゃったんだ…それでお医者さんに見てもらったんだけど…治すことが出来ないんだって…必要な薬草が足りなくて…」
「それでこの森に来て薬草を探していたのか…」
「うん、そうなんだ。」
(なるほどな…)
スフィアの話を聞いた後、僕はこう続ける。
「なら今日はこのまま休もう。」
「え?でも早くしないと…」
焦った様子でこちらに向くスフィア。
「まぁ、落ち着け。今から探し始めたら森の中で夜になっちまう。そうなったら見つけれるものも見つけられないし、また魔物に襲われるかも知れないぞ?」
「うっ…」
思い出したのか暗い顔をするスフィア。
「明日になったら一緒に探そう。それだったら効率もいいだろ?」
「え?そんなの悪いよ!」
「俺がお手伝いしたいんだよ。協力させてよ…ね?」
「うっ…だけど…」
そうしてスフィアは少し考え、
「それじゃあ、よろしくお願いします。」
と返事をしてくれる。
「よし、それなら早速ご飯を作ろうぜもうすぐ夕日が落ちてくるし。」
「うん…わかった。」
そうしてご雑談をしながら料理を一緒に作りご飯を食べる。そして2人で寝転がって夜空を見上げていた。
「星、綺麗だね。」
「うん、綺麗。」
夜空には無数の星が光輝いていた。
「そういえばシュメールって何歳なの?」
「ん?俺か?12歳だよ。スフィアは?」
「私は10歳。シュメールの方が年上なんだね。」
「そうみたいだな。っても、気にすることはないからな。」
「うん、わかった。」
そうして2人で夜空を眺める。
「あっ、」
「?」
ふと、説得することに意識を持ってかれ、どんな薬草が必要なのか聞いていなかったことを思い出す。
「そういや、スフィアどんな薬草が必要なんだ?」
「えっと、確かサタイル草ですね…」
「おいおい、高価な薬草だなぁ…」
(なるほどな、たしかにそれなら直接探そうとする気持ちもよくわかる…)
サタイル草それは別名万能薬と呼ばれているほどに様々な病気に対応できる薬草だ。
しかし、見つかる数は少なく、ギルドの依頼料でも実際に購入するにしてもゴールドが高すぎてそれこそ貴族しか買えない。
「そんなにお父さんの様態は悪いのか…?」
「うん…筋肉がどんどん弱っていく病気なんだって…サタイル草でしか治せないって…」
「そうなのか…」
「だからスフィアはここまで来たのか。」
「うん…ここでなら何度か見つかったことがあるって、お医者さんが言ってたから…」
(確かにここではサタイル草が何度か見つかったことがあると経由した村で聞いたことがある。だけど…一人でなんて無茶だなぁ…)
「あの…」
「ん?」
考えているとふと声をかけられる。
「別に無理して協力してもらわなくてもいいですからね?みんなは無理だ諦めるしかないって言ってた。だから無理だと思うなら…」
考え事していたことを後悔していると勘違いされたのかそんなことをスフィアに言われる。それを遮り俺の考えを話す。
「何言ってんだ、男に二言はないってな。というか俺は手伝いたいから言ってるんだ気にしなくていいよ。」
「…ありがとうございます。」
その後は2人は話をして、明日村まで戻るためには半日は必要、明日の帰る為には早朝から薬草探しを始める必要があると考え、早めに就寝こととなった。
次の日ーー
予定通り起きた2人は、早速太陽の下でサタイル草探しを始めていた。
しかし、そう簡単に見つかる筈はなく、数時間が経っていた。
「はぁ!!」
ぐぅおぁぁぉぁという絶叫と共に魔物はその場に倒れる。
「スフィアどうする?森も深くなってきて魔物も増えてきてるが…」
「うん…もうちょっとだけ奥に進みたい。」
「わかった。それじゃあ行こうか。だけどここからは更に危険になるだろうから気をつけろよ?」
「うっうん…」
そうして2人は奥へと更に進む。
「っ!」
森をゆっくりと歩いていたシュメールは瞬時にスフィアの口を塞ぎ一緒に木の影に隠れる。
「むぐ!?む!?むむ!?」
「しっ!静かにしろ…!」
「むぐっ!」
それを聞いてスフィアは暴れるのをやめる。
「ぷは!!はぁはぁ…」
「すまない…スフィア。」
スフィアの口を防いでいた手を離し静かに距離を取る。
「何…何があったの?」
「あれを見ろ…」
俺の突然の行動に困惑するスフィアへ、冷や汗をかきながら先にあるものを見るように伝える。
「っ…!」
俺の言葉で視線の先にあるものを確認したスフィアは驚いた様子で目を見開く。
「あれって…」
「あれはまずい…気づかれていない間にとに離れ……っ!…」
「…?どうかしたの?」
話を止めたことを不思議に思ったスフィアは不安そうに声をかけてくる。
「スフィア…先に行ってくれ…俺も後で追いつく…」
シュメールは魔物より奥になにかがあることに気づくそして、それを魔物が狙っていることも…
「え?」
「早く!!」
そうして魔物がそれを潰そうと棍棒を振り下ろそうとしている所を見て駆け出す。「シュ!?シュメール!?」
振り下ろす前に追いつき、魔物の後ろから攻撃をしかける。
「っ!!」
(防がれた!?)
