第一話 プロローグ
初めましての方は初めまして。『海風』と申します。処女作すら進んでないのに二作目です。暖かい目で見守って下さい。
僕の名前は秋本勇志郎高校に通うごくごく平凡(と思いたい)で体型以外は普通の学生だ。そして今僕は体育館裏にいる。
「おい!ふざけんな!金、全然たりねぇだろうが!!」
「ひぃぃぃ!」
情けなく叫んだのが僕。怒っているのがクラスメイトの堂本烈火、頭髪を赤く染めており、しかもそれを逆立てている耳やら眉毛辺りにピアスをしており見た目が完全に不良である。教師なんて見て見ぬふりである。そのため恐喝、脅迫、暴力なんでも好き放題するようになった。もちろん反抗した先生もいたが次の日には学校からいなくなっていた。
「ちょっと~。あまりにもうるさいから自撮りに集中できないじゃん。もう少し静かにしてよ烈火。」
この人は森岡マリー、髪の毛を桃色に染めており長い髪をツインテールにしている。制服の上から寒いからかパーカー着ている。父親が森岡カンパニーの社長であり彼女はその娘であるが、父親に劇的に甘く育てられ自分中心に世界が回ってると思っている。だからいつも勉強以外は自分が一番じゃないと気がすまないらしい。
さて話は戻るが僕は今ここにいる理由は彼に昨日『金を持ってこい』、と言われたからである。僕の家庭は決して裕福ではない。母親が身を粉にして働いて生活している。姉さんはいるけど、結婚して今は旦那さんと2階建ての一軒家で幸せに暮らしているからあまり頼りたくないという、母親の意見でなんとか暮らしている。だから、お金を抜くと生活はかなり苦しくなる。だから絶対に抜いちゃいけないんだ。
「母さんのお金は絶対に抜けないよ・・・。」
「なんだと?放課後、みせしめにてめぇをフルボッコにして校庭においてやる!!!」
「ひぃぃぃ!」
すると後ろから人の歩く音が聞こえてきた。
「誰をフルボッコにするって?堂本烈火君。」
彼は一瞬だけ顔をひきつらせ後ろをみたが、声の主がわかったとたんすぐに表情をもどした。僕にとっては最悪の事態だ。
「俺も混ぜろよ、烈火。」
彼は後藤健。ニット帽を目深く被っている。頭が切れる天才と言われているらしく、堂本と一緒にいることが多い。彼は堂本の様な目立った事はしないが、かなり強いという噂を聞く。僕の襟を掴んだままの堂本はニヤッと笑った。
「じゃあ、今からボコすか。」
「やめてよ、もうやめてよ!!」
「や・だ。」
左手で僕の襟を力強く握り、右手で拳を血管が出る位に握っていた。そしてその拳を顔にクリティカルヒットさせた。その一撃で僕は気を失ったらしく、次に目を覚ました所は保健室のベッドの上だった。顔には包帯やガーゼが巻いてあった。
「あれ?ここは?」
「目が覚めたか。」
この人はぼくの姉の秋山美羽。一年前に結婚して今は山本になっている。姉さんは僕とは違ってなんでもできる。スポーツもやらせたら金メダルを一人で全て取ってしまうのではいかと噂され、勉学に関しては大学にて一年で逆に教授達に教えてほしいと言われるほどの天才と言われている。そんな姉さんは、僕の事が嫌いなんじゃないかとおもう。理由はわからないが声をかけると睨んでくるし、分からないことがあって聞くとため息ばかりしている。
「姉さ・・・山本先生。・・・・・・怒って」
「ああ、かなり、な。」
かなり深いため息をついたあと、窓辺に行き僕に背を向けて話しかけてきた。
「なぁ、勇志郎。なんであいつらに歯向かおうとしない。」
「だって僕は力はそんなにないし、頭だって良くない。それこそ・・・それこそ魔法を使わない限りあいつらに勝てるわけないじゃないか!!」
その瞬間、姉さんがこちらを向いた。
「やってもいないのに決めつけるな!!!」
姉さんの怒号が保健室内に響き渡り。その言葉を聞いて体が固まってしまった。
「勝てるわけない?悲しい弱者の言い訳だな。もういい、二度とその顔を私に見せるな。わかったらさっさと教室に戻れ!!」
そう言って姉さんは睨み付けてきた。姉さんは怒るとめっちゃ怖い。これ以上怒らせたくないので教室に帰るか。顔とか体とかココロが痛い。
「・・・失礼しました。」
戻りたくないなぁこの顔だし。もうすぐ放課後だし。とりあえず早く逃げよ。教室の扉を開けた瞬間、地獄の音が聞こえた。
『キーンコーンカーンコーン』
あ、やべ。放課後のチャイムだ。さっさと鞄取らないと。扉を開けた先にはあいつらがいた。
「よぉ、おかえり。あ・き・も・と・く~ん。」
「楽しいゲームをしようか。」
処刑か・・・。もういいや何もかも生まれてこのかた生きていていいことなんてほとんどなかった。もう、弱い立場として一生生きていくしかないのか。
『やってもいないのに決めつけるな!!!』
不意に姉さんの言葉が浮かんだ。確かに僕は今まで何もせずに助けだけを望んでいた。なら一回、一生に一度の勇気を僕に下さい!神様!!
