表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

第4話

   

「卒業後は、どこで歌うのですか?」

 俺がよこりゅう先輩に尋ねたのは、十二月の末。クリスマスシーズンも終わり、人々の意識が新年に向けられる頃だった。

 合唱サークルから巣立っていく先輩たちの中には、社会人向けの市民合唱団に入って、活動を続ける者もいるという。それらしき一般の合唱団は市内にいくつか存在するので、よこりゅう先輩も、その一つを選ぶのだろう。

 俺はそう思ったのだが……。

「大学を卒業したら、合唱も卒業だよ」

 彼の口から出てきたのは、意外な返答だった。

「僕は器用じゃないからね。仕事をし始めたら、趣味に時間を()く余裕はないと思う。特に合唱は、時間のかかる趣味だからなあ。みんなで時間を作って集まるなんて、働きながらでは無理だろう?」

 そう言われると、返す言葉もなかった。

 社会人向けの合唱団もある以上、実際には、よこりゅう先輩が言うほど『無理』ではないはず。

 しかし彼は、合唱の全体練習を野球やサッカーの練習試合に例えていたくらいだ。正規の練習時間以外に、個人練習に費やす時間も人一倍だったからこそ、こういう考え方になるのだろう。

 よこりゅう先輩の気持ちは理解できるけれど、俺個人としては寂しく感じてしまう。

「なんだか勿体ないですね。よこりゅう先輩、こんなに歌が上手いのに……」

「そんな顔するなよ。ほら、人生は長いんだからさ。また何か新しい趣味を見つけるさ。もっと時間のかからない、簡単に出来そうな趣味を」

 彼は優しく、俺の頭をポンポンと叩くのだった。

   

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