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エルフは筋トレ本を拾った。 →聖書として崇めた。→筋力が上がった。  作者: 青桐
1章 筋肉エルフと少女勇者、時々、学者
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筋肉ダルマのスキンヘッドが現れた。

「それでは、こちらの水晶に触れてください」


言われた通りに、シエラが差し出す水晶に触れた。

桜も触れる。


「はい、では登録が完了しました、

こちらのドッグタグを首からかけてください」


銅色の板をシエラが差し出した。

受け取ると、僅かに光った。


「それが、冒険者であることの証となります。

それでは続いて、戦闘能力を確認いたします。

訓練場で桜さんには、試験官と戦っていただきます。

その結果で、ランクを発行します。

このランクで、受けられる依頼は変わりますので、全力を尽くすことをお勧めいたします」


「我はどうすればいい?」


「メロスさんは必要ありませんよ。

さっきの小競り合いで、メロスさんは確認しております。

メロスさんはランク4からのスタートとなります。

ランク5以上の方と一緒にでしたら、サマーさんの依頼を受けることができますよ」


「なら、私がランク5って判定されればいいんですね?」


桜がここぞとばかりに、食いついてきた。

どうやら、まだ、魔法の訓練時にちょっと鍛えたことを恨んでいるようだ。

我の上に立てるかもしれないから、食い気味に返したのだろう。

なんて、器の小さいやつだ。

小さいのは大胸筋だけではなかったか。

仕方がない。

我が桜よりも鍛えていないなどと、評価されては、聖書に顔向けができない。


「我もその試験を受けるぞ」


「あの、ランク4が、初めて登録した人に発行できる、最高ランクなんです。

ですから、メロスさんが試験を受けても何も変わりませんよ。

ただ、試験官が怪我をするだけです」


「なぜか聞いてもいいか?」


我の筋肉は、大抵のものには負けない自信がある。


「ランク5からは、護衛依頼なども受けることができるので、実績がない方は、ランク4で勉強してもらうことになっています」


「あのよければ、私たちといっしょに

サマーさんの依頼を受けませんか?

サマーさんの依頼はあるんですよね?」


メイがポンと手を打って、提案してくれた。


「ええ。

まだ誰も引き受けていない、依頼が2つほど。

どちらも、ランク5以上が最低条件です」


「だったら、私はランク7だし、ミリーもランク6だ。

どちらかがいれば、依頼を受けることは可能だろう。

もちろん、桜がランク4になれれば、だが」


「そうですね。

お二人がいれば、依頼を紹介できます。

ではその前に、桜さんは訓練場に行ってください。

訓練場にいる、ボランという者に、ドッグタグを渡せば、試験を受けられます。

訓練場の場所は……、ミリーさん、桜さんを案内してもらえますか?」


「ああ、構わない。

私が案内しよう」


ミリーはシエラに頷いた。


「それでは桜さん、力を全て発揮できることをお祈りしております」


「はいありがとうございます。

じゃあ、ミリー、よろしく」


「ああ、こっちだ」


ミリーについていくと、だだっ広い広場に出た。

そこでは、何人もの冒険者らしい者たちが剣や槍等を打ち合わせて、鍛えているようだ。

素晴らしい空間だな。

我が筋肉が興奮している。


「えっと、ボランさんってどの人?」


「あそこにいる、スキンヘッドの人です」


「結構、スキンヘッドの人が多いんだけど」


「ポランさんに憧れる人が多くて、髪型を真似る人がたくさんいるんです。

あの中にいる、1番筋肉がすごい人が、ボランさんです」


「そういうこと言うと、メロスが張り合う……」


桜が何か言っているが、無視してポランの隣に立つ。

ポランは我に気づき、ニヤリと笑った。


「おう、エルフ? の兄ちゃん。

新顔で、その筋肉。

さらにドッグタグ。

皆まで言うな。

俺の試験を受けに来たんだろう?」


「ああ」


素晴らしい筋肉だ。

戦うために鍛え上げられた筋肉。

聖書の助けなしに、よくぞここまで、鍛え上げた。

素直に尊敬する。

さあ、筋肉を競おうぞ。


「わかってるさ。

男なら、拳で語るもんだ。

だが、これでも試験官を務めて長い。

お前が一発でも俺に当てられたら、ランク6でも、7でもしてやる。

ただし、拳で語れよ?

魔法は無しだ。

どうする?」


「我は魔法を使えん」


「そうか。

苦労してきたんだな。

まあ、それも拳で語れや。

拳で慰めてやる」


「始めていいのか?」


辺りにいた冒険者が捌けて、さっと空間を作る。


「こい‼︎」


我の拳に我の全てを乗せて放つ。

そしてそのまま、男の腹筋にぶち込んだ。死なない程度に。

ボランが崩れ落ちた。

動けないだろうが、意識はあるはずだ。

しばらく無言の時間が流れた。

おそらく、我の拳を噛み締めていふのだろう。

数分後、ボランが口を開いた。


「素晴らしい筋肉だ。

俺じゃぁ、足元にも及ばないらしい。

あんたの生きてきた全てを見せてもらった。

兄ちゃん、いや、メロスって言うんだな、あなたは。

まさか、拳で名前まで語るとは思わなかった。

100年、鍛えあげたその筋肉。

御見逸れした。

あなたなら、ランク10からでも、低いくらいだろう。

俺が責任を持って、ランク11にしてみせる。

安心してくれ」


ポランは、晴れやかに笑って、大の字に倒れた。


「いくら鍛え上げているとはいえ、聖書の教えを受けた我には及ばなかった。

それだけの話だ。

ポランよ。

お前にも聖書を見せよう。

それでお前は、新たな世界を見ることになる」


「どういう状況ですか、これ?

桜さんには呼ばれてやってきたら、ポランさん?

なに変な約束してるんですか。

ランクを11にするなんて、無理ですよ」


シエラが呆れた顔でボランを見ている。


「男が一度、約束したことだ。

守らないわけにはいかねぇ」


「いや、そもそも……」


「ボランさんに約束を守らせてやってくれよ」


「そうだ、ボランさんを男のままにしてくれ」


「ボラン」「ボラン」「ボラン」「ボラン」

「「「「「ボラン」」」」」


随分ポランは慕われているようだ。

まあ、当然だな。

短い人生で、あそこまで鍛え上げているんだ。

尊敬されて当然だろう。


「すみません、私が悪者になっている理由がわからないんですが」


「ごめんなさい。

ウチの筋肉が暴走させたみたいです」

なぜだろう。

美女学者が出てくる予定だったのに、筋肉ダルマが現れた。


すみません、美女迷宮学者は、次回出てくるはずです。

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