チャプター12「ヒアルムの森」
スーとアルカさんを連れ去ったゴブリンを追いかけ、シュウはヒアルムの森を駆け抜ける。
「はぁ…!はぁ…!はぁ…!」
(なんで、目を離してしまったんだ…何のために一緒について行っていたんだ馬鹿野郎!)
後悔しても意味がないことはわかっている。けれどどうしてもそういった考えが頭をよぎる押し寄せてくる。
そんな時目の前にスライムが現れる。
「邪魔だ!」
突進してくるスライムを避け、鞘から出した剣で攻撃する。
(うまく攻撃できなかったか…まだまだだな…)
避けた際にバランスを保てず、攻撃の際に力がうまく入らなかった。
「落ち着け、落ち着けばカーマインさんとの修行の時みたいに…はぁ…」
すぅ…はぁ…深く呼吸し、走り続け呼吸と心を落ち着かせる。
そして、再び攻撃を仕掛けてきたスライムの動きを冷静に剣で防ぎ、弾かれ地面に着いた瞬間を狙って距離を詰め剣を振り下ろす。
「ふぅ…」
(もっと強くならなきゃな…)
スライムが倒されたことを確認して剣を鞘に納め、再び走り出したが視界の先何か見覚えのある物が見える。
(あれは…もしかして…)
そうして、近づくとそこにあったのはスーの右靴だった。
(やっぱり…ということはもしかしたらこの先にも…)
そうして靴を拾った後、じっくり見ながら小走りに進むと、その先にスーの左靴があるのを見つける。
(あった…ってことは、これはおそらくスーが作ってくれた道しるべだ…)
そうしてスーの靴を拾い上げる。
「ありがとうスー…絶対に見つけ出してやるからな…」
そうして、スーが作ってくれた道しるべをたどり走り続ける。
30分後…
「はぁ…はぁ…」
(道しるべを節約している…早くしないと…)
徐々に道しるべ通しの間隔が増え始め、スーが節約して始めているのがわかり、シュウは焦り始めていた。
そんな時、目の前に影が現れ、衝突してしまう。
「っ!?」「うぉ!?」
衝突の衝撃でバランスを崩したが、すぐに体勢を戻し、剣を構える。
「イテテテ…なんだよもう…ついてねぇなぁ…」
(ゴブリン!?)
視線の先には尻もちをつき、頭を擦っているゴブリンがいた。
「一体何が…ってなんだ子供じゃないか…こんなところでどうした危な…」
「2人はどうした!!」
ゴブリンが話しているのを無視して俺は胸ぐらを掴む。
「おっおい!!落ち着け何の話だ!?てか剣を下ろせ下ろせ!?」
「サゴイ村からお前が連れて行っただろ!俺ぐらいの小さな子供2人だ!」
「知らねぇよ!」
その言葉を聞き、更に胸ぐらを引っ張り顔に迫る。
「知らねぇって本当に!!なんなら人間に会うのも久しぶりなんだって!」
「っ!!」
眼の前のゴブリンが意思を持って話している事に気づき、このゴブリンがスーたちを攫った奴とは違うことを理解した俺は手を離した。
「すまな…すみません取り乱しました…」
「あぁ、いいよ。誤解もとけたようだしな。」
「あっ、ありがとうございます…それでは俺は急いでいるので失礼します!このお詫びは今度させてもらい…」
と走り出そうとした瞬間腕を掴まれる。
「待て!攫われたってなんだ、話してみろ!」
「っ…急がないといけないんです!離してください!」
そうして、振りほどこうともがくが力で勝てず振りほどけない。
「駄目だ、今ここは危ないんだ子供一人で居させられない!」
「危険なのは承知だ!それでも、2人を助けないといけないんだ!」
時間が刻々と過ぎていくことに焦り、無理に解こうと手を再び動かしもがく。
「話せば協力してやるっていってんだ!俺のほうが森を把握している不味い話じゃないだろ!」
「っ!」
その言葉を聞き、視線がゴブリン顔に向く。その表情から心配してくれていることが確信できた。
「…取り乱してすみません。」
「大丈夫だ。それよりも、焦るのはわかるが何があったのか教えてくれ…急いでるんだろ?」
「はい…」
そうして、サゴイ村でスーとアルカ姉さんがゴブリンに攫われたこと、それを追って森へ入ったこと、その道中に道しるべがありそれを頼りにここまで来たことを話す。
「そうか…頑張ったな…」
ゴブリンは俺の頭を撫でる。
「…。」
「それで?君の名前はなんだ?」
撫で終えたゴブリンはそう言って名前を聞いてくる。
「俺はシュウっていいます。」
「シュウか、いい名前だな。俺はノルディスだ。ルディって呼んでくれたらいいよ。」
