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エルフは筋トレ本を拾った。 →聖書として崇めた。→筋力が上がった。  作者: 青桐
1章 筋肉エルフと少女勇者、時々、学者
17/25

迷宮学者は桜を騙した。

メロスが消えてすぐ、サマーはミリーとメイを見た。


「ミリー、メイ。

メロスと私の動きは見えた?」


「いえ、ただ増えたように見えました」


「……メイと同じだ」


メイとミリーが悔しそうに答えた。


「桜ちゃんは?」


サマーは桜を見た。


「見えましたよ。

メロスが本気だったら無理ですけど、歩いてただけなので」


「そ、そう。

あれで本気じゃなかったのね。

つくづく色々調べたいわ。

……本題に戻しましょう。

今のレベルを見えるのが、今回の依頼に必要な能力の、最低条件よ。

だから、あなたたちを連れて行くことはできないわ。

そして、桜や私、メロスの心配は不要ってこともわかったでしょう?」


ミリーとメイは渋々頷いた。

そのあと、メイがパッと目を見開いた。


「……もしかして、私たちにお金を渡すために、依頼破棄をしたんですか?」


ミリーもそれを聞いて剣呑な目を向ける。


「同情か?」


サマーは笑って首を振った。


「私はあなた達が孤児院出身者だからといって、特別な配慮はしないわ。

素晴らしい2人を連れてきてくれたお礼よ。

あなた達が受ける権利のあるものだから、受け取ってくれるかしら?

そうでないと、私がギルドに怒られるわ」


サマーは嘘は言っていない。

確かに相場よりは多いが、桜とメロスに会わせてくれたことを本気で感謝している。

だから、この金額は間違っていない。

確かに、少し、ミリーとメイには自分達のためにお金を使ってほしいとは思っているが。

ミリーは収入のほとんどを、自分たちの育った孤児院に寄付しているし、

メイは孤児院と魔法学院に半々で寄付している。

2人にこれだけの金額を渡しても、間違った使い方をすることはないと確信しているからこそ、少しだけ多めに渡した部分がないとは言い切れない。

まあ、それも含めて、正当な報酬だろう。


「ほら、もうギルドに行きなさい。

メロスを呼び戻さないといけないし」


「ミリー、メイ。

私は大丈夫だから、心配しないで」


桜が笑って言う。

それ見て、ミリーとメイは同時に溜息をついた。


「わかりました。

ご武運を祈ってます」


「ああ、必ず帰ってきて、土産話を聞かせてくれ」


ミリーとメイは出て行った。


「それで、メロスはどうやったら呼び戻せるのかしら?」


サマーが桜を困ったように見た。

あの細マッチョに変わったエルフは、どこに消えたのか。


「呼んだか?」


「……もうツッコむのはやめるわ」


サマーが遠くを見た。

それを桜がトントンと、背中を叩いて慰める。


「それがいいですよ。

ツッコむだけ損です」


「どうやら、話はついたようだな」


「ええ。

ごめんなさいね、2人を追い返すために一芝居打ったけど、突然だったから驚かせてしまったでしょう?」


「その割には、やや本気に見えたが」


桜も頷いた。


「まだ本気は出してないわ。

迷宮では、もう少し面白い魔法を見せるから、楽しみにしてて」


サマーが不敵な笑みを見せた。


「楽しみにしてます。

……それで、そろそろ依頼について教えてもらえませんか?」


桜が話を進めた。


「そうね。

この街にある迷宮って、どんなものか知ってるかしら?」


「いえ、全く知りません」


「我も知らないな」


「この街の迷宮は、地下に広がる遺跡のような場所なの。

最下層は地下30階、とされているわ」


「されている、ってどういう意味ですか?」


桜が不思議そうに首を傾げた。

ここにいるのがメロズでなければ、それだけで恋に落ちそうな仕草だ。

その仕草を見て、サマーは笑った。


「本当はもっと深いのよ。

私以外知らない、秘密の場所へ、あなた達を連れて行くわ。

ただし、私も地下への通路を発見しただけだから、中に何があるかは、わからない。

それでも、迷宮結晶がある可能性は、他の知られている迷宮よりは高いでしょう。

私たちのするべきことは、すごく簡単。

迷宮が出来るだけ深いことを祈りつつ、ひたすら地下への進む。それだけよ」


「では行こうか」


メロスがサマーを促し、全員で研究所を出た。


「肉体はスマートになったままなんだね」


桜がメロスに気になっていたことを聞いた。

今は、普通のエルフに見える。

体が筋肉で膨れ上がっていないからだ。


「まあ見ろ」


メロスがエルフの伝統衣装である、ゆったりとした服の袖を、少しまくった。

すると、バキバキに絞り上げた筋肉が現れた。


「腕って割れるの?」


「ああ、萎んだと思ったが、筋肉を圧縮しただけのようだ。

なんら不便はなさそうだから、このままでも悪くない」


メロスは答えになってないことを答えた。

そのような話を色々していると、3人は迷宮近くまで来ていた。


「ここが迷宮前の広場よ」


迷宮前の広場は、人で賑わっていた。

商売人たちが、簡単に食べられるものを露店で売っている。

それを買いに、冒険者や街の人たちが入り混じり、ごちゃごちゃとした様相を見せていた。


「すごい、お祭りみたい」


桜が呟いた。


「そうね。でも、いつ来てもこんな感じよ?

賑わっている迷宮を中心にできた街は、文字通り眠らない街になるわ。

朝から晩まで誰かしらが飲んでいるから、変なのに絡まれないように注意してね。

桜ちゃんは可愛いから」


サマーがふふっと微笑んだ。

すると、桜も笑った。


「サマーさんだって、すごい美人じゃないですか。

それに、胸も大きいし。

サマーさんの方が絡まれるんじゃないですか?」


「私に絡む馬鹿は、そんなにいないわ。

そういう祭り好きは、血祭りに上げてるもの。今じゃあ、余程の新参者以外、近づく男はいないわ」


そんなことを、言い合いながらギルドが開いている受付の前まで3人は来た。


「3人よ」


「はい、それではドッグタグを確認します」


ギルド職員がドッグタグを水晶に当てた。すると、不思議そうに首を傾げる。


「おや、メロスさんと桜さん、ですか?

お二人は、ランク4ですので、サマーさんの依頼を受けることは」「ただ単純に、一緒に迷宮を潜るだけよ。

それなら、問題ないでしょう?」「ええ、それなら問題はありません。お気をつけて」


ギルド職員の言葉に頷いて、迷宮の中に3人は入った。

入ってすぐ、桜がサマー見た。


「どういうことですか? 依頼はどうなったんですか?」


「単純に、ギルドに寄るのを忘れてただけよ。

ギルドに行かないと、ランクは上げられないの。

今からギルドに行くのも面倒だし、入れたのだから、問題はないでしょう?」


「本当に私たちのランクって上がってるんですか?」


桜が胡散臭そうにサマーを見た。

それを受けて、サマーが視線をそらす。


「サマーさん?」


いたずらっ子の笑みで、サマーが噴き出した。


「ふふっ。

冗談よ。ちゃんと上げたわ。これでも、ギルドにはそこそこ貢献しているのよ。新人のランクでも、10ランクくらいまでなら上げられるわ」


お読みいただきありがとうございます。

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