ファミリーレストランにて
私達は歩道橋を渡り、すぐ近くにあったファミリーレストランに入る。入り口にはキッズメニューの特典であるメダルで回せるガチャガチャと今日の日替わりメニューを伝える立て札が置いてあった。
店内を照らすオレンジ色の照明はどこか懐かしい暖かさを演出し、何とも言えない心地よさを演出していた。
昼時ということと入学式が行われていたこともあって店内は学生やその保護者、高齢者やサラリーマンなどの様々な人達で店内は混雑し、小石が擦れ合うように騒がしかった。
「お客様、何名様でしょうか?」
やがて小太りの店員が額に汗を流しながらやってきた。
私は「三名です」と伝えると店員は「かしこまりました」と言って窓際のテーブル席に案内してくれる。お忙しい中ありがとうございますと心の中で感謝を述べる。
「お先どうぞ」
輝君は先に座らず、まるで執事のように丁寧に左手を差し出し、私と吉祥寺さんを先に座らせる。
吉祥寺さんは「お言葉に甘えて」と真っ先に奥のソファーに腰かける。続いて私も吉祥寺さんとは反対のソファーに腰かけ、隣に輝君が座る。
「もうお腹ペコペコだよ」
席に座ると吉祥寺さんは早速メニューを開くと眉を顰めて吟味する。
「はい、輝君」
私はもう一つのメニューを輝君に渡そうとするが、
「僕は決まっているからいいよ」
とあっさりと断られる。それならと私がとメニューを開く。
何が食べたいかと言っても今の私に選べるメニューはそう多くない。と言うもの春休みに怠けすぎた結果、少し体重が増えてしまった。一応、毎日、ランニングはしていた。だが、お菓子作りが趣味の妹が毎日のようにお菓子を作っては美味しそうに食べているのだ。そんな光景やミルクと果物の甘い匂い。何より妹が美味しいと一言褒めてほしいが故に食べてと勧めてくるのだ。結局私は甘い誘惑に負け、運動量以上のカロリーを摂取してしまい、今になって苦しむことになってしまった。
ページを捲っていくと私のようなスタイルを気にする人向けをターゲットにしたヘルシーメニューをまとめた項目が目に入る。この中から決めようと指を止め、目をギョロギョロと動かす。するとたくさんの野菜とエビがのったサラダそばが目に入った。カロリーを確認する。ハンバーグに食えあべれば断然マシなカロリーだと即決する。
「私、決まったよ」
「それじゃあ、呼ぶよ」
余程、お腹が空いていたのだろう。吉祥寺さんは真っ先に呼び鈴を鳴らす。
すると今度は白いYシャツと黒いズボンの三十代前半のウエイトレスがハンディを操作しながらやってきては「ご注文はお伺いいたします」と少し頭を垂らす。
「私はミックスグリルとご飯大盛とドリンクバーは……」
先ずは吉祥寺さんが注文する。
同年代の女子にしては良く食べる割には自分よりも細いスタイルなことに驚いているとドリンクバーをどうするかと聞かれ、慌てて首を縦に振る。輝君も欲しいそうで吉祥寺さんは三つでと指を三本立てる。
「私はサラダうどんで」
「日替わりランチでお願いします」
続いて私、輝君の順で注文する。
三人の注文を受けたウエイトレスはハンディを打ち終えると承りましたと頭を下げ、忙しそうにキッチンへと戻っていく。
「何か飲みたいものある?」
早速、輝君はドリンクバーを持ってこようと立ち上がる。でも輝君は気を使って私達の分のドリンクまで持ってこようとする。
「それくらい自分でやるわ」
「気にしないでいいから」
流石に世話になりすぎていると感じた吉祥寺さんは自分で持ってくると立ち上がろうとする。でも顔を立たせてくれと言わんばかりに輝君も頑なに引き下がらない。輝君は意外と頑固な人だ。特に良いことしようとする時は絶対に自分がやると聞かない。
そんな輝君に根負けした吉祥寺さんはそれじゃあお言葉に甘えてとコーラを所望する。
「真由はどうする?」
と聞かれ、私はオレンジジュースと希望する。輝君は了解したとドリンクバーに向かっていった。