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エルフは筋トレ本を拾った。 →聖書として崇めた。→筋力が上がった。  作者: 青桐
1章 筋肉エルフと少女勇者、時々、学者
14/25

桜は驚いて動けない。

「そういえば、桜ちゃん。

あなたの国の人の寿命って、どのくらいかしら?」


温泉の中に寝そべり、頭だけを柔らかいクッションのような枕に乗せて、シュワシュワと出る泡を浴びながら、サマーが訊ねた。

桜も隣で同じ格好をしている。

違いは、温泉に浮かぶものがあるかないかだ。サマーの方は、胸が少し温泉から出ている。

桜はダメージを受けないように、サマーの方を見ないで答えた。


「80年くらいです。

でもそれがどうかしましたか?」


「いえ、ただ一つ伝えておこうと思っただけよ。

迷宮の影響を受けた生き物や物質の特徴は、寿命がないことよ。

老化や老朽化が起きないの。

もちろん、桜ちゃんも例外ではないはずよ」


「私、もう成長しないんですか⁉︎

この体型のままなんですか?」


桜が絶望的な顔をする。

そして、温泉に浮かぶサマーの脂肪の塊をみて、より絶望感を感じた。


「桜ちゃんの世界の女性って、その歳を過ぎても、胸が大きくなるの?」


サマーは純粋な学術的興味から、発言をした。

しかし、桜にはクリティカルな質問だった。

桜が、打ちひしがれた表情を浮かべて笑う。


「へへへ。

どうせ私は永久に幼児体型ですよ。

……そうだ、胸を大きくする魔法を作れば……。

いける‼︎」


サマーが面倒くさそうな顔をする。


「ごめんなさい。

話戻していいかしら?」


「あっ、すみません。

えっと、本当なんですか?

老化しないって」


「私が何才か、聞いてるかしら?」


サマーはいたずらっぽい顔で、桜に笑いかけた。


「聞いてないです」


「そう、なら何歳に見える?」


今度は桜が面倒くさそうな顔ををした。

うわっ出た。女性に聞かれると面倒な質問第2位。

歳をとっても、その質問だけはしないようにしようと、桜は改めて決意した。


「やっぱり答えなくていいわ。

なぜか不快な気持ちになったから。

はぁ、私はこの世界で研究を始めてから、200年くらい経つわ。

まあ、あなたの世界と時間の数え方が同じかは、わからないけど。

メロスの話と合わせると、同じでしょう、たぶん」


桜が余計な言葉を言わない内に、畳み掛けはようにサマーが言った。


「200年かけても、帰れないんですか?」


桜は驚愕した。

もし、200年かけても帰れないとしたら……。

そもそも1年は安全のために訓練に費やしたが、できる限り早く帰るつもりではあるのだ。

これ以上時間をかけたら、取り返しがつかないかもしれない。

現代日本で、1年行方不明ってだけでも、結構詰んでいるのに。


サマーは曖昧に笑った。


「さて、と。

私はある仮説を検証しようとしている、そう伝えたわよね。

その仮説が実証されれば、桜ちゃんにとっては最悪の事実になるとも。

あなたの質問に答えるなら、私の仮説を話すことになるわ。

……実は、私がこの世界に来て調べたことで、ある程度、仮説の証拠は揃っているの。

ただ、実験をしていないから、確証を持ってはいないだけ。

もしかしたら、無意味にあなたを落ち込ませるだけの結果になるかもしれないわ。

それでもよければ、今話しましょう。

どうする?」


サマーは半分寝っ転がっていた体を起こし、座った。

少し浮かんできた胸を押さえながら、桜を見つめる。

その視線を真正面から受け止め、桜は頷いた。


「聞かせてください」


「……私の考えが正しければ、桜ちゃん。

あなたが、あなたの世界を出ることになってから、101年経っているわ」


桜はキョトンとした。


()浦島太郎みないな感じじゃないんですか?

ここでは100年経ったけど、帰ると1日みたいな」


サマーが首を振る。


「おそらく、あなたの世界とこの世界は同じ時間が流れているはずよ、たぶんね」


桜は何を言っているのかわからなかった。


「そんな、だって、私が来てから、1年しか経ってないんですよ⁉︎」


「狭間の空間では、入った瞬間から出るまで、凄まじい速度で移動することになるみたいよ。

そしてその距離は、動く。

長い距離を移動するほど、早い速度で移動する羽目になるわ。

その分、沢山のエネルギーの影響を受けるようだけど。

残念なことに、速く動く物体の時間はゆっくり流れるわ」


「えっと、簡単に、わかりやすくお願いします」


「桜ちゃんはいわゆる、タイムトラベルをしたのよ。未来にね。

そして残念ながら、今のところ過去に帰る方法は見つかってないわ。

だからもし元の世界に帰れたとしても、あるのはおよそ100年経った後の世界よ。

いえ、戻る時の狭間の空間の距離によっては、より時間が流れるかもしれない。

まあ、ここまで話しといてなんだけど、あくまでこの話は仮説でしかないわ。

迷宮結晶が首尾よく手に入れば、この仮説をひっくり返す証拠が見つかるかもしれない。

だから、今はまだ、頭の片隅にいれておく程度でいいでしょ。まだ、決まってないことで悩むのは馬鹿らしいわ」


桜は聞いた自分が悪いとは思ったけど、仮説を聞いたことを後悔した。


お読みいただきありがとうございます。


より良い小説を書きたいと考えています。

その参考となりますので、

評価や感想をいただければ幸いです。


よろしくお願いします。

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