ソーシャルの世界でも色々あるんだよねー
このビルの超高速エレベーターは最新型のリニアエレベーター。屋上から1階まで45秒という速さ。ただそれは、途中で止まらなかった場合だけ。止まれば約一分間扉が開いたままになる。これは、イライザが止まった階の情報を更新している時間らしい。俺の横に張り付く働き美蟻人が黒いボンテージ姿でエレベーターの87の数字を押す。エレベーターの奥で田中が海軍のような帽子を脱ぎ偉そうに髪型を整える。俺は、ここでは提督な訳で。なのに、この決められた刑務所のような施設から出るという自由の権利は完全に奪われている。
連れ戻される場所は、隔離エリア「ライザ」
最上階から下10階までの範囲。科学者専用の研究施設がある87階に入り口はあり、その入り口は日銀の大きな金庫よりも分厚い。その入り口を入ると大きな爆音を立てロックがかかる。それは、まるで、廃車の車をプレスするような音でだれだって一瞬ひるむ。さらに奥に分厚い自動扉の城壁があり、ソコに大きく白いペンキで「ライザ」と書かれている。今、将軍である田中がオレの横をついてくるのは、この扉を確実にロックするため。
「ニビル提督、お前は、なかなかの切れ者じゃないか、アレだけのウイルスを開発したんだ自信を持つといい」
「いや、自信なんてない。もともと、親父が地球の環境を整えるためにしていた研究をここ、【ライザ】で父子相伝しただけで、俺の自作の研究はすでに失敗してる」
「お前、失敗って、なぜっそのっ大事な国家機密を知ってる!」
「そりゃ、わかるさぁ。一応提督だからねぇ。俺は、お前にだけ言っておくよ将軍。必ずここを脱出してみせる」
「お前はわからずやだなぁ、この新しいソーシャルにどっぷりつかれば、お前の身分はどんどん上がるんだぜぇ」
まるで田中は宝の山でも見つけたかのように両手の平を上に向け、わしょいわっしょい踊ってるみたい。昔、親友だったことがはずかしいし、あの時の思い出は泡のように弾けて消えたんだ。だから、無理やり誠意一杯の敬語を使って答えてやる。
「保証の無いことを軽々しく口に出すなよ、田中将軍っ」
「お前はオレより身分が低いのに偉そうだ。だから、科学者なんて生き物は嫌いなんだ。ここを立ち去りたかったらそうしたらいい。まず、無理だろうけど」
そういうと、扉の窓越しに田中はロックをかけた。
「エリアをロックします」
俺はもう、完全に研究と称して閉じ込められている。将軍は俺より少し背が高くて、茶髪でイケメン美男子。右手にいつも黒い鞭を持ち、働き美蟻女を鞭打ち、自分の思い通り事を進める。オレにとってあいつは天敵。でも、あいつにとってオレも天敵じゃなかったらダメだと思う。俺はいつものように研究の続きをやる振りをした。
そして、脱出ゲーム開始の準備をする。タイムリミットは48時間。俺の腹ん中は、やるしかねぇっに決まってる。
そう。。。。。