剣が棍棒に防がれ、そのまま距離を取る。
「早く逃げろ!!」
「っ!」
魔物がこっちを見た瞬間、奥にいた女性にそう伝える。
「こっちだ!さっさとこい!!」
そう言って目の前の魔物おそらく…ミューティゴブリンを挑発しスフィアや女性がいる反対側へと走り出す。
グゥオアアアと咆哮をあげ俺を追いかけてくる。
(よし…とりあえずまずは成功だな…)
そしてシュメールはミューティゴブリンと攻防しながら森の中を駆け抜ける。
ミューティゴブリン…ゴブリン変異種でゴブリンの中でもトップクラスの素早さと攻撃力がある。ギルドでもAランクの冒険者以外討伐依頼が受けられないほどの強敵だ。何でこんなところにいるかは分からないがとにかくひたすら逃げるしかない…
「っ…!はぁはぁ…」
(体力はついてきたと思ってたんだがな…)
「っ!」
振り返り、ミューティゴブリンの振り下ろす棍棒を剣で防ぐ。
「ぐっ!」
走っている勢いのまま反転し攻撃を受けた為バランスを崩し地面を3.4回転する。
「っ!」
回転の途中で手を着き、ゴブリンの追撃避け、一歩後ろに下がり踏み込みと真正面から攻撃をするが棍棒で防がれる。
(くそ…パワーも負けるか…)
そのまま押し合いとなるが力負けしていることを自覚し後ろへと後退する。
「っ!?」
(嘘だろ行き止まりか!?)
後退をしたシュメールは背中に土の感触を感じる。
クギャギャ!
だが、ゴブリンには関係無い。勢いはそのまま攻撃を仕掛けてくる。
「ぐぐ…」
土の壁を背に棍棒の攻撃を剣で防ぎ再び押し合いとなる。
(まずい、このままじゃ潰される…!)
力を込め押し出そうとするが押し返せない。
クギャギャギャギャ
勝利を確信したのかニヤッとゴブリンは笑みを浮かべる。
「何勝った気になってるんだ?」
そう言った瞬間押し合いしていた力を抜く。
その瞬間ゴブリンはバランスを崩し隙ができる。その隙を逃さず、両足で力めいいっぱい蹴り飛ばす。
ひっくり返ったゴブリンに追撃を入れるがギリギリで避けられ掠る程度しか通らない。
そのまま3.4撃と追撃をかけるが3発目は避けられ、4発目は武器が衝突しあい、吹き飛ばされる。
「まだだ!」
そして、地面に落ちているきのみを広い投げつけ目眩ましにしながらジグザグにゴブリンへと近づく。
そして、ゴブリン顔へときのみがジャストヒットし、ゴブリンが悶える。
「これならいける!」
そう勝利を確信し、懐に飛び込んだ瞬間、ゴブリンが目を開け、俺が剣を振り始める前に棍棒が顔へと近づいてくる。
(しまっ!!)
全てがスローモーションのようにゆっくりと時間が進む。
(完全に攻撃を決めるため踏み込んでいたため避けることができない…)
そうして、少しづつ少しづつ棍棒が接近し…
「ぐはっ!!」
まともに攻撃を受けたシュメールは、そのまま吹き飛ばされ土の壁に衝突し膝をつく。
その時、近くに洞窟があることに気づく。
(あの洞窟へ逃げ込めれば…)
そう考えている間にゴブリンが目の前まで距離を詰めていた。
「っ!しまっ…」
そして再び棍棒の攻撃を受け地面を滑る。
(くっそ…)
頭に衝撃を受けたことで視界と思考がぼやっとしゴブリンの対策が出来ない。
そしてゴブリンがニヤニヤとしながら近づいてくる。
(このまま…俺は死ぬのか…?)
その時カメリアさんの事を思い出す。
(何馬鹿なことを言ってんだ!こんな所で死んでたまるかよ!!)
そうしてゴブリンの攻撃を剣で防ぐ。
グギャ!?
反撃する力も残ってないと思っていたのか俺の行動に動揺したゴブリンの隙を逃さず押し飛ばす。
その時、ゴブリンの額に何かが衝突し再び悶える。
「っ!?」
(一体何が…!?いや…今はそれよりも!)
動揺しつつも大きなチャンスを得たシュメールは一気に距離を詰めゴブリン首を斬る。
その後、着地をうまく出来ずそのまま地面へと衝突し意識を失う…
ということで序章Ⅱです。実はこんなに長くなるとは予想してなく、本当なら序章はⅢで終わる予定だったのですが、予定をズラシⅣで終了することとなりました。すごく長い序章ですが、見てもらえれば幸いです。次回もよければ見て行ってください!