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【17万PV】戦略級美少女魔導士の育て方  作者: 小鳥遊七海
第1章 無人島サバイバル
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132.買物

 洗濯の仕方を教えるとなぜか好評だった。


 前世ではあまり洗濯なんかしなかったけど、ザッカーバーグ領ではサバイバル知識を叩き込まれるので洗濯の仕方も一通り知っている。


 あと洗濯したあとに気がついたけど、着替えがない。


 僕が裸で困っているとカルラがトレナンを使って一瞬で水気を切ってくれた。凄い便利なんだけど、僕はちょっと恥ずかしかった。


 乾燥までの手順が明確になったので、女の子グループに温泉に入りながら洗濯してもらう。


 服が一枚しかないと裸で洗濯するはめになることに今気がついた……。僕の想像力が足りてなかった。


 もちろん僕はその間はウリ丸と食事の準備だ。心配なのはドーラの背中に乗って飛んで行くといっても何日かかるかわからないことだ。


「一応、食事は持っていくけど足りるかな……」


 さらに言えば僕はそんなにお金を持っていない。カルラとアイリも似たような状況で島へ流れ着いているのであまり期待はできないだろう。シャルやドーラに至っては持っているわけがない。あとはクララだが、そんなに多く持っている感じはない。


 みんなの服を最優先としても帰りの食事も買う必要がある。


 なんだかんだで、買い物する前にお金を確認した方がいいなと思った。


「心配だけど、ウリ丸は留守番だな……」


 僕がウリ丸と会話をしながらご飯を作り終わる頃には五人とも帰って来た。


「もう遅いから今日はご飯を食べて寝て、明日の朝早く行こうか」


「ならば、寝ている間に我が運んでやろう」


「そうですね。それがいいかもしれません」


 ドーラとカルラだけで話が進んでいく。


「ちょっと待って。色々準備しないと……」


「それがドーラは凄いんですよ!」


 クララが興奮した感じで僕に近寄ってくる。


「飛空船で1週間以上掛かるところも一晩で着くんです!」


「更にドーラのお宝があれば何でも買いたい放題のようですよ」


 シャルまで興奮気味だ。


「ドーラのお宝?」


「うむ。我が集めた宝の中には金貨と宝石があるからな。人間が欲しがる程度のものなら好きなだけ買えるであろう」


 それは凄く有りがたいが。


「そんなに貰ってもいいの? お宝というからには大事なものなんでしょう?」


 ドーラは何故か赤くなった。


「未来の旦那様のために貯めていたものだ。ヴォルフのためになるなら惜し気もなく使ってくれ」


 なんだか結婚詐欺に合いそうな三十路の女性みたいなことをいい始めたぞ。


「わかった。常識の範囲内で使わせてもらうよ」


 ドーラのものを使うのは気が引けたが、それに頼らざるを得ない。無人島から出て返せたらいいんだけど、みんな返す気無さそうだな……。もう何を買うか指折り数え始めてる。


「ここからフリーデンの多きな町までどれぐらいなの?」


「我の翼なら一晩だな」


 あれ、もしかしてドーラってものすごいドラゴンなんじゃない?


「それって名付け前の話?」


「ぬ? 確かにヴォルフの言うとおりだ。名付け後なら一晩掛からないかもしれぬな」


 ドラゴンの姿のまま町のそばに行くわけには行かないから、適当なところで降りて歩くことを考えればちょうどいいかもしれない。


「では我は宝物を持ってこよう。カルラ、一緒に来て目利きしてくれ」


「ご飯が先です!」


 カルラはきっぱり断った。今は買い物よりお肉の方が重要らしい。僕はそんなカルラの視線に押されるようにしてお肉と付け合わせの野草を配り始めた。


 食事が始まるとシャルとドーラは暇なようでふたりで町について話しているようだ。どちらも町に入ったことがないらしく、人間と一緒だから案内してもらえるとはしゃいでいる。


「何泊ぐらいしますか?」


 アイリがポツリと言ったことで「宿屋!」「お泊まり!」とシャルとドーラが期待に満ちた目で僕を見つめる。


 僕は文明的な生活をすると無人島へ戻りにくくなると思って、なるべく滞在時間を短くした方がいいと考えていた。それでも夜通し飛んでくれるドーラを休憩させなければならないので、一晩ぐらいかな?と考えていた。