「や、やめてよ!こ、これ以上僕をな、殴るなら!体の痣の写真を撮って君たちをう、訴えてやる!!」
最後辺りはちょっと声がうわずってしまったが言いたいことはちゃんと言った。もう後悔はない。堂本の顔を見ると顔中に血管がでており、他人が見ても明らかにぶちギレてることがわかる。
「言いたいことはそれだけか?あぁ?よーし。てめぇだけは絶対に。」
深いため息を吐いた後こちらに殺気を持って睨み付け、大声で叫んだ。
「ぶっ殺す!!!!」
彼は拳を握り大振りで僕の顔目掛けその拳を放った。反射的に目を瞑ったがすぐには衝撃がなかった。恐る恐る目を開けると彼の拳は僕には完全には、届いておらず目の前にあった。心臓がドキドキしているが、彼の後ろを見ると姉さんが彼の腕を掴んでいた。
「おい、そいつは今さっき治療が終わったばっかりだ余計な仕事を増やすな、クソガキ共。」
「んだよ!先公が口出し・・・山本先生!?」
「こいつの傷と今の証言、こいつらだな?ユウキ。」
「はい、先生。恐らく間違いないですね。」
ユウキって人は僕のクラスメイトの女の子でフルネームは『桜ユウキ』。風紀員をしている。何故か姉さんと仲良く、相談などしているらしい。姉さんの剣術に憧れて剣道を始めたらしく、元気で明るい性格のためクラスの皆から人気がある。
話を戻すが、何故ここに姉さんがいるのだろうか。堂本君達を説教しに来たって訳でもないだろうし。
「ねぇ、秋元君。」
「え、は、はい。何でしょう?」
何、挙動不審になってるんだよ、僕・・・。みっともないなぁ。彼女は苦笑いをしながら話を続けた。
「君、体育館の裏で倒れていたけど。顔とか腫れていたから一応、お姉さ・・・山本先生の所に連れていってもらったけど。堂本君たちに殴られた事に間違いない?」
そういいながらものすごい顔を近づけてくる。かなり整った顔してるし、ちゃんと眼をあわせてくるから女子に免疫ない僕は余計に挙動不審になってしまった。
「う、うん、間違い、ない、デス。」
「そう、山本先生。これで証拠はバッチリですね。」
「あぁ。そうだな。」
そんなやり取りを姉さんとしていると、桜さんは僕の手を握り引っ張った。
「ほら、秋山君。帰る前に堂本君達がキミをいじめていたという証言が欲しいの。だから、一緒に職員室まで来てくれないかな?」
「え?あ、はい。行かせて頂きます。」
同年代に変な敬語を使ってしまった。僕はなんてビビりなんだか。トホホ。
桜さんがまた苦笑いしていたその時クラス全体に大きな輪が包み込んだ。クラスの生徒は突然の事に戸惑いその場に留まる。ちらほら帰った生徒もいるが最低でも僕らを除いた十人はいる。思わず叫んでしまった。
「皆!ここから逃げろーー!!!」
一斉に扉に向かって走り出す生徒達。輪が強い光を放った。僕らも扉に向かおうとしたその刹那、クラスにいた僕ら6人は教室から姿を消した。
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