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【17万PV】戦略級美少女魔導士の育て方  作者: 小鳥遊七海
第1章 無人島サバイバル
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106.狩猟

 カルラの取った魚は全部食べることのできる魚だった。すごい遅効性の毒でない限り大丈夫だろう……もう食べちゃったし。大丈夫と信じたい。


 お腹もいっぱいになったところで、今日と明日の食糧探しに行くことにした。できれば、干し肉なども作っておきたい。


 それに日時計と火時計を作る必要がある。元々この世界には正確な時間を測る仕組みは一部の建物にしかない。数学自体は発達しているので、時間の概念はあるが、それを必要としている人が少ないのだ。


 天文学はあまり発達していないが、測量技術は発達していて数学もかなりのレベルに達している。少なくとも僕の知識では測量と数学は理解出来ないことがたくさんあった。時間があったので理解したけど。


 時間は星を利用した測量技術に必要だ。自分が地図上のどの位置にいるのかを知るためには、定期的な運航をしている星を利用するのが確実だった。


「カルラにお願いしたいことがあるんだけど……」


 小石をバシバシ戦わせるように空中でぶつけて訓練して(あそんで)いるカルラに、声をかける。


「なんですか?」


 カルラは小石を整列させて自分の腰に巻くようにしてしまった。


「これから獣を狩りに行こうと思うんだ。それで、小石で気絶させることが出来るようなウサギかなんかを西の森で見たんだけど」


「任せてください!」


 ドラゴンの恐怖に震えていたので、西の森へ行きたがらないのではないかと思ったが、全然心配なかったようだ。


「一緒に行こうか。カルラの魔法で対処できない魔物が出るかもしれないし」


「わかりました」


 こうして、僕たちは改めて西の森へ足を踏み入れた。



◆ ◆ ◆



 西の森に入る前にトロポでふたりの気配を隠してもらう。カルラの小石は森の木の上に浮かせておくらしい。


 魚を取るときに気がついたそうだが、直上は死角になるので避けられにくいと言っていた。


「トロポとグラビィタを使っている状態で、さらにトロポで小動物の気配を探ることができる?」


 鳴き声が聞こえるのは鳥しかいないが、ウサギのような小動物がいるはずだ。


「動かす小石を少なくすればいけそうです。探索(トロポ)で気配が分かって、小石をぶつける段階になったら、私たちの気配を隠している結界(トロポ)は解除していいですよね?」


 なるほど、カルラは頭いいな。


「そうだね。それなら仕留める確率も上がりそうだ。カルラは応用力あるよなあ」


「えへへ」


 誉められたのがうれしいのか、カルラは軽く頬をかいた。


「じゃあ、やってみますね」


 目を閉じて集中しはじめる。


「居ました」


 ほどなくして、カルラは獲物を見つけたようだ。


「なんだろう?」


 カルラは首をひねっている。


「どうしたの?」


「臭いから獣に間違いなさそうなんですが、あまり動いていないというか、寝ているのかな?」


 臭いまでわかっちゃうのか……。これはますますヤバい魔法だな。この島を出るときにトロポを使えることを内緒にするように言わないと。


「寝ているのなら少し近くによって見てみようか」


 カルラは声を出さずに頷くと、謎の獣がいる方向を指差した。


 トロポを使っていれば声も聞こえにくいんじゃないかな?と思ったけど、僕も黙ってついていく。


 生い茂る笹を掻き分けて行くと、ちょっと開けた場所に()がいた。


 開けた場所には、中が空洞になるほど大きな木が倒れたあとに、木の葉がこれでもかと積もったところに、なんというか、猪なんだろうが、かなり丸っこくてボールに蹄が這えたような変な生き物だった。


 ひとめ見て仲良くなれそうな動物だった。


「これはおいしそうですね……」


 カルラは上空の小石を奴の直上に集め始める。腰に巻いていた小石も奴の周囲に展開しはじめた。完全にやる気だ。


 僕は迷っていた。僕の異世界転生小説を読んだ経験から言えば、奴は完全にペット枠だ。この世界に転生してから見たことのないような愛嬌を持っている。


 大きさも直径30センチと膝に乗せて撫でるのにいい感じだった。


「ちょっと待って」


 カルラを止める。カルラは油断なく小石を待機させながら僕の次の言葉を待っている。


「あれは生け捕りにして飼おう」


 なんてことを言うのか!という驚きの表情で僕を見るカルラ。まだ漂着して二日目ではあるが肉が食べたそうな感じだったし、なんとかしてカルラを説得する理由を見つけねばすぐに食べられてしまいそうだ。