「一泊ぐらいかな? ドーラの休息も必要だし……」


「我は一泊では疲れが取れぬ! せめて1週間休まねば!」


「そうです。ドーラがかわいそうです!」


 絶対に嘘だと分かる調子でドーラが僕に訴えると、それに続けて芝居がかった口調でシャルが被せてくる。


 この龍虎コンビは本当に中が悪いのか謎だ。


「そんなに滞在したら無人島へ戻れなくなるよ……」


 僕らはビルネンベルク王国の宰相派に命を狙われて無人島に隠れすんでいるんだからね。それを忘れずに!と思ったけど、シャルもドーラも関係ないんだよね……。


 人間社会になれたら情報を集めてもらおうかな……。


「だ、大丈夫だ!」


「そうです、大丈夫です!」


 二人とも全然信用できない。慣れてきたら勝手に町まで買い物とか観光に行きそうな勢いだ。


「ご馳走様でした。では、ドーラとシャル。金目のものを取りに行きますよ!」


 カルラもめちゃくちゃ気合いが入っている。買い物はこの世界でも女の子を狂わす魅力があるのか。


 流れ着いてから無人島生活も2週間経つ。そこそこストレスも溜まっていたのかもしれない。


 僕たちの無人島生活は変えれる手段があるにも関わらず、帰ることができない。しかも、カルラは命を狙われている。


 よく考えたらそこそこではなく、凄くストレスが溜まっていたかもしれない。命の危険が二重にあるようなものだよね。


 カルラたちには買い物で羽を伸ばしてもらい、僕は薬や香辛料なんかを仕入れよう。ここへ帰って来たあともなるべくストレスをためないようにしないと。


 お風呂は温泉があるから、食事だよね。この際だから調理道具を揃えたいところだね。今はカルラの作った厚さが微妙な中華鍋しかないからね。お肉料理が多いからフライパンもほしいし、そうなるとブランデーやワインなんかのお酒も欲しくなるな。これは一度で運べないかもしれない。


 なんか、僕も文明的な生活に餓えていたのかもしれない。無人島での野趣溢れる食事も悪くはないんだけど、やっぱり薄味なんだよね。


「アイリとクララは何を買いたいの?」


 カルラたちが出掛けてしまったので、アイリとクララに買いたいものを聞いてみる。


「あたしは新しい武器だな。ここで生活してみて思ったが刃物は整備が必要なので、鈍器を買おうかと」


 全然女の子らしくない返事が返ってきた。


「私は断然本ですね! 無人島生活は暇そうなので」


 クララはもっと斜め上の回答だった。無人島生活は食べ物を取るのが大変なんだよ!という話をしようとしたが、最近はシャルがたくさん取って来てくれるので苦労した覚えがない。干し肉もたくさんつくったりして食糧には余裕がある。


 本か……この世界に来てからたくさんの本を読んだけど全部魔法関連だったから、他の分野の本も読んで見るべきかもしれない。


「本はいいね」


「ですよね! さすが魔法使い同士、趣味合いますね!」


「あ、あたしも本はいいと思うぞ」


 僕とクララが魔法使いの共通の趣味でわかり合っていると、アイリが無理矢理話を合わせてきた。


 アイリも本を読むんだ!と思って顔を見てみると、目が泳いでいる。嘘か。


 よし、からかってやろう。


「確か、バルド将軍も本をたくさん読むとか言っていたっけ。戦術や戦略について戦記ものを読んで研究しているとか」


「バルド将軍が!」


 ものすごい食い付きだ。これは買い物へ行ったら本を買うかもしれない。ひとりで何冊も買うのは躊躇われるので、クララ、アイリ、僕で一冊ずつ買えばそこそこ暇潰しになるだろう。


「冗談ではなく、将軍になるには色々な方面の知識は必要になると思うよ。数学や測量、地形、植生、あとは政治も。すべてを経験することは出来ないから本を読んで知識を蓄えないと」


「なるほど。確かにそうだ。ヴォルフの言う通り本から知識を得ることはよい将の秘訣なのだな」


 アイリはバカではないし、騎士見習いとしてやるべきことをやって来たのだろうが、本を読んで知識を蓄えるということを知らなかった。


 この世界の教育レベルは低いとは思えないが、職業によって知識に偏りがあるようだ。たぶん、親から子へ職業が受け継がれているため、所謂一子相伝的な教えが多いのだろう。


 前世はインターネットのお陰で知識が特定の人のものになることは少なく、誰でも知識を得ることができる世の中だった。その代わり専門性は薄れ、ある程度のことは誰でも出来るようになり、お金を払う必要がなくなり、お金が回らなくなる状態にまでなっていた。


 僕は働いていなかったので、その大変さはわからなかったが、この世界では少なくとも誰かを頼らなければ生きていけないほど社会の仕組みが出来ていない。働いていればお金は貰えるいい世の中だ。


「でも、騎士にとって実戦が一番だからそれは忘れずにね」


「もちろん。暇があればシャルと模擬戦をしているからな。今では互角に戦えるようになった。ここへ来て前より腕が上がったというものだ」


 シャルってコンラートたち三人と戦って負けはしたものの、結構強かったと思うんだけど、それと互角というのは凄い気がする。


「ヴォルフも鍛えたければ手合わせする」


「うん。そうだね。少しは鍛えた方がいいか」


 僕は魔法も使えないので、白兵戦で役にたつしかないし。


「え? ヴォルフは魔法使いではないの?」


 クララの視線は僕の右腕にある腕輪に注がれている。


「腕輪はあるけど、見ての通り魔法は使えないんだ」


「そうなんだ……」


 な、なんとも言えない雰囲気になってしまった。


「でも、僕はカルラの魔法の師匠として魔法の開発に尽力できるから割りと満足してるんだ。カルラは僕の考え出した魔法を使いこなしてくれるしね」


「ヴォルフほどの魔力持ちが魔法を使えないなんてちょっと信じられないですね……」


 僕も魔力を黒虎のご飯以外に使えず残念ではある。あ、一応ドーラの名付けにも使ったか。


「いずれ研究させてくださいね。私はこれでも魔工師なんで、ヴォルフの魔力を活用できるアーティファクトを作れるかもしれません」


「うん。その時はお願いするね」


 そこまで、話したところできんきら金に光輝いているカルラとドーラがシャルに乗って帰って来た。




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