「はい、よろしくルディさん。」
「あぁ、よろしくな。」
そうして握手を交わす。
「ということでシュウ、早速思い当たる節があるからついてきてくれるか?」
「…。」
(本当に信じていいのか?…でも、さっきの顔…あれは本当に感じた…信じてみるか…)
「安心しろ…って言ってもできないよな。ならとりあえずついてきたら信じれると思うよ。恐らくだが、その途中にも道しるべが落ちているはずだから。」
俺の様子を見て察したルディさんはそう言って歩き出す。
「わかりました…」
その道中、確かにスーが作った道しるべが見つかった。
「本当にあった…」
「よかった。なら先に進もう。」
「はい。」
そう言って優しい言葉をかけてた後、ルディさんは再び歩き出す。
そして、その後も更に道しるべが見つかるが、途中で完全に途切れてしまった。
「安心しろ、もうすぐ着くついてこい。」
「うっ、うん…」
そうしてルディさんについていくこと10分目の前には木の門が現れていた。
「ここは?」
「ここは俺たちゴブリンが住む村だ。」
「ゴブリンの村…」
前世の記憶、ゴブリン集落での戦いを思い出し警戒をする。
「心配しなくてもいい、ここに住むゴブリンは俺が言うのもおかしいけど、人間との共存、友好的にしたい奴らが集まった村だ。ほら行くぞ。」
そうしてルディさんは村へと入っていく。
「…ゴク。」
緊張が解けないが、覚悟を決めルディさんの後を追って村へと入っていく。
入るとそこにあったのはサゴイ村とは変わらない平和な日常だった。
そんな風景に呆気に取られているとルディさんが話を始める。
「凄いだろ?魔王が死んでから9年間その間に俺たちも少しずつ人間といい関係を紡いで今ではこうやって互いに技術を教え合っているんだ。」
「凄い…」
「本の中で書かれていて、魔物と共存し始めているってことは知っていたけど…本当だったんだな…」
そう関心しながら歩いていると村の住民であるゴブリンが、
「あっ、おかえりなさい!」とこちらへと挨拶をして、それに対してルディさんも挨拶を返していた。
その後も何人かに挨拶をされて、その度に返しつつ村の奥へと進む。
「ここだ。とりあえず入ってくれ。」
そうして村の奥にある少し他よりも大きな建物へと案内され入っていく。
「おーい、帰ったぞー。」
「おう、長おかえり。どうだった森の方は。」
「相変わらず荒らされていたよ。」
部屋の中で片付けをしていたゴブリンはルディさんを出迎えて何かを聞いていた。
「そうだったか…てか、長…その子…」
ルディさんと話している途中そのゴブリンがこちらに気づいた。
「あぁ、ちょっと森であっ…」
「長〜駄目だよ。ほら早く村へ帰してきな。今ならまだ、刑が軽くなる筈だから。」
ルディさんが俺について説明をしようとしたが、そのゴブリンは勘違いしたのかそう話す。
「ちっげーから!一人でいるこいつと森で偶々出会ったんだ。ほっとくわけにも行かないだろ?」
「あはは、冗談ですよ。ってそれよりも何か急いでいるみたいだね?」
(なんだ冗談か…)
2人の会話を聞いてホッとしてしていると更に会話は進んでいく。
「はぁ、心臓にわりいな…とりあえず、話を聞いてくれドルク。」
「あぁ、勿論。」
そうしてドルクさんへルディさんが今までの事を説明をしてくれる。
「なるほど…それでこの村に連れてきたのか。」
「あぁそうなんだ、何か知らないか?ちょっとしたことでもいいんだ。」
「…。そういや。なんかゲルが様子の変なやつがいたって話してたな…」
「本当!?」
「よかったな。思ったより早く見つかるかもしれないぞ。」
そうして、数分後、俺たち3人はドルクさんが話してくれたゲルさんの家を訪ねていた。
「ん?さっきの話?あぁ…」
そうして目の前いるゲルさんは話し始める。
「つい20分前のことなんだがな。森の中で薪になりそうな木の枝を探していた時に必死に何かを抱えて走るダングの様な姿が見えて声をかけたんだが、無視されたんだ。魔物違いだったのかなと思ってたんだが、やっぱりなんかあったのか?」
「あぁ、断定はできないんだがな。こいつの兄妹と友達が攫われて犯人を探しているところなんだ。」
ゲルさんの質問にドルクさんが答える。
「それは大変じゃないか…」
「それで?ダング(仮)は何処に向かったかはわかるか?」
少し考えた後、俺を見てからゲルは何処にいるか話してくれる。
