美女迷宮学者は興奮している。
「まずは初めまして。
私はサマー。
ミリーとメイは久しぶりね。最後に会ったのは、2ヶ月前かしら。
再開を喜びたいところだけど、2人は少し外してくれる?」
美女の目が妖しく輝いた。
「えっと、お邪魔なら、少し外します」
「いや少しでは終わらないだろう。我々は明日来るので、ごゆっくり」
メイとミリーがサマーを見て苦笑いしてながら答えた。
「ごめんなさいね。
この埋め合わせは必ずするわ。
あっ、忘れる前に、紹介状を出してもらえる?
あなたたちを雇うことは決めたから」
「どうぞ」
ミリーが紹介状を渡すと、サマーはペンでサインした。
すると、紹介状が僅かに光り、ペラリペラリと紙が剥がれて、3枚になる。
サマーがそのうちの二枚をミリーに渡した。
「この一枚はギルドに依頼を受注した控えとして提出する。
あとは依頼者と依頼を受けた冒険者がそれぞれ保管するんだ。
これで、トラブルを防いでいる」
ミリーが我と桜に説明してくれた。
「それじゃあ、何というか、頑張れ」
「大変かもしれないですけど、サマーさんに悪気はないですし、いい人ですから、頑張ってください」
含むところがありそうな言葉を残して、2人は部屋を出ていった。
「それじゃあ、話を聞かせてもらいたいところだけど、もう少しだけ自己紹介をさせてもらうわ。
私の専門は迷宮と異世界よ。
貴方達の力になれそうかしら?」
「どういう、意味ですか?」
桜が若干警戒するように聞き返した。
「貴方達2人とも、異世界から来たのでしょう?」
天使のような美しい笑顔でサマーは笑った。
「我はこの世界のエルフだぞ?」
「嘘っ⁉︎」
サマーが立ち上がって身を乗り出し、我を見つめる。
やはり、エルフよりも、顔が整っているな。
しかも、同じ黒髪なせいか、どことなく桜に似ている。
「おかしいわ。
この世界のエルフと特徴が合わない」
「そこのエルフは、無視して構わないと思いますよ。
とりあえず、私はそうです。
名前は、海堂桜といいます。
ぜひ、お話を聞かせてください」
桜が我に失礼なことを言いながら、サマーに頭を下げた。
サマーが我をガン見しながら、少し身を引いた。
「貴方にすっごい興味があるのに、そこのエルフの方が気になるわ。
ぜひ、解剖、じゃなくて解析したい……‼︎」
最後の方は聞かせるつもりがないのか、だいぶ小さな声で呟いていた。
こいつ、危険な奴だな。
「あの?」
「あっ、ごめんなさい。
まずは座って」
サマーがそういうと、何もなかった場所に3人掛けのソファが現れた。
ちょうど、サマーが座っている椅子と向き合う形だ。
「飲み物は、紅茶、緑茶、コーヒー、あとは水があるけど、どれがいいかしら?」
「では水をもらおう」
「えっと、私は紅茶をお願いできますか?」
我たちとサマーの間に、小さなテーブルが現れ、我の前には水が入ったコップも現れた。
「紅茶は2分ほどかかるけど、いいかしら?」
「もちろんです」
サマーはちょっとだけ残念そうな顔をした。
「どうした?」
「いえ、大抵の人はこうやって、テーブルや飲み物を用意すると驚いてくれるのだけど、
あなたたちは反応が悪いわね。
まあ、いいわ。
本題に入りましょう。
まずは桜ちゃん、あなたの話を聞かせて」
桜が少し困ったような顔で口を開いた。
「話しといっても、どこから話すべきなのか……」
「少しでも、この世界への転移に関係のありそうな話なら、全部話してくれるかしら?」
「それなら、まず、私の世界で起きた話をします。
私の弟の本が7日ごとに消えるってことが、1年続いたらしいんです。それで、私が疑われて、暇な時に、弟の部屋を家捜ししたんですよ」
「えっと、桜ちゃんの弟って、1年間もそんなことが起きたのに、対応しなかったの?」
「私が借りていってるって、本気で信じてたみたいなんです。
それで、私が暇だったから、真相をつきとめようとしたら、気がついたらここにいました」
ん?
ちょっと待て、我が聖書を拾ってから100年ほど経過している。
桜の話が本当なら、あの聖書は、桜の弟君のものではないな。
「それで?」
「どうやら、メロスが訓練しているところに弟の本が流れついていたみたいで、私も同じように流れ着きました」
「メロスが拾った本って、どんな本なのかしら?」
「いや、我はてっきり桜の弟君の聖書だと思っていたが、違ったようだ」
「どういうこと?」
「いや、あまり不思議には思わなかったもので勘違いしていたが、桜の話と、我が聖書の受け取り日には、大きな100年の開きがある。
だから、あの聖書は弟君のものではないな」
「ちょ、ちょっと待って。
どういうこと?」
「言った通りだ。
我が聖書を拾ったのは、今から102年前。
桜の弟君が聖書を失くしたのは、2年前からなのであろう?
ならば、同じ聖書でないはずだ」
「そんな訳ないよ。だって発行年数は同じだったから」「ごめんなさい、ちょっといいかしら?」「あっ、すみません。2人だけで話してしまって」
「いいのよ。
すごく興味深い話だったから。
でもとりあえず、ひとつ話をさせて。
実は私、異世界転移について、ある仮説を立てているのよ。今はその裏付けを主にやっているわ。
2人の話は、仮説の裏付けになりそうなの。
桜ちゃんにとっては、とても悪いことにね」
「それは、どういう意味ですか?」
「まだ仮説だから、実験と検証が終わったら話すわ。
その結果次第で、元の世界に帰ることも可能かもしれないけど」「本当ですか⁉︎」「ただ、その検証のために、一つ必要ないものがあるの。
今回の依頼を少し変更して、一緒に取りに行かない?」
その言葉と同時に、桜の前に紅茶の入ったカップが現れた。
「……あっ、ごめんなさい。
紅茶を入れていたのを忘れていたわ。
冷めちゃったわね」
「いえ、気にしないでください。
猫舌なので、ちょうどいいくらいですよ」
桜が気を使う。
それを聞いて、サマーは少し冷静になったようで、長い息を吐いた。
「……そうよね、ミリーとメイにも話を通さないといけなかったわね。
詳しいことは明日、話しましょう」
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