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全て……繋がった

「まぁ話せば長ぇんだけど。聞く?」


 そう言って修也は最後の唐揚げを口に入れ、袋をゴミ箱に投げ捨てた。ヤンキーなのにポイ捨てしないのは偉いぞ……じゃなくて!


「いやもちろん聞くけど! 君の家庭は一体どうなってんだよ! 複雑過ぎないか!」

「んー? 少し特殊だとは思うけど、まぁよくあることだろ?」

「ねぇよ!」

「ははっ! あるわ!」


 腹が膨れて機嫌が良くなったのか、修也はヘラヘラ笑いながら僕をどつく。


 なんだ陽キャのLimeみたいな喋り方しやがって……貴様何でも最後に(笑)を付ける奴だろ。僕知ってるんだからな。


「いいから詳しく教えてくれ」

「わーったよ」


 そう言うと修也はまたヤンキー座りをして、語りだすのであった。


 ──


「えーっと。オレん家はその辺の平民共とは違って、金持ちで裕福なんだ」


 いきなり喧嘩売られた。


「おい、自分で言うかそれ?」

「事実なんだからしょうがねぇだろ。……でもまぁーその代わりに厳しい訳よ。マナーだのモナーだの。よく知らねぇけどさ」


 ……それはAA! とツッコミたかったが、絶対に修也に通じないツッコミなのは分かってたので、僕は黙って聞くことにした。


「んでそんなある日、オレが先輩に気に入られて……あ、先輩ってのは緑川先輩のことな」


 いや誰だよ。急に知らん人物を出すな。


「その緑川先輩とオレでチーム『デス・ファイナル・クリムゾン』を立ち上げたんだ」


 うわっ、だっっせぇー。意味分かってんのかな。


「……それがヤンキーグループの名前?」

「違ぇよ! なんだよヤンキーグループって!これはただのチーム名!」

「チーム名?」

「ああ! 放課後みんなで集まってやんや騒ぐだけのグループ! オレらは別にヤンキーなんかじゃねぇの!」


 ……小学生かな?


「あっそう……ならグループ名とか要らんだろ」

「あった方がいいだろ! ほら、あの有名な『めっちゃ平和バスターズ』みたいなやつ作りたかったんだよ!」

「絶対要らねぇ……しかも名前違うし」


 というか何で僕の周りの人はみんなグループに名前を付けたがるんだ? 非常に謎だ。


「それでオレら仲間を増やして遊んでたんだけど、案の定家族にバレてな」

「うん」

「『そんな変な連中と付き合うのなら、家から出てけ!』って言われてさ」

「うん」

「出ることにした」

「は?」


 思わず「は?」と言ってしまった。いやだって修也くん、君中学生でしょ? 強がんないでよ。


「いや無理でしょ。中学生で家を出るなんて」


 僕がそう言うと、修也はチッチッチと指を振る。


「いやいや、ところがそうでもないんだよな」

「何で?」

「お金はちゃんと仕送りしてくれるから」

「……あー」


 金はあるのかよ。なら問題ない……のか? いやでも中学生が一人暮らしって、普通に駄目なんじゃ……と、僕が色々と考えている間に修也は喋り出す。


「つーわけでオレは一人で暮らしてんの。だから本当の家には一年くらいは行っていない。姉ちゃんにもしばらくは会ってないんだ。分かったか?」

「まぁ……納得はできないけど理解はしたよ。つまり修也は家から追い出されたって訳?」

「まぁそういうこった」


 修也はゲラゲラ笑う。笑い事なのだろうか。


 とりあえず一通り話を聞いたので、僕は修也に質問をしてみることにした。


「ちょっと聞きたいんだけどさ。さっきマナーが厳しいって言っていたけど、他に厳しいこととかなかったか?」

「あ、他? そだなぁ、勉強とかは厳しかったぞ。オレは全く成績上がんなかったから、途中から点数も聞かれなくなったぜ! ふははっ!」


 また修也は笑う。だから笑い事じゃねぇって。


「いやほら……友人関係が厳しいとかは?」

「ん? 特に無かったぞ……あ、緑川先輩を家に連れて来てからはめちゃくちゃ言われるようにはなったけど」

「それは何で?」

「だって緑川先輩、姿だけは思いっきりヤンキーだからな。カーチャンもビビったんだろな」


 やっぱりヤンキーグループじゃねぇか……いや、ちょっと待てよ。まさか修也がヤンキーの格好しているのって……


「……もしかしてお前。まさかその先輩の格好を真似とかしてないよな?」

「お! よく分かったな! この長髪とか、学ランの下に赤いシャツ着るのとか、全部先輩をリスペクトしてんだよ!」

「……」

「どしたソーマ?」


 ……ゆっ、友人関係を厳しくしたのもコイツのせいかァ!!!


 そりゃあそうだよね!! いきなり変な友達連れて来て、ヤンキーの格好しだしたらその友達のせいだと思うよね!! そりゃ友達を引き離したくなるわ!!


 それで華村にも飛び火したって訳か……


 全て……繋がった。


「全部……」

「ん?」

「全部お前のせいじゃないかぁ!!」


 僕は修也の肩を掴んで思いっきり揺らした。


「うわっ、どうしたいきなり!!」

「どうしたもこうしたもあるか! 修也も一緒に来い! 一緒に桃香の親を説得するぞ!」

「えぇ?」


 まだ修也は状況を読み込めてないらしいので、僕はもっと詳しく言う。


「言ってなかったけど、桃香が学校を辞めさせられるのは友人を離すためなんだ!」

「そうなのか?」

「そう! 桃香がやっと出来た友達を、親が引き剥がそうとしてるんだぞ! お前は許せるか!?」

「ん、それは許せないけどよ」

「だろ!? なら今すぐ行くぞ!! 原因はお前にもあるんだからな!!」


 僕ら修也の手首を掴んで走り出そうとする……


「おい、待て待て! それはいいんだけどお前姉ちゃんの家の場所知ってんのか!」

「知ってる! 地図貰ったし!」

「いやそうじゃなくてだな……ゲート内に入れないだろ!」

「ゲート?」


 聞きなれない言葉に僕は足を止めてしまう。何だゲートって。


「何だそれ?」

「姉ちゃんの方の家は高級住宅街だから、不審者とかが入らないように壁に囲まれてるんだ!だからその中に入るにはゲートを通らなきゃならないんだよ! もちろんゲートは許された人しか入れない仕組みになっているんだよ!」



 何だそのセキュリティ……



「……ハリウッドセレブの家かっ!!!!」


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