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【17万PV】戦略級美少女魔導士の育て方  作者: 小鳥遊七海
第1章 無人島サバイバル
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126.守護

 小さくなったゴルドはパタパタと飛んで僕の肩にとまった。どう見ても力学は無視した翼の大きさと動きだったので、魔法の力で飛んでいるんだろう。


名付け親(ヴォルフ)よ。魔力は枯渇してないか?』


 ゴルドに分け与えたことで魔力は爪の先ほども減っていない。もし魔力を表すゲージがあったら一ドットも減っていないだろう。


「大丈夫。全然余裕があるよ」


『そ、そうか。我にあれだけの魔力を分け与えて余裕があるとは流石、ドラゴンに名付けることが出来る者だ』


「ところでゴルド。名付け親になると何が出来るか知ってる?」


 僕はこの中で輪をかけて色々なことを知らないが、ドラゴンに名前をつけたことがある人はいないだろうし、歴史上の人物にもそういうことをした人はいなかったから、人間で知っている人は全くいないだろう。


『我も知識でしか知らぬが、名付け親には絶対服従のようだ。そして、名付け親は我に魔力を与えることができる。我は魔力を使って色々なことができるから、名付け親は便利なアーティファクトでも使っている気分になれるかも知れぬな』


 それは僕が間接的に魔法を使えることと同義だよね? 気分上がるなあ。


 僕は気が緩んで表情を明るくする。はたから見たらだらしなく笑っているように見えるかもしれない。


「ヴォルフに媚び売って取り入ってどうするつもりなの?」


 それがカルラには気に入らなかったようだ。彼女の回りに凄い勢いで小石が回っている。仲良くムードだったのが、なぜか交戦ムードに変わっている。


『あ、(あるじ)の言うことは聞けぬ。我はヴォルフの言うことしか聞かぬ』


 更に小石の動きが早くなり、あちこちで衝突が起こり、見えるはずのない火花が散っている。


「ヴォルフ、気を付けてくださいね。ゴルドは女の子ですから」


「はい?」


 どこを見たらドラゴンの雌雄を見分けることが出来るのか知らないが、カルラには分かるらしい。


「仮にメスだったとしても、ドラゴンじゃない。そんなに気にすることはないのでは?」


 アイリも僕と同じ考えのようだ。僕も流石にドラゴンと婚約しようとは思わない。シャルはネコミミ少女になれたから婚約したけど。


「いえ、気を付けた方が良いかと。ドラゴンはわたくしと同じように変身できます。しかも、アイリより妖艶な美女に化けるはずです。きっとヴォルフの褥を狙ってきますよ」


 シャルがネタバレしてくれた。流石にネタバレされたら、その手は使わないだろう。もっとも使われても僕は断ったと思うけど。たぶん。


『ちっ、泥棒猫め。余計なことを』


 ゴルドが小さく呟いた。こういうやり取りを見ていると女の戦いという感じなんだろが、実際はドラゴンと黒虎である。「龍虎相打つ」怪獣大決戦だ。


「うーん。女の子ならゴルドなんて名前にしない方が良かったかな?」


 僕はよかれと思ってあえて空気を読まずに愛称の話を持ち出す。これで和気藹々とした雰囲気になればいいのだが。


『ならば愛称をつけてくれ』


「そうだな……」


 何がいいかな? 今まで男性だと思っていたから、急に女性名が思い付かないな。人間につけるような名前ではなく、ドラゴンっぽい名前を考えたいところだ。


「そんなやつ、チキンで十分です!」


 カルラの提案は即時却下だね。確かにゴルドは臆病だったかもしれないけど、カルラに本気出されだら神様でも逃げたくなるから。


「あー、泥棒龍とかでどうですか?」


 シャルは絶対にゴルドの呟き聞こえていたよね。そして、かなりゴルドに対して悪意のある言い方。任せて大丈夫なのかな。


「ドーラではいかがか?」


 アイリはゴルドに悪い印象はないようで普通の名前を提案してきた。ドラゴンのドーラ。ドラゴンっぽい名前だ。


「じゃあ、ドーラと呼ぼうか」


『ふむ。真名は隠した方が良いと聞くからな』


「じゃあ、ドーラね」


 愛称は割と簡単に決まった。次はドーラにお願いしなくては。


「ドーラにお願いがあるんだけど、今までいた火山に戻ってくれないかな?」


 僕のお願いを聞いて泣きそうな顔をしている。ご飯をもらえない子犬を見ている気分だ。


『なぜ、そのような過酷なことを言うのだ……我も名付け親と一緒にいたい……』


「この島を守るための任務だと考えてくれないかな? ドーラが火山にいないと、この島の温泉がなくなってしまうんだ。そうすると、島の気温が下がって植物が育たない。更にそれを食べる動物も増えない。すると僕らが食べるものがなくなって困ってしまうんだ」


『訳はわかった。しかし、力を増した我が戻れば火山は噴火するやも知れんぞ。そうなれば元の木阿弥だろう』


 僕が気軽に名前をつけたせいで、こんなことに………。


 僕は膝をついた。


 急に崩れ落ちた僕の肩からドーラが飛び上がってホバリングする。


「なんということだ」


『悲しむことはない。我はそのために黒虎どもから魔力の棺を取り返したのだからな!』


「魔力の棺は黒虎のものです。ドラゴンが奪っていったのでしょう?」


『あれは元々我が集めていた宝物のひとつだ。黒虎の先々代が病気の治療に使いたいというから貸したのに、帰ってこなかったのだ』


 シャルは昔のことを出されて返答に困っていた。黒虎はドラゴンほど長生きしないからわからなくても無理はない。


 とは言うものの、先々代に貸したまま忘れていただけではないんだろうか。


「ドーラが忘れていただけじゃないの?」


 気になったので一応聞いてみた。


『そ、それは……』


 たぶん、ドーラはドラゴンの習性として宝物を集めていたんだろう。それもたくさん。その中のひとつを貸し出していたんだけど、あまりに数が多すぎて貸していたことすら忘れたんだと思う。


