チャプター5「妹」
新しい家族スカーレットが産まれ、高揚するシュウ。家は更に賑やかになり、幸せな日々を堪能していた。
数週間後ーーー
スカーレット…スーが産まれてから、家はより明るくなった。
ちなみに俺の時とは違い2人は泣きじゃくるスーに苦戦している。
「おぎゃあ、おぎゃあ!」
「うんうん、やっぱり赤ちゃんってこんな感じだよね!シュウの時は穏やかすぎた!」
「ふふ、そうね。」
けれど、カメリアさんとリリアナさんは楽しそうにしている。
「ほらスーご飯ですよ。」
「っ!!」
そんな風に育児をしている2人のことを眺めていると、カメリアさんが服をずらし始めたため、俺は背中を向ける。
(カメリアさんの子供になったとはいえ、やっぱりこれは駄目だ…)
少し時間が過ぎ、
「あうあう。あー」
「ご飯終わった?それじゃあゲップしようか。」
カメリアさんとスカーレットの会話を聞き終えたことを確認して振り返ると、カメリアさんがゲップを出すためにトントンとスカーレットの背中を優しく叩いていた。
「ゲプ。」
「えらいねぇ、スー。」
そうして、ゲップをしたスーの頭を撫でるリリアナさん
「リリアナ、シュウのご飯のお願いしてもいいですか?」
「うん大丈夫だよ、ほら寝かしつけておいで。」
「ありがとうございます。それじゃあスー、お昼寝しに行きましょうね。」
そうして、ご飯の準備をリリアナさんに任せたカメリアさんはスーの頭を撫でながらと一緒に寝室へと向かう。
「それじゃあ、シュウもご飯食べよっか。ほら今日はお姉さんが特別に食べさせてあげよう。」
「うんん、ひとりでたべれるからだいじょうぶ。」
(食べさせてもらうのはなぁ…)
「えぇ…たまにはいいじゃない…前まではさせてくれてたじゃん!」
「それまえのはなしでしょ。」
「前って…シュウ今、本当は何歳なのよ…」
そうして、悲しんでいる様子のリリアナさんだったが急に疑いの眼差しを向けてくる。
「うっ、2さいだよ。」
そうして目を逸らしながらそう答える。
「本当かなぁ…」
更にリリアナさんは詰め寄ってくる。
「というかぼくがあかちゃんのころからいっしょでしょ?」
少し動揺しながらもリリアナさんに反撃すると、
「あはは、冗談だってシュウが賢いのは今に始まったことじゃないし。」
そう言ってリリアナさんは笑いながらそう話す。
1年後ーーー
1年が過ぎ、俺は3歳になり、安定して歩くことも走ることもできるようになった。スカーレットも1歳になり、最近はハイハイできるようになって縦横無尽に動き回っており、俺も振り回されている。
「はぁはぁ…疲れる…」
ちなみに今俺はカメリアさんとリリアナさんに頼まれスーと追いかけっ子としていた。というのも色々危なっかしくて行く先々でぶつかったり落ちそうになったりするから先回りして止めていた。
(なんだあの体力…無尽蔵かよ…まぁ、俺がスタミナないのもあるんだけどさ…)
「そろそろ、体力作りは始めてもいいかもな…」
そう言って、先程寝かしつけたスーを見つめる。
「カメリアさんもそうだけどお前のことも守れるよう強くならないとな。」
すやすやと気持ちよさそうな顔をして眠るスーの頭を撫でながらそう話す。
「ん…」
「おっと…起こしてしまったらまずいな…」
目覚めそうになったため、手を離してその場から離れることにした。
「…に………ん。」
「ん?」
部屋から出ようとした時、スーが「お兄ちゃん」と言った気がして振り返る。
「気のせいか…というか話せるわけ無いもんな。」
スウスウと寝息を立てて眠るスーを見て、そう結論づけ部屋から出ていく。
半年後ーー
冬が終わり、暖かく心地よい風が吹く季節となった。
スカーレットは成長が速いのかもう立ち上がってふらふらとだが歩けるようになり、言葉も辿々しいが話せるようになっている。
(俺はまがい物のだけどあの子は本物の天才なのかもしれないな。)
そんなことを考えながら俺は夜も更けた村の中を走っている。
俺は半年前から毎日この寝静まった時間に体力作りのため、ランニングをしている。3歳の子がランニングしてるところを見られると何かまずいことが起こるかもしれないと考え、誰も起きていないこの時間に走ることにした。
そしていつも通りランニングを終え、暗いリビングで用意していたお茶を飲んでいたのだが…
ガチャッと扉が開くような音が聞こえた。
(ん?扉の音…玄関の方か?)
コップを置いた後、音の出処を確認するためにリビングを出て、ゆっくり玄関の方へと向かうが…何も変化はなかった。
(なんだ…?気の所為だったのか?いや、念のため確認するか…)
そうして一通り家を確認するが家族以外に人がいるような痕跡はなかった。
(…なら外に出ていったのか?でもそれならそれでこの家に痕跡が残らないのは謎だ…)
そう考えながら玄関に戻る。
(やっぱり気になるから少しだけ確認してみるか…)
そうして、玄関の扉を開けると微かに音が聞こえる。
「遠くはないな…」
そして、家の横、小さな庭になっている場所から聞こえてくることを確認して息を殺して近づく。
「…」
そして、角についたシュウはゆっくりと角の先を覗き込む。
…
……
………
その先にいたのは腕立て伏せをしているスーだった。
「なんだ…スーが腕立て伏せをしているだけか。」
拍子抜けしてやれやれと言いながら玄関へと戻…
(え?)
そしてさっき自身が発した言葉を改めて考える…
(そんな馬鹿な…)
その結果に動揺しながらも答え合わせのために再び覗き込むとやはり、そこには腕立て伏せをしているスーがいた。
「うん………」
そうして、俺の頭は一瞬思考停止し、脳裏には宇宙が広がったがすぐに意識を取り戻した俺は現実逃避をするかのように静かに退散…
ボキッ…
「あっ…」
「え?」
俺は真下の音の正体である木の枝に視線が誘導された後、スーのいた場所に視線を戻す。
「………」
「………」
そして目が合ってしまい、互いに気まずい沈黙の時間が流れ、お互い汗がダラダラダラダラと滝のように溢れだす。
「……バ」
「バ?」
「バブーバブー」
そして沈黙を破ったスーがハイハイしながら周囲を移動し始めた。
「なーんだ、そうだよ。気の所為に決まってるよな。腕立て伏せとハイハイを勘違いするなんて俺もおっちょこちょいだなぁ…いやー本当。」
そうして納得した俺は玄関に戻…
「ほっ、なんとかごまかせた…」
「そんなことで誤魔化せるかぁ!」
「ですよねぇ!!」
俺は盛大にツッコんでしまった。
腕立て伏せをしていたスーを見かけて困惑するシュウ。一体どういうことなのだろうか…
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