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【17万PV】戦略級美少女魔導士の育て方  作者: 小鳥遊七海
第1章 無人島サバイバル
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158.敗退

 無人島からここまでの距離とビルネンベルク軍の進軍経路から考えると、無人島は海のど真ん中にあるようた。


 イメージとしては隕石が落ちてできたような海の海岸に沿ってビルネンベルク王国があり、その内側の海を支配している。ただ海は広大であり、南にあるザッカーバーグ領から北にある王都まで飛空船で二週間以上かかる。無人島は丁度真ん中あたりなので、飛空船は一週間飛んで落ちたことになる。


 もちろん海には無数の島があり、島国だった日本と比べたら凄い数の島がある。ビルネンベルク王国の力の源は豊かな海洋資源であるのは間違いないだろう。


 東の端には行ったことがないため、どんな状態かわからない。ビルネンベルク王国もそこまでは手が出ないようだ。


 フリーデン宗教国は、ブラウヴルト大山を中心として、西に大きく延びている。内陸部国ではあるが、岩塩が算出することが大昔は海の底にあったことがわかる。


 また岩塩が算出することで、塩を一手に握っているビルネンベルク王国に頼ることがない。完全な独立を果たしている。


 そして、僕たちにとって何より都合の良いことは、フリーデン王国はビルネンベルクを南北に分断できる位置にあると言うことだ。


 仮にバルドに何かあり、宰相派がビルネンベルク王国の実権を握ってしまうことになったとしたら、僕たちはフリーデン宗教国と手を組み、ビルネンベルク王国を南北に分断した上で、カルラを南ビルネンベルク王国を統べる王位正統後継者として祭り上げることができる。


「という感じでこれからの方針を考えてみたんだけど、どうかな?」


 ドーラたちが情報を集めてくれている間、僕とカルラ、それにシャルとユキノを加えて話をしている。


 僕ひとりで考えたことはみんなに知ってもらって初めて形になる。ただし意見が欲しいわけではなく、実行可能かどうか知りたいだけなのだ。


 何せ僕は非力だ。みんなの力を借りないと何もできない。


「ヴォルフはアテにそれを聞いてどうしようと言うんです? アテは頭が良くないから、それを聞いてもやるだけですよ」


 ユキノがおどけていう。不可能だと思ってはいないようだ。流石に戦闘妖精のやんごとなき身分のお方だな。頭が悪いというのは冗談だと思うが、正確なところはわからない。


「わたくしもユキノと同じ意見です。やることをやるだけです。それに今や実行力についてはなんの心配もないでしょう。ドラゴンだけではなく、主祭神と妖精王の娘ですよ」


「実はそこが問題で、大きな力を使ってことをなすと、逆に自分たちの弱点をさらすことにもなるんだ」


「弱点?」


「そう。例えば、ドーラにドラゴンとしての力を振るってもらって緒戦に勝利したとしても、ドーラを暗殺されてしまえば、そこで終わる。タルについても同じだ。この前みたいに寄り代を狙われればタルの味方だった神様たちも敵になってしまう」


 大きな力は使わないから意味がある。大きすぎて正確な力を見積もれないから、暗殺をしようなんて考えない。暗殺者もただではないし、有限だ。


 優秀な暗殺者でも、敵地に侵入してまた戻ってくるのは至難の技だ。大抵は目的を達成するので精一杯で敵地で命を落とすことになる。本当にトレードオフする価値があるかを見極める必要がある。


 だが、僕の婚約者たちはそれをする価値があるので、なるべく隠しておきたい。大きい力があると思わせるだけで十分だ。


「ではどうするのですか?」


「もし宰相派がビルネンベルクを牛耳ることになったら、フリーデンを味方につける。そこからはビルネンベルク王国の南側とお話しするだけだよ」


 絶大な威力を背景としたお話だけど。


「カルラはどうなんだ?」


 ユキノが聞くとカルラはゆっくり目を開いた。


「私は宰相派が牛耳ったら王都にメテオーアを打って、誰につくべきか教えるだけですね」


 だからなんでそんなに好戦的なの!


「それにはアテも賛成します。抵抗するようなやからは吹っ飛ばした方がはやいでしょう」


 早くないし。


 大体、自分の国をぶっとぱすお姫様がどこにいるんですか!


 ここにいたか……。


「ビルネンベルク王国は、よくも悪くも力に従う国なのでしょう? カルラの言うことは最もだとわたくしも思います」


 シャルの言い分を聞くと、なんか僕が間違っているかのような気がしてくる。


「ちょっと待って。僕たちが戦うのはあくまでも僕たちに敵対する人たちだけだよ。それ以外の人を巻き込むときは恨みを買わないように注意しないと。メテオーアをぶちこまれた人たちをそのあと支配下に置かなきゃならないんだからね。そうなったらいつ寝首をかかれるかわからなくなるよ」


 僕の話にみんなのハッとなった。


 なぜ今気がついた? 仮にも姫なんじゃないの?