「…村には入ったみたいなので、あれがダングだったとしたら家にいるんじゃないですかね。あいつの家は洞窟ですし、もし…ですけど、連れ去っていたとしても他の人に気づかれにくい…と思う。」
「そうかわかった。ありがとう。それじゃあ急ごうシュウ。」
「うん。」
そうして、ダングというゴブリンの家へと向かい走り出す。
ーー???ーー
その頃、スーとアルカは洞窟の中で手足を縛られた状態でいた。
「へへ…もうすぐ上手い飯が食べられるぜ…よだれが止まらなねぇな…」
その近くには、そう言いながら料理の準備を進めるゴブリンがいる。
「っ…」
「駄目ね…」
私は錯乱から覚めたゴブリンに気づかれないようにアルカお姉ちゃんと腕の紐を解こうとしているけど全然解ける感じがしない…
(お兄ちゃん…)
そうして、追いかけてくれているであろうお兄ちゃんの姿を思い浮かべ、助けてくれることを願いながらロープを解き続ける。
そうして…数分かけて少しずつ解けてきていた時…
「おい!!何をしている!!」
と扉の方から大声が聞こえる。
「っ!?」
声の方向へ視線を向けるとそこにはゴブリンがいた。
(しまった…バレた…)
「よかったぜ、定期的に見に来ておいて。」
そうして、私の胸ぐらを掴まれ持ち上げられる。
「ぐっ…」
「逃げようとしても無駄だぞ?お前たちは俺の餌になるんだからなぁ!」
そう言ってゴブリンは私を投げ飛ばす。
「うっ!」
「きゃ!!」
そうして、投げられた私は壁に激突し、激痛が走る。
「っ…」
「スー!スー!ねぇ、大丈夫!?」
アルカお姉さんは必死に体を動かして近づき、私のことを揺らす。
それは感じることができたけど、衝突した影響で意識がすぐに戻らず、返事ができなかった。
「たく、逃げ場なんてないだよ。助けも来ないし、大人しくしとけば楽に殺してやるのになぁ…」
そう言って近づくゴブリンと私の間に割り込り、
「もうやめてください!」
と大きな声で言い放つ。
「お願いします。スーだけは…この子だけは助けてください…私はどうなってもいいので…」
アルカお姉ちゃんは恐怖で体と声を震わせながらも私のことを守ろうとゴブリンの前に立ちはだかる。
「はは、そうか。お前を好きにさせてもらっても良いんだな?」
その言葉にゴブリンは笑いそう話す。
「はい、なのでスーだけは…」
「嫌だね。」
「ぐっ…」
そうして顔を叩かれたアルカお姉ちゃんは横へと倒れる。
「忘れたのか。お前たちは元々餌として連れ去ってきているんだ。そんな餌の分際で俺に指図できる訳ないだろ?まぁ、運の尽きだと思って諦めるんだな…」
そんな時、チリンチリンと部屋中に音が響く。
「っておっと。どうやら準備ができたみたいだぜ?それじゃまずはお前からだな。」
そう言って、高揚し始めたゴブリンは私の髪を鷲掴みする。
「いだっ…!?」
その痛みで私の意識は戻る。
「やめて!お願い!私なら食べていいから!!」
必死にお願いするアルカお姉さんを無視して、ゴブリンは私のことを引きずり扉を出る。
その時「その手を離せ!!」という大きな声と共に私の髪を掴んでいたゴブリンは後方へと倒れる。
ーーサゴイ村:カーディナル宅ーー
「うーん、たまには2人っきりの散歩もいいな。」
「えぇ、シュウやスーが産まれてからは、出来てなかったですしね。」
昼も近くなり、散歩から帰ってきた2人は村に帰ってきた所で声をかけられる。
「あっ!?2人とも!!」
「セシリアどうしたんだ?」
焦っている様子のセシリアが気になりそう聞く。
「そっそれが...」
そうして、スーが拐われたこと、それを追ってシュウがヒアルムの森へと向かったこと、そして、今、村の男性が総出で捜索をしていることを知らされる。
「そんな!?」
「っ!」
カメリアが驚いている横で、情報を聞き俺はヒアルムの森に向かって走り出す。
「マイン!!」
何も言わず走り出した俺に不安そうな顔で呼び掛けるカメリア。
「カメリア!お前は家で待ってろ!もしかしたら帰ってくるかも知れない!」
「うっ、うん、わかった!」
そう、カメリアが頷いたことを確認し、俺は森へと向かう。
ゴブリンを後方へと倒した人物は一体…
そして、村ではカーマイン達の元へ情報が到達し、動き出す...
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