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【17万PV】戦略級美少女魔導士の育て方  作者: 小鳥遊七海
第1章 無人島サバイバル
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152.銭湯

本日二話目です

 ドーラの悪のりはカルラが止めてくれた。あのままドーラに襲われて服を脱がされてしまっていたら、ちょっと大変なことになっていたかもしれない。


 しかし、問題はまだ残っている。


 大事なところはタオルのような布で隠せば良さそうだが、それを湯船に入れることはできない。そして、なにより湯船の中を見たら透明なのである。


 お湯が透明なのは当たり前なのだが、無人島で乳白色の温泉になれていただけに、この事態を忘れていた。乳白色なお湯ならお湯につかれば大事なところは隠されていたが、これではお互いに丸見えだ。


 見えてもいいんだけど、見てしまうと見てほしくない変化が僕の身体に起こる可能性は非常に高く、美少女に美女揃いの僕の婚約者たちなら百パーセント発生すると言い切っても良かった。


 ちなみにアイリは覚悟を決めたようで、もう隠そうともしていない。僕は先程から床に使われている木材の年輪を数えることに集中していた。


「ヴォルフ、先に入っているぞ」


 ドーラから声がかかって、女の子たちは全員浴室に入っていく。


 やっと視線をあげられる状態になると、僕はうまい方法がないか探し始めた。


 異世界転生者が作った施設なら水着ぐらいは準備されていてもいいのではないかと思ったけど、お風呂から上がってくつろぐための浴衣のようなものしかない。


 まったく、肝心なところで気の効かない!


 理不尽な怒りをまだ見ぬ異世界転生者へぶつけつつ、僕は覚悟を決める。


「心頭滅却すれば火もまた涼しというし、精神を冷静にた持てばエッチなものを見ても反応はしない。ヤバイときは素数を数える。ダメならフィボナッチ数列を数える」


 よし、行くぞ!


 意を決して浴室にはいるとみんな水着を来ていた。


 あれ……。


「さすがだな、ヴォルフは男だから隠す必要はないか」


 ドーラが僕をからかう。慌てて布で前を隠した。


「なんで……」


「流石に裸は恥ずかしいと思っていたら良いものがあったんですよね」


 クララが浴室の中の棚を指差す。


 そこには男性用と女性用の水着が置いてあ

った。そこにあったのか! 分かりにくい! 分かりにくいよ!


「ぼ、僕も来てくる!」


 男性用の水着を手に取ると僕は更衣室へ戻った。


 あーびっくりした。


 僕は胸を撫で下ろす。なんとか窮地を切り抜けたものの、これからも割と窮地が続くことが予想される。


 もう帰ろうかな……。


「あら、まだお入りになっていなかったんですか?」


 お姉さんがお酒をもって入ってきた。お酒は徳利にお猪口、それにお盆があった。よく湯船に浮かべて飲んでいる漫画とかあったけど、それとそっくりだ。


「まだお若いですから、お酒の力を借りないとならないかもしれませんね。今飲まれます?」


 お姉さんに言われて僕は考える。


 お酒の力はよく知っている。僕はあまり呑んだことはないけど、呑んだ人はたくさんみてきた。そして、大抵の人は冷静に考えるとよくないことをしていた気がする。


 回りの人がお酒のんでいたから仕方ないと言って許していなければ大問題になっていることばかりだと思うので、僕はお酒はのまないようにしていた。


「やめておきます」


 ここでお酒の力を借りるのは簡単だけど、多分これからもエッチなことを乗り越えていかなきゃならない気がするので、僕は断った。


「ふふふ。わかりました。ではお先にお嬢様方にお持ちしますね」


 お姉さんはお盆を片手で持って器用に浴室のドアを開けると中へ入っていった。中からはドーラとクララの歓声が聞こえる。


 早速飲んでいるようだ。


 お姉さんは浴室から出てくると、僕に頭を下げて出ていった。


「さて」


 水着を来たので心を落ち着けて浴室に入る。みんな水着を来ているのだから、ここは海辺(ビーチ)と何も変わらないのだ。


「ヴォルフ、やっときましたね」


 中に入ると泡だらけのカルラが立っていた。なぜか水着の部分だけ泡だらけで、まるで裸体の上に泡をまとっているようだ。大事なところは隠れているけど、隠れていない。


 脳が余計な補完をしている。あの泡の下は水着だ。水着!