「とにかく、僕たちはみんなから必要とされる存在にならないといけない。戦いだけでは、戦争がなくなったときに要らないどころか、邪魔な存在として排除されちゃうよ」


 異世界転生小説にありがちなのは魔王を倒した後に、強大な勇者の力を恐れて毒殺しようとしたり、封印したりしようとする王様や民衆が出てくることだ。


 僕にはその王様や民衆の気持ちはわかる。力がないものは力があるものを信じない。力のある人は力で支配できていると勘違いするが、実はそんなことはできない。


「はい。わかりました」


 カルラは素直に返事をした。


「でも、最初は武力制圧が必要だから、|みんな

《・・・》で思いっきり暴れてもらうことになるけどね」


 カルラたちが凄い嬉しそうな顔をした。暴れたいのか……。


 最初にみんなで暴れるのはふたつの意味がある。ひとつは個々の能力を見積もりにくくするため。もうひとつは力の強大さを噂で広めてもらうためだ。


「はやくドーラたち帰ってこないかなあ」


 これは明日にでも作戦を始めそうな雰囲気だ。


「帰ったぞ」


 ドーラが帰ってくる。


「ドーラ! 待っていました」


「な、なんだ?」


 カルラに抱きつかれて困るドーラは、僕に何があったか視線で確認する。僕はわからないと答えておいた。


「では、我の見てきたことを話そう」


 ドーラが見てきたのはビルネンベルク王国方面だそうだ。軍隊というのは個人の旅とは違い、身軽には動けない。どうしても時間がかかる。


 ビルネンベルク王国軍はまだフリーデン宗教国の東を退却していたそうだ。その姿はまるで敗退したあとの軍隊のように疲れきっていたように見えた。


「あれは相当な消耗をしているぞ」


 バルドが気になったが、将軍らしきものは見えなかったようだ。


 僕が見たブラウヴルト軍の様子から見ると、ブラウヴルトとビルネンベルクは同じものと戦ったと思われた。


 すると第三国がでばってきたか……。


「妖精王が人間界に出て来てたまたまいたふたつの軍隊を叩いたんじゃない?」


 それにしたってビルネンベルク軍は、僕たちが帰ってくるよりも先に撤退を始めていたはずなので、妖精王とは出会っていないと思われた。


「複合的になにかが起こっている気がする」


 世の中はイベントがひとつずつ順番に起こる訳じゃない。実際にはいくつものことが同時に進行している。


 今回も第三国と妖精王のふたつが同時に攻めてきているのかもしれない。


「あとはサリー待ちだね。ブラウヴルトが何と戦っていたのか分かれば、もう少し事態を整理できるかもしれない」


「ビルネンベルクの方ははっきりしないです。これは私がドーラで軍隊の責任者のところへ行って直接話を聞いてきた方がいいですね!」


 カルラがドーラを連れて出ていこうとする。


「ダメだよ。ビルネンベルク軍と言っても宰相派が混ざっている。カルラの身の安全を考えると許可できない」


「どうしてもダメだすか?」


「どうしてもダメ」


 僕は子供をしかりつけるような気分だった。命の危険まで犯して暴れたい理由を得たいのか。


「カルラの出番はちゃんとあるから心配しないで」


 そういうとやっと席に座る。


「まあ、カルラはメテオーア打っているときは凄い楽しそうだったからな」


「ドーラ! 私は死者を悼みつつ打ったのです」


「僕にはわからなかったけど、メテオーア打つの楽しいの?」


「そんなことはありません!」


「部屋に戻ったあとのカルラと言えば……」


「グラビィタ」


「ぎゃん!!」


 小石が乱れまいぬいぐるみドラゴン形態のドーラを撃ち抜く。


「黙りなさい」


 凄い迫力だ。


 これぞ武力制圧。


「そ、そんなに怒ることないではないか」


 ドーラが僕の肩に乗る。


「誰にでも秘密にしてほしいことはあるものだよ」


 僕がフォローするとドーラは「我にはない」と言いはなった。


「ドーラだって、ヴォルフがエッチなとこしてくれないと泣いていたではありませんか!」


 カルラが暴露すると、ドーラは人間形態になる。


「胸がないと泣いていたのは誰だ?」


 そういいながら自分の胸を強調する。


「泣いてません!」


 これは間に入った方がいいな。


「待って。今はそれどころじゃないよ」


 僕はドーラを椅子に座らせる。カルラは後ろから抱き締めた。


「二人とも大事な婚約者だ。秘密があるのは普通だし、僕もそれを探ろうとはおもわないよ」


 そこで一旦言葉を切り、ふたりが落ち着いたことを確認する。


「メテオーアを打つ場面はそう遠くないし、ドーラにえ、エッチなことをするのもそう遠くない。安心して」


「そ、そうか……」


「ヴォルフ、私にもですよ?」


 こうして僕は変な約束をさせられた。


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