第七話:調査
今回は短め
「幽霊を見なかったかって?」
「はい、昼過ぎにあそこの薬品店の前でヤマト風の男がふらふら歩いていたかと思ったらいきなり霞んで消えたんです」
駅近い大通りの人混みの中僕とルナシアちゃんは聞き込み調査を始めていた。
「うーん……知らないねえわたしゃ朝からここに座っているけど、ずっと通りを見てるわけじゃないしね」
「そうですか……ありがとうございます」
「それよか兄さんポーション買ってかないかい」
おばさんがカウンターの中の色とりどりの液体が入った小瓶を指差す。他にもマジックアイテムやフォーチュンアイテムが種類多く並んでいる
「すいません今はお金がないので、また今度買いにきますね。ありがとうございました」ジリ貧の僕は冒険者には魅力的な場所をささっと去りルナシアちゃんと合流する。
「どうだった?」
「うーん誰も見てないらしいですね……」
「あたしの方も全然情報ないな……あ、でもイルカ君見た人ならいたよ。“キョロキョロして挙動不審の青もじゃの田舎者がいた”って」笑顔で人の心に刺さる事を言うなあ
「僕そんなに田舎者っぽいですかね?」そう落ち込んで見せると
「服装のせいじゃない?あまり魔術師っぽくない見た目だもんね」
と返される。
まあそうだろうな、学校を卒業してからずっとオーバーオールとツナギの二着の回し着だし、それに実際田舎者だし。
「お金が貯まったら新しい服買ったら?あたしいいお店いっぱい知ってるよ〜」
「ルナシアさんおしゃれに詳しそうですもんね」僕は出かける際にわざわざパステルピンクのワンピースに着替えさらにはライラックグレイの刺繍入りケープをつけさらに白のヘッドドレスまでつけたルナシアちゃん完璧装備を見て言う。
「ふふふ、イルカ君も服についてアドバイスが欲しかったらこのおしゃれマスタールナシア様に聞いてね〜」そうおどけて言った後ルナシアちゃんはすっと真面目な表情になる。
「まあ実際イルカ君は一旦帰って着替えるべきだと思うよ」
「え?」
「あの霊、イルカ君だけに見えたのなら魔術師にしか見えない死霊の類だと思うよ、この都市のアンデッドや死霊は基本決められた地区でしか活動できないし昼間に出てくるなんて滅多にないから、この街に流れの ネクロマンサー(死霊術師)がいるか コンジャラー(呪術師)によって呪殺された人の霊魂だったのかもよ。イルカ君はもうすでに汚れを受けているかも知れないから早く帰って身を清めてアミュレットアイテムつけた方がいいよ」
なるほど、さすがは先輩分析が早い。もし本当に呪殺された人の霊魂だとしたら今回の任務は呪術師に関係するものかもしれない、だとしたらアミュレットアイテムは持っておいた方がいいかな、自慢じゃないが対呪性は強い方なのでそんなに汚れは受けやすくはないが油断は禁物だ。
というわけで報告も兼ねて僕らは店の二階に戻った。
「死霊系かよー、今回は助っ人必要そうだな」アリスターさんが頭を抱える。
ルナシアちゃんが浄身の準備をしにいってる間、僕はアリスターさんに調査報告をする。ちなみにティロイさんは占い中らしい
「まあナーシャを行かせて正解だったな。俺はサイボーグだから死霊が見えないし獣人は死霊は驚かしちまう。それにナーシャはアブジャラー(対魔)技能持ちだからな。」
なるほど、何故わざわざルナシアちゃんと僕を調査に行かせたのかと思えばこういう考慮あっての事なのか。エルフのルナシアちゃんは対呪性も高いだろうし。
「俺はこれから探偵事務所に行ってヤマトから来た剣士が不審死した的な情報あるか聞いてくるわ。お前らは最初にその人物を見かけたっていう桂花楼に話を聞いてこい、あそこの客だったかもしれないしな。出来れば翼駿にも相談してみろ、あいつも邪神には詳しい」
「任務内容とか言っていいんですか?」
「んな訳ねえだろ、アホか」じろりと睨まれてしまう
「ぼかして言え、そこは。正式な協力依頼だと金取られるだろ」
あ、そっちの問題?
「イージュンさんって舵取り屋なんですか?」
「いや、でも俺たちとは古い知り合いだし舵取り屋の仕事もたまに協力している。ただでは手伝ってはくれないけどな」
つまり僕は口八丁に任務の事は伏せて情報だけ引き出せるよう言われてる訳なのか
「うーん話術必要そうな仕事は苦手なんですけど……」「だろうな」そしてアリスターさんは鈍臭い生徒を見る教師のような生ぬるい目をする。
「ナーシャに任せればいい、お前は足引っ張らないように黙ってろ。今回は初任務だからな俺たちについて勉強していればいい」
「了解です」
まだまだ勉強すべき場所はたくさんありそうだ。
そのあと僕はルナシアちゃんに浄身してもらいアミュレットエンチャントされたブレスレットを見につけた。年のため魔法の照準の上がる手袋もする。死霊が近づくと光る魔石、呪術を跳ね返す鏡、何かあった時の(イージュンさんからうまく情報を引き出せなかった時の)贈り物と書いて賄賂と読む酒。さらに出かける前に「何かあったら地面に叩きつけるように」と銀色の胡桃のような物をもらう。
こうして準備万端に桂花楼に向かった僕たちは拍子抜けする羽目になる。
カウンターに座っていた雲鎖ちゃんに声をかける暇もなくそばにある食堂に黒髪の男が二人お茶を飲んでいた。一人はこの桂花楼のオウナーであり僕のバイト先の雇い主の翼駿さんもう一人は――
「ねえ……もしかしてあの人?」
ヤマト風の装い、腰に届く程の長髪の小柄な男。魔石を向けると昼間から恥ずかしいほどギラギラ光る
「え?まじか」
目的の人物はあっさり見つかった。
暇あるうちに一章は書き終わりたい