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エルフは筋トレ本を拾った。 →聖書として崇めた。→筋力が上がった。  作者: 青桐
1章 筋肉エルフと少女勇者、時々、学者
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迷宮学者はエルフの髪を攻撃した。しかし効果はないようだ。

「あっそういえば、あなたたちは、もう宿は取っているのかしら?」


いいことを思いついたと言うように笑い、サマーが聞いてきた。


「そういえば、忘れてました」


桜が罰が悪そうに答えた。

まあ、我も桜も、どうにか最悪野宿すればいいしな。完全に忘れていた。


「それなら、この研究所の仮眠室を貸しましょうか?

シャワーと浴槽もあるから、普通の宿よりも快適よ」


「本当ですか?」


桜が身を乗り出してサマーに詰め寄った。


「ええ」


「ぜひお願いします」


「どうぞ、好きなだけ使って」


「世話になる」


桜と一緒に頭を下げる。

我だけなら、神殿に戻っても良かったが、せっかくの好意だ。

喜んで受けよう。

それにしても、桜は浄化する魔法を使っていたはずだから、水浴びをする必要はないはずだが。

その時間があれば、筋肉を鍛えるために使う方がいい。

やはり桜は、不思議な少女だな。


「じゃあ、もう少し話す時間ができたわね。

メロスが拾った聖書について聞かせてくれるかしら?」


「すみません、サマーさん。

メロスは聖書だって言い張ってますけど、ただの筋トレ本なんですよ」「いや、あれは神が我に遣わした」「私も何度も読まされてるから、内容は頭に入ってるんだよ?

研究者に嘘ついたらだめでしょ」「む」


「ぜひ一度見てみたいわね」


「ではとってこよう」


「いくらなんでも、そんな無茶は言わないわよ。

もし上手く実験材料が手に入ったら、桜の現れた場所に行くから。

その時にお願いするわ」


せっかく、聖書に興味を示してくれたのだ。

鉄は熱いうちに打てと、ドワーフの商人が言っていた。

パッと取ってこよう。

少し急いで、神殿へと行って、聖書1巻を持ってきた。

そしてそのまま、テーブルの上に置く。


「これだ」


サマーが口を開けて見ている。

やはり、この神々しさは人を魅了するのだろう。

我にも目を向けてくるが、聖書の恩恵を確認しているだけであろう。


「まさかその見た目で、そのうえ、エルフなのに、空間魔法が使えるの?

魔法の気配はしなかったのに。

どういうこと?」


「何を不思議がっているんだ?

ただ、走って取りに行っただけだぞ」


「そんな訳ないわ。

仮にそれが本当だとしたら、風すら起きなかった理由が説明つかない。

一体なにかしら。

私の察知できない魔法?

迷宮の影響を受けてる?

どちらにしても、興味深いわ」


サマーから良からぬ気配を感じた。

狙いは、髪の毛か。

まあサマーの力では、傷つくことはないだろう。気にしなくてもいいか。


「あら?

えっ?

魔法が効かない……⁉︎」


「あの、サマーさん。

メロスには、私が全力で髪の毛の抜ける呪いをかけても、毛根が死滅する呪いをかけても、何しても効きませんでした。

色々すごく、丈夫なんです。

考えるだけ時間の無駄だと思いますよ」


「なおさら、体の一部が欲しいわ。

あっ、ごめんなさい。

聞き流して」


サマーが誤魔化すように笑った。

桜が少し、サマーから離れる。

どうやら、引いているようだ。

だが、その前に、前に桜から感じた嫌な気配は、気のせいではなかったのか。

まあ、どうせ効かなかったのだ。

わざわざ追求することもないな。

誰も何も言わない時間が流れた。

その沈黙を破り、サマーが口を開けて開く。


「ねぇ、2人とも、健康診断を受けない?

血と髪の毛、あと、頰の組織を採取させてくれれば、病気はもちろん、体質、なりやすい病気までわかるわよ」


「あっ、間に合ってます」


「病気は鍛えれば治るし、そもそもここ100年、病気になったことがない。だから不要だな」


「そう、残念ね。

……気が変わったら教えてね。

それなら、明日の話を少ししましょうか」


テーブルの上に、図鑑が現れた。


「これを見て。

明日から取りに行く予定のものは、この迷宮結晶よ」


図鑑を開き、載っている石の絵を指した。

絵と説明を見る限り、黒い宝石みたいだ。


「迷宮結晶?」


「迷宮の力が結晶化したものよ。

ものすごい力を持っていて、これを使えば、異世界とこの世界を繋げることができるわ。たぶん。

ただ一般には出回らないの。

国家や教会が、どんな手段を取ってでも手に入れようとするから。

つまり、自力で手に入れる以外の方法はないわ。

命をかける覚悟はあるかしら?」


脅すようにサマーが問いかけてきた。

桜が不思議そうな顔をした。


「あの、ミリーやメイを、依頼に巻き込む必要はあるんですか?

聞いていると、かなり危険なことになりそうですけど」


「ああ、ちょっと厄介な人たちがいるのよ。

ミリーたちを巻き込めば、その人たちは、表立っては出てこないわ。だから少し面倒なことが減るはずよ」


「……面倒な奴らって、何者なんですか?」


「自称と他称は、『勇者任命官』よ」


「自称と他称?」


「ええ。彼らは正式名称を隠しているの。

正式名称は、『迷宮関連危険物処理官』。

迷宮に関わるあらゆる危険物に、対応する人たちよ。

そして残念ながら、私は彼らに監視されているわ。

私に会いにきた人達は監視対象になるのよ。迷惑なことにね」


サマーが息を吐いた。


「それだけなら、ミリーとメイを巻き込みたくないんですけど、ダメですか?」


「貴方達がいいなら、いいわ。

実際、私だけでも探せなくはないから」


そこまで言ったあと、サマーは少し人の悪そうな笑顔をつくる。


「まあ、依頼者がから一方的に依頼を取り消すと、違約金が発生するんだけどね」

お読みいただきありがとうございます。

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