チンピラが現れた。
「詳しく、か。
話してもいいが、あまり参考にならないと思うぞ」
困ったようにミリーが笑う。
「うん。
それでも、異世界について詳しい人を知ってるなら、ぜひ教えてほしい」
桜が食い気味に返した。
「わかった。何か事情がありそうだし、隠しているわけでもないしな。
私たちが知っているのは、迷宮学者のサマーという女性だ。
彼女は、『迷宮が異世界と繋がっている』と、主張していた」
「前に、サマーさんの依頼を受けたことがあるんです。
その時に、色々講義してくれたんですけど、その時に言ってたんです。
『本当の専門分野は、異世界だ』って」
桜がピクッと反応した。
「その人、紹介してもらえない?」
「何か理由がありそうだな。
うーん、桜。
そういえば聞くのを忘れていたが、君は冒険者なのか?」
「まだ違うよ。
資金稼ぎに、登録するつもりだけど」
「そうか、それなら彼女の依頼を見つけたら教えよう」
「あと、登録に付き添いますよ」
「ありがとう」
街の検問を抜け、4人でギルドにやってきた。
ギルドの中は綺麗に掃除されている。
「思ったより綺麗だね。
お酒飲んでる人とかいないし」
桜がキョロキョロと中を確認している。
「ギルドにどんなイメージを抱いてるのか……。
依頼者は普通の街の人だ。
酔った冒険者がいるような場所に、普通の人はこないよ。
危険だからね。
冒険者以外を守るため、ギルドがふざけた真似はできないように、目を光らせている。
ギルド内でおかしなことは、そうそう起きないさ」
「まあ、たまぁに、お酒を飲んでから報告にくる、問題のある人たちもいますけど」
メイが笑った瞬間、空気が変わった。
「よう、お嬢ちゃん。
その問題のある奴ってのは、俺たちみたいな奴か?」
メイたちの後ろから、男が声をかけてきた。
振り返ると男が3人立っていた。
3人とも顔を赤めていて、酒の臭いを漂わせている。
「これぞ、異世界の冒険者ギルドって感じだね。
チンピラが絡んでこそ、異世界に来たって感じがするよ」
桜が、メイを庇うように前に出た。
「桜、彼らは素行にこそ問題はあるが、このギルドではトップクラスの実力者だ」
ミリーが桜の耳元で囁いて、桜を背で庇う。
「すまない、気に障ったのなら謝ろう。
あなたたちのことを言っていた訳ではないんだ」
「へへっ。
誠意さえ見せてくれれば、許してやるよ」
「誠意とは?」
「ちょっと俺たちと寝てくれればいい。
ちょうど、3人いるだろ」
「おいおい、いくらなんでも、それはまずいだろう。
おっぱいを揉ませてくれればいいよ。
こんな風にな」
男の1人が、ミリーの胸に手を伸ばす。
桜が、ミリーとさっと入れ替わった。
「固ぇ。なんだこれ。
突指した」
桜が常に張っている、魔法障壁で男の指が曲がった。
「ははっ、絶壁にもほどがあるだろ。
どれ、俺が大きくしてやる」
別の男が手を伸ばしたのを、メロスが受け止めた、大胸筋で。
「大きく出来るなら、ぜひとも頼む。
我は数十年前から、全く大きさが変わらないのだ」
「あっ、なんだてめえ」
「どうした、早く大きくしてくれ」
メロスが男の腕を掴んだ。
そして、そのまま握る力を強めていく。
「痛ぇ。なんだ、超痛ぇ」
メロスに掴まれている男の腕が変色してきた。
それを見て、つき指していない男が剣で切りかかってきた。
「離せこの野郎」
切りつけられた剣は、腕にかすり傷すらつけられずに止まった。
当然、全く痛くない。
「なんだ、お前も我の大胸筋を味わいたいのか」
掴んでいる男と切りかかってきた男を抱き寄せてやる。
「固い。痛い。万力みたいに締め上げられてる」
「外れねぇ、なんだこの化け物」
「「ああああああああああ」」
最後は2人とも叫んでいたが、だんだん静かになっていき、2人の男は意識を失った。
唯一、無事な突指した男が、立ち尽くしている。
仲間はずれは可哀想だな。
「さて、お前も我が大胸筋を味わうか」
「いや、いい。
俺たちが悪かった。
許してくれ」
男が膝をついて謝った。
「遠慮するな。
桜よりも、我が大胸筋の方が触りごたえがあるはずだ。
ぜひ試してくれ」
男を抱きしめてやる。
我が大胸筋を独り占めだな。
「ああ、ああああああ」
「なあ、桜。
メロス殿は、桜を助けたのか?
それとも、本気で桜に張り合っているのか?」
桜は、ミリーの質問に答えなかった。
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