エルフは逃げ出した。
短いです。
「……メロスさんさえいれば、大丈夫そうですね、たしかに」
「ああ、メロス殿がどうにかなる想像がつかない。
どうする、メイ。
私たちも連れて行ってもらうか?」
サマーが我を見て『なにやってるの? 断りなさい』とアイコンタクトを送ってくる。
我にどうしろと?
そうだ、我が筋肉の逞しさを隠すか。
これは、桜の、ミリーとメイを巻き込みたくないという意思を守るためだ。
我が筋肉よ、静まれ。
「メ、メロスさんがしぼんでいく⁉︎」
「どうなってるんだ⁉︎」
「メロスどうしたの⁉︎」
「新しい病気⁉︎
それとも特殊能力⁉︎
それとも、なにかの副作用かしら?
大丈夫よ、メロス。
私が検査してあげる……‼︎」
1人を除いて、我を心配している。
ふむ、頼りなさをアピールできたようだ。
1人余計な者が、欲望のままに襲いかかってきたが。
後ろに容器のついた太い針を持って、サマーが我を狙っている。
それをいなしつつ、「すまないが、ミリーとメイを守るには、筋力が足りないようだ。
今の我では、桜とサマーを守るので精一杯だろう」とミリーとメイに話しかける。
「メロスさんとサマーさんがいっぱいいる」
「く、時々見失う。なんてスピードだ」
「あんたたち、なんなの?」
中々やるな、サマー。
筋肉は少々足りないが、素晴らしい魔法だ。
「痛くないから、ちょっとチクッてするだけだから、血液をよこしなさい?
大丈夫よ、注射器は安全だから」
我の背中側に、100本以上の注射器とやらが現れた。
壊していいのがわからないから、ひたすら避ける。
いかんな、逃げ場がなくなった。
「席を少し外す。
サマーの頭が冷えた頃に戻る」
ドアを塞ぐようにして浮いている注射器を、丁寧に捕まえ、聖書の隣に並べておく。
そして、聖書を回収して、神殿まで走った。
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