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まほろば  作者: 雨霧颯太
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決戦準備

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


新星編隊長の森は絶叫し、スロットルを限界まで振り絞っていた。


通常は上空から投下して威力を発揮する燃料気化爆弾であったが、目標には強力な周波バリアがある。敵の虚をつき、ダメージを与えるには、接近しての急降下爆撃、そして全速離脱しかなかった。

燃料気化爆弾の被害半径は小さい。編隊全機が離脱に成功した。


「やったか・・・」


森は荒い息を吐いた。12機分の燃料気化爆弾の爆圧と高熱を食らったのだ。通常の生物なら生きていられないはずだ。だが、20発以上のミサイルをものともしない相手に効くのか。


森には爆発が収まるまでの数秒間が永遠のように思えた。


「う・・・嘘だろう・・・」


森は驚愕した。最新鋭の戦闘機と攻撃機が、艦隊を丸ごと消してしまうのと同じくらい強力な攻撃を加えているのに・・・尚も立っていられるとは。だが、バリアを張る時間はなかったのだろう。表皮は痛々しいほど焼けただれ、身体の至る所から鮮血が吹き出していた。


「やったぞ!!」


司令部では幹部連中が奥のテーブルで肩をたたき、握手しあっていた。山根は内心その無責任極まる光景を掃き溜めでも見るかのようなまなざしで一瞬睨みつけると、すぐいつもの調子に戻った。


「あの〜。お喜びのところ申し訳ないのですが、ただ、ヤツは足を止めたに過ぎませんよ。」


「何を言っとるんだね!山根君。どう見たって、死に損ないじゃないかね・・・あ・・・あ・・・」


得意そうに画面を指差した幹部の表情が青くなった。吹き出していた鮮血が止まり、かさぶたのようなものが出来上がっていた。


「どうあれ、時間が稼げたのは事実です。戦闘準備と住民の避難を急がなければなりません。」


「司令官、「いざなみ」から通信が入っています。」


特殊戦術研究旅団所属の大型輸送機「いざなみ」からだった。北海道に配備していた5式強襲戦車「轟雷」を運んで来たのだった。5式強襲戦車「轟雷」は特殊戦術研究旅団が独自開発した万能戦車で、ホバー装置を備え、従来の戦車ではなし得ない高速移動や、場所を選ばずに降下することも可能な、新機軸の戦車であった。


「よぉ!!山根!ついに現れたってな。この日のための訓練。腕が鳴るぜ。」


戦車大隊指揮官の沼田二佐が愛車の中で豪快に笑っていった。


「あぁ、わざわざ北海道から呼び寄せたかいがあったな。」


「んで?俺たちは、成田か?それとも羽田に降りるのか?時間はあまりないぞ。」


「あぁ、それでさっきマップデータが送られて来たと思うが?」


「あぁ、送られて来たが・・・」


「ここから降りてくれ。」


山根の突飛な一言に沼田はあぜんとなった。


「そんなこと聞いてないぞ!!」


ディスプレイにたっぷりつばをくっつけながら、絶叫にも似た抗議を遥か地下にいる司令官に送った。


「今言ったぞ。・・・それに、『いざなみ』の各機長にも連絡済みだ。あ、ついでにお前の部下たちにもな。」


山根はウインクすると通信を切った。沼田は目が点になった。


「・・・おい、加藤・・・お前・・・知ってて言わなかったな・・・」


沼田機の砲手の加藤2曹は上官の恨めしいまなざしを見た。加藤はなるべく目を合わせないように言った。


「その・・・言ったら、減棒3年だと言われまして・・・」


「あの野郎・・・ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


沼田が大声で絶叫する中、「いざなみ」は「轟雷」を射出していった。


「いやぁ・・・アイツをからかうのはこれだからやめられん。」


司令部で山根は一人ごちた。


東京上空を飛ぶ「いざなみ」編隊5機はそれぞれ5輛ずつ「轟雷」を射出した。


地表近くに達した「轟雷」は装備されたパラシュートを開き、落下速度を減速させると、目標となる効果地点へそれぞれ降下していった。


山根の戦闘準備はそれだけに終わらなかった。万一の場合に備え海上自衛隊に協力を要請し、P3-C哨戒機とSH60-Jをフル動員させ、東京湾に至るまでの沿岸海域にソノブイを投下させ、目標の位置を察知しやすくさせ、更に東京湾アクアラインを挟んで両側に最新鋭兵器を用意させた。


高出力長射程レーザー砲「瞬雷」である。ここを最終防衛ラインとして、さらに「轟雷」15輛、多数の地対地ミサイルを配備した。


だが、彼の撃退のための秘策はまだあった。


「現在のところ、我々の科学力、そして武力ではヤツにお手上げです。未来の科学がダメなら、過去の科学においでいただくことにしました。」


「まさか、アレを使うのかね?」


彼は、幹部たちにそう報告すると、モニターに小さく映る彼の奥の手を見た。住民が避難を終えつつある東京郊外であるものが組み立てられていた。








輸送機「いざなみ」スペック


全長:100m

全幅:120m

エンジン:「太陽」ターボファンエンジン8基

フルペイロード:250t

乗員:5名

航続距離:不明


特殊戦術研究旅団が開発した超大型輸送機。部隊を万全の状態で即座に展開出来るように一度に多くの装備を搭載可能にさせている。超大型の全翼機であり、ペイロードブロックを取り替えるだけで、早期警戒指令機、電子線機、爆撃機に用途を変えることが出来る多用途機でもある。



5式強襲戦車「轟雷」

全長:9.5m

全幅:3m

最高速度:毎時160km(ホバー使用時)

武装:7.7mmバルカン砲

   140mmライフル砲1門


日本が開発した最新鋭戦車。ホバー走行を可能にし、市街地戦で迅速な展開と移動が可能になった。また、従来の戦車よりも軽量化することで、輸送機からのパラシュート降下もできる多用途万能戦車。




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