 そうやって脳みそを納得させているところに、ドーラが抱きついてきた。ドーラの大きな胸が水着ごしに当たる。


「あ、ずるい!」


 何故かクララまで僕に抱きついてくる。やわらかな感触が気持ちいい。なぜ女の子は柔らかく出来ているんだろう。


「ちょっと、ドーラもクララも離れなさい!」


 アイリが石鹸と布を手に持って近寄ってくる。


「なにするつもり?」


「もちろん洗うのです」


 なんかめつきがいやらしい。アイリはいつも真面目な表情が多かったから、背筋が寒くなる。真面目な人が吹っ切れたら凄かった!という事案だ。


「いいよ、自分で洗えるよ!」


 僕は思わず後ずさる。


「観念しなさい。夫の疲れを癒すのは妻の務め。あたしがヴォルフを洗うのです」


 なんか目が座っている。


 アイリの背後に視線を移すと、空になった徳利が五本も転がっていた。あの短時間で飲み切ったらしい。


「もしかしてみんな酔っ払ってる?」


「はい。とても強いお酒だったようで……」


 カルラが御愁傷様といった感じで僕を見た。


「止めてくれる気は?」


「ありません」


 なぜ!?


「逃げていい?」


「アイリから逃げ切れる自信があるのでしたら止めません」


 僕はこの中で最弱なので逃げられるはずはない。しかし、ここで諦めたら男が廃る。というか、きっとずるずる行ってしまう。一度はまったら抜け出る精神力はない。ふんばらないと!


「アイリ!」


「はい?」


「愛してる!」


 アイリはピタッと動きを止める。


「ドーラ、僕に同じ台詞を言ってほしい?」


 ドーラは激しく頷いた。


「なら、わかるよね?」


「うむ、了解した」


 ドーラは固まっているアイリににじりよっていく。


「クララは僕の味方だよね?」


「それはもちろん」


「なら、ドーラに加勢してほしいな」


 ここまで来ると気分はダメなヒモになってきた。僕はこんなにも無力なのか。誰かに頼ったり脅したりしないと何も出来ないなんて。


「カルラ、僕は向こうの公衆浴場で入ってくる」


「はい。ごゆっくり」


 カルラは襲ってこなかった。僕のしてほしくないことをわかっている。さすが、僕のカルラ!



◆ ◆ ◆



 よく考えると最初から僕だけ公衆浴場に来れば良かったんだよ。それに心配していた「混浴」ではなかった。


 そりゃ異世界転生者が作ったであろう施設なんだから当選だよね。


 僕はもしかしたら、いや、もしかしなくても混浴をしたかったのかもしれない。


 魅力的な婚約者に囲まれて、何もない、何もしないというのは精神的な負担があったんだと思う。これからも「何もしない」という方針は変わらないのだけど、精神的な負担が少なくなるようにスキンシップ程度はしていこうと思った。


 はやくカルラの父親であるビルネンベルク王に婚約の許可を貰わないと身が持たないかもしれない。そのほかの婚約者も関係者に許可を貰わなければ。


「にいちゃん。なんか思い詰めてるようだけど、大丈夫か?」


 隣でお風呂に浸かっていたおじさんが話しかけてくる。


「大丈夫です。心配してくれてありがとうございます」


「まあ、なんで悩んでいるかはわからんが、時には流れに身を任せた方が楽だぞ」


 僕は曖昧に頷く。確かに楽だろうし、気持ちいいだろうし、みんな喜んでくれるかもしれない。でも、僕は異世界だからこそ倫理観を崩したくない。


「また難しい顔になってんな……。でも、若いときは下らないことで悩むもんだ。頑張って悩みな!」


 おじさんはそれだけ言うと湯船からあがっていった。


「確かに下らないことかもしれないなあ。僕がガツンとダメだって言えば済む話だし」


 エッチなことは禁止!


 言えない。


 言えない僕がいる。だって柔らかかったもん。




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