表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフは筋トレ本を拾った。 →聖書として崇めた。→筋力が上がった。  作者: 青桐
1章 筋肉エルフと少女勇者、時々、学者
5/25

桜はお金を手に入れた。

「その娘は、仲間か?

まあとにかく助かった。

色々文句を言いたいこともあるけど」


女冒険者は笑う。

改めてみると、髪の毛はピンク色で白い肌の美人だ。胸はそこそこある。妙齢の美女だ。

毒でやられた少女の方は、まだ倒れたままだが、眠っているだけのようだ。

寝ている少女の方は、髪が青い。

胸がとても大きく、普通の呼吸をしているだけなのに、僅かに胸が揺れる。

その胸を、桜が一瞬、親の仇のように睨みつけた。しかし、一瞬で切り替えた。


「いえ、たぶん、そこの筋肉エルフがご迷惑おかけしたかと思います。

悪気はないので、許してください」


桜が軽く頭を下げた。


「いや、彼には本当に助けられた。

彼がいなければ、メイは死んでいただろう。

少しいたずら好きのようだけど。

彼は、私たちの恩人だ。

っと、すまない。

そういえば、あなたたちの名前すら聞いていなかったな。

私はミリー。

あなたに助けられたのは、メイだ。

よければ名前を聞かせてもらえないか?」


「我はメロス。

彼女は桜だ。

よろしく頼む」


「よろしくお願いします」

桜も頭を下げる。


「我とあった時とは、だいぶ態度が違うな」


「あの時は、余裕が無かったから。

筋肉に圧倒されたんだよ」


「ははっ。

たしかにな。

体はエルフに見えないし」


ミリーが笑っていると、「んんっ」と声が聞こえる。

メイが目を覚ましたようだ。


「あれ、私?」


「起きたか、メイ。

彼が解毒剤をくれたんだ。

お前も礼を言った方がいい」


「あっ、そうなんですか。

本当にありがとうございます。

死んじゃうんじゃないかな、って痛みが、綺麗に消えました。

いやー、キラービーって本っ当に痛いですね」


ヘラっとメイが笑う。


「メイ、お礼が軽いぞ。

まったく。

ってそうだ、忘れていた。

とりあえず約束通り、有り金を全て差出そう。

命を救ってもらった恩が、この程度で返せるとは思わないが、とりあえず受け取ってほしい」


ミリーが懐から袋を取り出した。

その袋を開けると、金貨と銀貨、銅貨が入っている。


「えっ、有り金全部?」


「ああ、入り用だろう。

ほら、桜」


我は受け取った袋を、そのまま桜に受け渡す。


「えっ?

なんで私に?

それに、状況がいまいちわからないんだけど、これは私が受け取っていいの?」


桜は混乱している。


「ああ、好きにするといい。

我は我で、多少の金はある。

桜にやろう」


「ミリーさんも、いいんですか?」


「メロス殿のお金だ。

どうするかは彼の自由だよ。

それと、敬語は不要だ。

彼に接するように、私たちにも接してほしい」


「えっと、それじゃあ聞くけど、このお金を全部もらっちゃうと、ミリーさんは困らないの?」


ミリーは苦笑する。


「ああ、全ての財産を差し出したわけではないからな。

町の通行税は、メイに立て替えてもらうから、心配はないさ」


「うーん。追い剥ぎみたいな真似は、ね。

じゃあ、半分だけもらうよ」


「命の恩だ。

全額でも安いくらいなのだが」


「いいから、ね」


桜の目を見つめたミリーは、申し訳なさそうに半額を受け取った。


「ありがとう。

ああ……ところで、メロス殿の姿が時々霞むだが、幻惑魔法でも使っているのか?」


「えっ、魔法を使っている気配はないけど。

気のせいじゃない?」


メイが不思議そうに首を傾げた。

それを聞いて桜がクワッと目を見開いて、我を見る。

何か魔法を使っているようだ。


「ミリーさん、すごく目がいいね。

はぁ。いつも言ってるでしょ。

真面目な話をしている時にくらい、筋トレはやめなさい」


「己の筋肉を鍛え上げているだけだ。

それに、気がついていないんだから、問題なかろう」


ミリーとメイが不思議そうな顔をする。


「話が見えないのだが」


「ああ、ごめん。

そこの筋肉エルフは、スクワットしながら歩いてるんだよ。

速すぎて相当動体視力が良くないと、違和感すら感じられないけど」


ミリーとメイが一瞬固まる。

そして、笑う。


「面白いですね、桜さん。

そんなバカなことあるわけじゃないですか」


「なかなか面白い冗談だ」


冗談として、話を流した。

実際にスクワットをしているのだが、2人が気にしないならいいだろう。


「あっ、そうだ。

もしブォーンの街に向かってるなら、ご一緒しませんか?」


「そうだな、桜とメロスさえ良ければ、一緒にどうだ?」


ミリーとメイの申し出に、桜が困ったような顔をする。


「えっと、私たちって、ブォーンの街に向かってるの?」


「ああ、たぶんな」


「たぶん?」


「筋肉の多い方へ向かっていたんだ」


もちろん動物ではなく、人の筋肉の数が多い方へと向かっていた。

メイとミリーはじっと、我を見つめている。


「なあ、これはジョークなのか?」


「ごめん、間違いなく本気。

メロスってこういうエルフなの」


「そう、なんですか」


なんとも言えない沈黙が流れた。

不思議な時間だ。


「桜たちは、何をしに街に行くんだ?」


ミリーが話を変えた。


「ちょっと知りたいことがあって」


「異世界について詳しい学者を探している」


桜が元の世界に帰るために、その道の学者が必要だろう。


「異世界、ですか。

あっ、それなら、1人心当たりがありますよ」


メイが満面の笑みでいう。


「奴を紹介するのは無理だろう。

メイ、奴は依頼を受けた冒険者にしか会わない」


ミリーがたしなめた。


「あっ、そっか」


「その話詳しく聞かせてくれない?」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