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まほろば  作者: 雨霧颯太
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驚愕8式自走砲!!

木更津の東京湾アクアライン最終防衛線を苦もなく突破したオロチは何事もなかったかのように海ほたるを通過していった。


オロチが引き起こした衝撃波により海ほたるは廃墟と化していた。海ほたる側の攻撃指揮官、「轟雷」隊長沼田二佐は天地逆になった愛車の中で目を覚ました。


「・・・う・・・い、痛ぇ・・・腕が折れてやがる・・・加藤・・・生きているか?」


沼田は下にいる砲手の加藤二曹を見た。加藤はうめき声を上げていたが沼田よりは軽傷のようだった。


「か、体中が痛いです。・・・隊長。」


「それだけ減らず口が叩けりゃ元気だ。俺たちに出来ることは、救助を待つくらいだな・・・ちくしょう・・・化け物が・・・」


電源が切れ、真っ暗になった車中で沼田は悔しがった。最新型の戦車もレーザーもヤツには通用しない。もう、8式自走砲に希望を託すしかなかった。


「山根・・・頼んだぞ・・・」



司令部では特殊戦術研究旅団司令官の山根陸将補が指揮に追われていた。ついに最終決戦が近づいたのだ。


「おやしお級は目標には一切手を出すな。申し訳ないが、足手まといだ。それより、SH-60隊の救助にあたってくれ。」


おやしお級の艦長たちも最初は命令に背こうと考えたが、圧倒的な力の前になす術もないことを悟った。2隻は浮上してSH-60隊の救助に向かったが、オロチは2隻を意に介すこともなく冷然と無視して通り過ぎた。


「野郎・・・俺たちは眼中に無しかよ!!」


セイルで、副長の江島三佐が言った。艦長の堂本二佐は隣で唇を噛みながらその事実を受け止めていた。


その頃、司令部では完成なった、8式自走砲がモニターに映し出されていた。


「これが、あの・・・8式自走砲かね?」


幹部がその巨大さに嘆息した。


「はい。坊津沖に沈没した戦艦大和よりサルベージした46cm砲を我々が研究、そして新規に開発した、自衛隊史上最大にして最強の自走砲です。」


8式自走砲。正式名称は8式46cm自走砲である。全長約35m、主砲は50口径46cmライフル砲。各部に砲撃に耐えうる対衝撃波装甲を施してある圧倒的な防御力と攻撃力を備えた戦車であった。


有効射程は45km。東京郊外から、目標を狙い撃ちする作戦である。


「現在のところ、オロチの周波バリアの前では、ミサイルなどの衝撃によって敵を破壊する兵器は無力です。目標を倒すには極超音速で飛来する撤甲弾による砲撃しか、我々には攻撃手段はありません。」


居並ぶ幹部たちの前で毅然と山根は言い放った。


そのころ、8式自走砲の中では射撃調整と発射準備が行われていた。


「目標現在位置を確認、砲身斜度調整開始。」


「主砲弾、装填。」


「目標、上陸します。」


ついに、オロチが東京に上陸した。


その頃、2輛の「轟雷」が、オロチと距離をとるように挟み込みこんで、レーザーを照射した。「轟雷」による攻撃のためではない。8式自走砲の照準を「轟雷」の照準と合わせることでより正確にさせるためであった。


「よっしゃ、オロチめ!とらえたでぇ!!!」


「轟雷」車長の近藤一尉が関西なまりを丸出しにして叫んだ。


「発砲諸元、誘導砲弾に入力完了。砲撃準備完了!」


8式自走砲のオペレーターが司令部に報告した。


「撃てぇ!!!」


山根は即座に砲撃命令を下した。砲弾が轟音とともに8式自走砲から放たれた。衝撃波で、あたりに配置された自衛隊の車両は吹き飛ばされた。8式自走砲の車内にも衝撃は伝わり、大きく揺れていた。


「これが、46cm砲か・・・」


米沢二尉が絞り出すように言った。米沢二尉はこの年、54歳。ずっと整備畑で働いて来た。このまま、准尉で退官と思っていた矢先、以前から知己のあった山根に二階級特進で特殊戦術研究旅団に整備班長として引き抜かれた。彼の30年以上にも渡るキャリアの中で、46cm砲は恐らく最大にして最後、そして最強のものであるだろう。あまりに規格外の代物を扱ってしまったと、嬉しい反面恐ろしいという気持ちで今の状況を見つめていた。


「主砲弾、コントロールを離れます。ユー・ハブ・コントロール!」


主砲弾に搭載された誘導装置は8式自走砲のコントロール下にあったが、着弾直前、より命中精度をあげるために、「轟雷」にコントロールを引き渡す必要があった。


「おっしゃぁ!!!アイ・ハブ・コントロール!!往生せぃ!!!化け物ぉぉぉ!!」


近藤は叫び、レーザーをオロチに向け続けた。オロチが金切り音に振り向き、上を向いた瞬間、46cm主砲弾が命中した。


オロチは首の肉を大きくえぐられ、その場で崩れ落ちた。




誰もいないゴーストタウンと化した東京を千尋は原付で走り抜けていた。都心部は危険だと考えたが、危険を冒さなくては良いネタは仕入れられない。千尋はそのまま都心に向けて原付を走らせた。


オロチが迫っている。死ぬかもしれない。だが、もしかしたら俺の求めていた白い戦艦が見えるかもしれない。千尋は何とも言えぬ高揚感に支配されていた。気がつくと都庁の屋上に立っていた。


千尋はファインダーを向けた。眼前には沿岸部の炎が見えた。自衛隊の車両が炎上している。次にオロチにカメラを向けた瞬間、オロチが首から血を出して倒れ、そのあとで大きな爆音が聞こえた。千尋は崩れ行くオロチの姿を夢中で撮っていた。



オロチを仕留めた「轟雷」車長、近藤一尉は信じられない光景を目にしていた。


「ヤツが・・・まだ生きてる!!」

奥の手、46センチ砲の登場です。


46センチ砲の下りはとある漫画をモチーフにして書いてみました。

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