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エルフは筋トレ本を拾った。 →聖書として崇めた。→筋力が上がった。  作者: 青桐
1章 筋肉エルフと少女勇者、時々、学者
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女冒険者たちが現れた。

桜は1年間、魔法の訓練をした。

そして、かねてから考えていたことを口に出す。


「ねえ、メロス。

そろそろ帰る方法を探しに行きたいんだけど」


「「「「「「「ああ、わかった。

では、桜の準備が出来次第、行こうか」」」」」」」」


桜は少しうんざりした。

メロスは、残像を残しながら筋トレをしている。

その状態で話を聞いているのだ。

そのせいで、あちこちから声が聞こえる。

そのうえドップラー効果まで起きて、めちゃくちゃ沢山の返事が聞こえた。


「あのさ、人がマジな話してくる時くらい、筋トレやめてくれない?

いちいち、残像残して。

私の目には、100人くらいのあんたに囲まれてるように見えるから。暑苦しいのよ」


スクワットをしているメロス、腕立てふせをやっているメロス、腹筋をやっているメロス等々。

筋トレの見本市みたいになっている。

そんなのがあるか知らないが。


「やれやれ。

しょうがない」


全てのメロスが1つになった。

ただ単に高速移動をやめただけで、すごいことをしたみたいに聞こえる。


「筋肉へ捧げる運動は、緩急が大事だと聖書に書いてあるのに」


「はぁ。

まあいいや。

一応、準備は終わったから、今すぐにでもいけるけど、いい?」


「ああ、いつでも準備はできている。

我が持っていくのは、この筋肉さえあればよい」


「そう、ならよかった。

行きましょう」


そういえばと、桜は思う。

メロスの宝物、彼曰く聖書はこのままでいいのだろうか。

一応、希少なものだろう、たぶん。

盗まれたりは、まあ、謎の第六感で感知しそうだな。

いいや、聞かなくて。


「さて、どうする?」


「ん、何が?」


「いや、ランニングかジョギングか、移動手段の話だ」


「うん。

その二択はおかしいと思う。

どちらも却下。

私じゃ追い付けないから」




人の町に向かって2人が歩いていると、悲鳴が聞こえた。


「何?」


桜が驚くと同時に、メロスは走っていた。


———女冒険者視点———


「キャーーーーーーーーー」


メイが痛みで叫ぶ。

キラービーの毒は凄まじい痛みだと聞くが、メイがあそこまで叫ぶなんて。

くっ。

まさか、キラービーの大群に襲われるとは。

女王がいるということか。

メイを庇いながらでは、ジリ貧だ。

なにより、毒をどうにかしないと、メイは死んでしまう。

薬が必要だ。だが、キラービーの毒は特殊な解毒剤が必要だったはず。

もちろん、そんなものの持ち合わせはない。

しかも、あの叫びで他の魔物も寄ってくる。

妹同然のパートナーが死ぬ。

嫌な汗はいくらでも出てくるが、打開策は全く浮かばない。

焦っていると目の前に、キラービーが針を剥き出して迫っていた。

やばい。

ドン。

視界内のキラービーが、全て地面に叩きつけられている。

なんだ、何が起きた?


「大丈夫か」


後ろから声が聞こえた。

振り向くと、顔の整った筋肉が喋った。

違う、エルフだ。

エルフってこんな筋肉だっけ。

屈んでメイを抱き起こし、様子を見ている。

そうだ、謎の筋肉エルフはこの際どうでもいい。

メイは、メイは大丈夫なのか。


「キラービーに刺されたか」


筋肉エルフが呟く。


「解毒剤を持っていないか、エルフ? 殿」


イントネーションがおかしくなったのは、わざとじゃない。

そんなことより、メイだ。


「持っていない」


「そんな」


もうダメだ。

ここから街までは数時間はかかる。

また叫んでいるメイに、私ができることは、ない。


「だが、この毒に効く薬草の群生地が、エルフの集落の近くにある。

少し待て、取ってこよう」


「間に合わない」


エルフの集落がこの辺にあるとは聞いたことがない。

どう考えても、もう間に合わない。


「ほら、これだ」


青々とした、変わった形の葉っぱがエルフの手のひらにあった。


「持っていたのか⁉︎

それなら始めから、出してくれていれば……。

そうか、金か、金ならいくらでも払うから、それをください」


きっと、金を要求するために焦らしたんだろう。

少しイラつくが、メイが助かればいい。


「金、か。

まあ一応もらうか。

桜も入り用だろうし。

それはともかく、これは君にあげるために持ってきたのだ、遠慮なく受け取るといい」


「感謝する」


慌てて薬草を受け取る。


「それで、どうすればいいんだ」


「乾燥させて、粉末を刺された場所に塗ればいい」


「思いっきり、採れたてみたいじゃないか⁉︎

私に乾燥させる魔法は使えない。

これでは……」


膝の力が抜ける。

メイは、助からない。


「そうか、ならば任せろ」


「そうか、エルフは魔法が得意だったな‼︎

頼む、これに魔法をかけてくれ」


「すまないが、魔法は使えない」


何を、何を言ってるんだ。

このエルフは、元から、メイを助けるつもりなんてなかったんだろう。

なんて性格の悪いエルフだ。

希望をみせて、絶望に落とす。

これが、これが、エルフか。

私の手から、薬草を落ちた。


————-メロス視点—————


取ってきた薬草を女冒険者は、地面に落としてしまった。

薬草を拾って、何万回か振る。

よし乾燥した。

そして、粉砕して粉にする。

これでいい。

あとは、少し水を混ぜて、患部に塗るだけだ。

ちょっとエルフの森の、綺麗な水が湧いている所まで行った。そして、少しだけ水を混ぜて練る。よしできた。

そして、倒れて悲鳴をあげている少女の所に戻った。

刺された場所は、首筋だ。

なぜか、女冒険者は力が抜けているようだから、我が塗るか。


「えっ?

薬草が、塗り藥になった?」


「すまないが、少し触れるぞ」


粉末を塗り込んでやると、倒れて叫んでいた少女は、静かになった。

顔も安らかになっていく。


「はあ、やっと追いついた。

私も相当速くなったんだけどね。

まだまだ追い付けないや」


桜が追いついた。

メロスのやったこと。

・(物理的に)分身の術

・(物理的に)瞬間移動

・(物理的に)薬草召喚

・(物理的に)薬作成

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