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まほろば  作者: 雨霧颯太
10/17

目覚めのとき

爆煙が晴れたとき、司令部の一同は崩れ落ちた。


オロチは46cm砲弾を口で受け止めていた。一度目は効いたが、二度目は迎撃され、三度目の起死回生の作戦も水泡に帰した。山根にはオロチが笑ったように見えた。オロチは口で受け止めた砲弾を一気に噛み砕き、光弾を8式自走砲に発射した。


「回避!!」


米沢の判断で直撃は免れたが、衝撃で8式自走砲は横転し、大破した。


「み、皆・・・生きてるか・・・」


横転した8式自走砲の中で、自分の傷に構わずに米沢は車内を案じた。車内の乗員は言葉にならないうめき声を上げていた。非常バッテリーが機能し、赤いランプがついていた。乗員たちは重傷であったが、なんとか全員生きていると言った感じであった。


米沢の傷は右腕と左足の骨折そして、肋骨が3本折れていた。それでもなんとか意識を保ち、司令部へ連絡を取り続けていた。


「もう・・・打つ手は無い・・・」


山根は言った。司令部の一同すべてが真っ赤に燃える炎熱地獄と化した臨海副都心をただ傍観していた。全ての攻撃手段が通用せず、唯一の頼みであった8式自走砲が大破し、最早攻撃は不可能だった。オロチはさらに歩をすすめ、内陸に移動を開始した。


時間をさかのぼること45分前、特殊戦術研究旅団とオロチが激戦を繰り広げているとき、小笠原諸島南方の孤島の地下秘密基地ではある試験が行われていた。「まほろば」の主機関起動実験である。


「いよいよ。この時が来たか・・・これで、『まほろば』の真の力が発揮される。」


艦長の敷島昇はまほろばの姿を見ながら言った。


「そうだ・・・俺たちが100年がかりで作り上げた最高の戦艦の真の力がな。」


艦長の隣で年若い白衣の男が言った。


「これはお前の功績だよ。千早博士。」


「まほろば」の設計者、千早信仁博士である。現在の「まほろば」のほぼ全てを設計し作り上げた、人類最高の科学者の一人だった。


「買いかぶり過ぎだ。俺は単にまほろばの武装を作ったに過ぎない。『まほろば』の基本設計を作り上げたのは爺さん、主機関の基礎理論を確立したのは親父のチームだ。」


千早家はまさに天才科学者の家系で、信仁の父も、祖父も今も現役で「まほろば」の建造に携わっていた。


千早家をはじめとして、居並ぶ科学者たちがコンソールに向かい、各々の作業を行っていた。


「補機球形直列水素核融合炉に接続開始。S機関始動。」


「機関始動。各部オールグリーン。順調に出力上昇中、現在30%。40、50、60%・・・」


突如、警告音が鳴った。


「出力、急激にダウン!現在、30%!なおも低下中!」


「なんだと!!」


信仁は驚いた。万全に万全を重ねたこの実験である。失敗は許されなかったし、急激な出力低下は彼の想像外であった。信仁も、信仁の父も、祖父もすぐにコンソールにかじりついて事態の解決に移った。だが、千早家の頭脳を総結集しても事態は解決に至らなかった。


昇はまほろばを見て叫んだ。


「何をしている。今お前が目覚めねば世界が、人類が滅びる。今こそ目覚めろ!『まほろば』!!!」


昇の目には一瞬、艦が光り輝いたように見えた。


「出力戻っていきます!40、45、50、60、70、80%!!さらに上昇中!!」


「『まほろば』・・・」


まほろばに礼を言うように、昇は目を閉じた。


「現在、出力100%。艦隊各部、機関部に異常なし。実験成功です!」


オペレーターは歓喜の声をあげた。あたりから歓声がわき出した。

全てのチェックを終えた信仁が昇の元にやってきて、肩を置いた。


「これで、『まほろば』は大丈夫だ。思い切って暴れてこい。」


「あぁ!」


昇は帽子をかぶると制御室を出て行った。「まほろば」に乗り込んだ昇はブリッジクルーを見渡して言った。


「諸君。長い間、待たせたな。これより本艦は出撃し、敵巨大生命体を撃破する。『まほろば』発進準備。」


昇の命令以下、ブリッジクルーが忙しく動き始めた。


「主機関、順調に機動中。現在、出力95%。」


「兵装システムオールグリーン。全て異常なし」


「メインゲートオープン。」


「まほろば」の格納庫の扉が開いた。大きな空間が姿を現した。「まほろば」がその空間に入ると、ゲートの扉が閉じた。


「第一発進口、注水開始。現在レベル1。レベル2・・・」


瞬く間に海水が空間に満たされていった。海水が満たされると、外界との扉が開いた。


「『まほろば』発進!!」


ついに60年の期間を経て、「まほろば」がその姿を現した。「まほろば」はその速力をあげつつ海面に向かっていった。


「現在速度上昇中。速力、50ノット、70、90、100、120、140ノット。離水速度に達します。深度、現在40メートル。間もなく海水面に達します。」


「浮上と同時に、反重力リフト作動。巡航モードで飛翔開始!」


昇は指令を下した。眼前には海水面が見えて来た。


「飛べ!!『まほろば』!!!」


「まほろば」の白く美しい艦体が海を貫き、空に飛び出した。60年前の姿とは全く違った姿がそこにはあった。主砲は三連裝2基、より大きくなった推進部。よりシャープになった艦体。流線型ではなくより無骨なくさびのような形にその姿を変えていた。


「スーパーラムジェットエンジン始動。進路を東京にとれ。我々M機関、60年ぶりの出撃だ!」


青白い光がエンジンから出た瞬間、凄まじいスピードで「まほろば」は空に消えた。






「まほろば」2008年仕様スペック


全長:250m

全高:100m(巡航モード)〜120m(戦闘モード)

機関:主機 S機関 補機 球形直列水素核融合炉

最高速力:160ノット(海中)マッハ3.2(空中)

武装:51cmレールガン 3連装2基6門

   対空、対艦ミサイル発射用VLS 108門

   30mm対空レーザー砲 連装12基 24門 

   魚雷発射缶 24門

   艦首反射式硬X線レーザー砲 1門

   その他 武装最高機密

搭載機:無人戦闘機 零式桜花ll型 3機

最高可潜深度:5,000m


60年前に姿を消したまほろばの生まれ変わった姿。主機関に未知のエネルギー機関、S機関を採用し、以前の「まほろば」の100倍近いパワーを誇っている。


武装の性能も格段に向上し、まさにオーバーテクノロジーの産物と言ってよい。

空中機動の関係上、以前あったフロートは排除され、代わりに反重力飛翔翼を装備し、戦う場所を選ばない万能の戦艦として進化を遂げた。


ここにあげた性能はまだ一部で、まだ知られていない武装もあると言う。



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