「最近になってたまだ思い出したから返して貰おうと思ったけど、黒虎たちに拒まれたんじゃない?」


『ぐぬぬ……』


 僕の予想はどうやら当たっていたようだ。ドーラの旗色がだんだん悪くなる。


『しかし、借りたものは返すのが筋! それに魔力の棺がなければ、ヴォルフの好きな温泉はなくなるのだぞ!』


 僕がいつ温泉を好きと言ったのか小一時間問い詰めたい。僕は温泉が好きなのではなく、温泉がなくなると食べ物が減るから困っているんだ。勘違いしないでほしい。


『ほれ、温泉があれば我と裸の付き合いが出来るのだぞ』


 ドラゴンと裸の付き合いをしたい人間はそう多くはないと思うのだけど、ドーラはどんな人間と付き合いがあったんだろうか。


『我の悩殺ボディを拝みたいと思わんか?』


「ドーラと裸の付き合いは要らないんだけど、魔力の棺があれば温泉を維持できるというのなら、シャルに頼んで見るよ」


「ヴォルフの頼みなら断りませんわ。その代わり、今夜はわたくしに多目に魔力を注いでください」


 なんか聞く人が聞いたら勘違いしそうな言い方だよね。僕はシャルに指を貸すだけだし、何かを注ぐことはしていない。


『すでに黒虎と肉体関係にあるだと……』


 ほら、ドーラが勘違いし始めた。シャルを見ると、ドーラに対してドヤ顔で見下している。悔しそうなドーラ。


『名付け親よ! 我にも魔力を注いでくれ!』


 と言うと、ドーラはぽわんと煙に包まれた。


 煙がなくなって出てきたのは、大きく胸のあいたドレスを来た金髪の美女だった。背が高く腰も括れている。長い髪が腰まで届きそうだった。


 目は大きいが若干垂れ下がり、口元にはホクロがあって艶っぽさに拍車をかける。


「これなら魔力を注げるであろう?」


「ドーラ?」


「そうだ。人間型は久しぶりだが、うまく変身出来たぞ。人間で言うところの美人であろう?」


 僕は唖然としていた。他の三人はドーラの大きな胸を見て歯軋りしている。うらやましいようだ。シャルは人間型に変身しているのだから、胸の大きさなんて変えられるのではないかと思うが、何かしら制限があるのかもしれない。


「魔力を注ぐと言っても、シャルは指をしゃぶるだけなんだけど……」


 勘違いをいつまでも続けているわけにはいかないので、そろそろ本当のことを言う。


「なんと……。すると黒虎とは肉体関係はないのだな?」


 まだ三人の誰ともそういうことをしたことないし。僕はこの島を出るまではそういうことをしないと決めていた。


「くくく。お子様め。そんなことでは我がヴォルフの寵愛を独り占めにしてしまうぞ」


 ドーラが調子に乗り始めて他の三人が爆発しそうなので、僕はドーラの後頭部を叩いた。その拍子に舌を噛んだようで彼女は悶絶している。


「あのね、ドーラ。僕はドーラとそういう子とする気はないから。なにせ『親』だしね」


 ドーラは口を押さえたまま僕をみた。


「ほやとやへうゆうひみへはなあ」


 何言っているか意味がわからない。


「あと、僕のお嫁さんは、この三人だから、ちゃんと敬意をもって接するように」


 そういってカルラたちの方を向く。


「カルラたちもドーラが変なことをしたら攻撃しないで、僕にいうんだよ」


 そうしないと美少女魔導士のカルラと、クロネコミミ少女のシャルに加えて、くノ一アイリの三人組対ドラゴンの怪獣大決戦になるし。


「わかりました」


 カルラたちには依存はないようだ。それどころか、僕が「お嫁さん」とちゃんと認めたことで上機嫌のようだ。


「ヴォルフは我をお嫁さんにする気はないのか?」


「ないよ」


 ここははっきり断っておこう。


「我はドラゴンの中でも由緒正しき血統だぞ。更に言えば、人間の言うところの姫に当たる。我をお嫁さんにしておけばドラゴン全部を味方につけたも同然だ」


「でも、断るよ。ドーラのことはまだあまりしらないし。これから仲良くなる過程でそういう関係になるなら考えることにする」


「本当か? よし、約束だぞ」


 僕の言い回しは遠回しに断っているのだが、ドーラには都合よく聞こえたらしい。そもそも、カルラと出会って1週間ちょっとだからなあ。よく知らないことを理由に断るのは心が痛む。


「あと、ドーラは出来るだけドラゴンの形でいてくれないかな?」


「ん? なぜだ?」


「ドラゴンの方が好きだからだよ」


 本当は僕には目の毒だからなんだけど……。これ以上、扇情的なあられもない姿を見せつけられるのは厳しい。


「そういうことなら」


 ドーラは再びドラゴン人形のようになった。一安心だ。



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