「今日はまだ時間があるし、飼っておけば非常食にもなるからね。別の獲物を狙おう」


 非常食。サバイバルにおいて、その重要性は高いのだが、カルラに理解してもらえるだろうか。


「わ、わかりました。あれは非常食にしましょう」


 なんとかすぐに食われるのはさけられたようだ。


「でもどうやって捕まえておくんですか?」


 尤もな疑問だ。


 そこで僕は檻を作るための枝を調達してもらおうと考えた。


「木を取り囲むように小石を配置して高速で回転させながら上昇させれないかな?」


 左腕を木に見立てて右手を回転させながら上に動かす。前世で見た枝を落とすチェーンソーを装備したロボットをイメージしている。


「枝を切り落として、あいつを入れておく檻を作りたい」


 カルラはそれを聞いて理解したようだ。


「でも、枝を切る音で起きちゃわないですか?」


 あの幸せそうな寝顔を見ると起きることはなさそうだったので、僕は近くにある蔦を引きちぎると、それを持って奴のところに近寄る。


 近くで見ると、すごい可愛かった。やはり猪のようで牙のようなものも見える。


 そっと蔦で奴を縛る。お腹を中心にバッテンになるように縛ると、スイカを吊り下げるネットのような感じになった。


 もうこのまま木に吊り下げておけば逃げることはなさそうである。


「そこの木に吊り下げておくよ」


 風に揺られて気持ち良さそうに揺れる。起きる気配は全くない。


「これで安心して檻用の枝を切り出せますね」


「じゃあ、僕は蔦を取ってるね」


 枝と蔦があれば、簡単な檻ぐらいは自作できるだろう。ただ時間が読めないので実際に作るのは食糧の確保ができてからになるだろうが。


 カルラは小石を木を取り囲むように並べた。そして、高速で回転させ始める。小石が空気を切り裂く音が響きわたる。予想以上に大きい音だ。


 高速回転する小石がゆっくり木に沿って上がっていく。


 枝に当たると弾けた木くずがまわりに飛び散り始めた。


 割りと危ない。カルラもそれに気がついたのか、僕に下がるように指示をする。


 ふたりとも下がると、小石は一気にあがり途中の木の枝を落としていった。上の方の枝を少し残してカルラの小石は戻ってくる。


「うまく出来たね。カルラはちょっとした獣と一対一なら勝てそうだね」


「はい! もう足手まといにならなそうで安心しました」


「このレベルだと僕の方があしでまといだね……」


「あ、そういう意味で言ったんじゃないです!」


 カルラが頭を下げて、謝ってきた。


「もちろんわかってるよ。それだけカルラの成長がはやいってことだよ」


 実際、昨日までは見通しが暗かったが、奴を目の前にしてもペットにするという選択が出来、心に余裕が生まれている。


 僕は蔦を集めてカルラが落とした枝を束ねていく。カルラは別の木絡もう枝を取ると、僕の近くに置いてくれた。


「では、近くに別の獲物がいないか見てみますね」


 カルラはふたたび目を閉じて探索(トロポ)を唱え始める。僕は邪魔をしないように静かにしていた。


「居ました」


 言うが早いか、小石が放たれる。僕の背後で葉を撃ち抜く音と肉に当たる鈍い音が続いた。


 後ろに振り返るとそこにはウサギが泡を吹いて倒れているところだった。


「お見事」


 奴を食えなかった恨みがあるのか、今回は速攻でした。


「やった! お肉ですよ!」


 もう食いしん坊キャラになりつつある。カルラは着ているものからも分かる通り、いい暮らしをしていただろうに食べ物のことになると必死になってる気がする。


「じゃあ、砂浜へ戻って捌こうか」


「すぐに戻りましょう!」


 ご飯は食べたばかりなのにカルラはもうウサギを食べようとしている。


「この枝の束は私が魔法で運びますね」


 枝の束はまだ水分を含んでいるのでかなり重いので、すごく助かる。


「じゃ、僕はこの丸い奴とウサギを持っていくよ」

 未だに寝ているウリボウもどきとぐったりしているウサギを持つと、砂浜に戻った。


 意外と時間が経過していたのか、もうお昼に近かった。


「お肉ーおにくー」


 楽しそうに歌っているカルラに苦笑しながら、僕は枝と蔦で簡易の檻を作ると、その中に奴を入れておいた。


 そして、ナイフでウサギを捌き始める。


 内臓はもったいないが今は食べる手段がないので、葉っぱの上に置いておく。あとで離れたところへ埋めるつもりだ。臭いが流れるように海の近くで捌いているが、血の臭いで肉食獣がよってこないようにするためだ。


 いずれは何か別のものを取るための餌か罠にしようと思う。


「お昼はお肉ですよね?」


 カルラは待ちきれないと言うように枝をいじっていた。


「うん。干し肉も作りたかったけど、ウサギだと量が少ないからね」


 と言ったところで、カルラの視線が非常食にうつる。


「それは非常食だからね?」


 僕が釘を指すと小さく「ちぇ」と舌打ちする声が聞こえた。

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