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328.住人

 何か大きな音がしたと思った。


 今は野宿していることを思い出して、すぐに身を起こす。だが、周囲を見回しても音以外に異常がない。それでも大きな音は段々と近づいてくるように感じる。


「やばい。逃げないと」


 急いで木から降りて地面に立つ。


 ふと上を見上げる。


「仕方ないけど捨てるしかないか」


 少しは苦労して作り上げた仮の住まい。未練がないと言えば噓になるが、命には代えられない。


 音から離れるようにして移動する。ただ音の正体は調べておかないと、今後も同じようなことを繰り返しボスを探すどころではないかもしれないので、離れすぎずに様子を見守った。


 草木の合間から何かが姿を現す。


「あれは……ドラゴン?」


 頭部はどう見てもドラゴンだ。しかし、そこから延びる胴体が太く長い。終わりの方が全く見えなかった。


 ドラゴンは私が寝ていた仮のツリーハウスを見ると、それを避けて先に進んでいく。大きな体は木を押しのけても傷一つなく、ドラゴンも擦れる体を気にも留めていないようだ。


 もしかしたら、あれがボスなのかもしれない。


「倒せる未来が見えないぞ」


 手持ちの魔法と魔力では倒せるとは思えない。もちろん、今の実力で倒せてしまったら修行に来た意味がない。それにあれを倒せるぐらいのレベルになれるのなら、ここに着た意味があるというものだ。


「ドラゴンはもう行ったかな?」


 音は遠ざかってすでに聞こえてこない。


 とりあえず、また住処をどこかに構える必要があるので、この森を出ようと思う。どうやらこの森はあのドラゴンの住処のようだから。




 森はとても広かったが、お昼を過ぎるころには抜けるころができた。森の外には草原が大きく広がっていた。遠くには湖も見え、森の背後には山脈がそびえたっていた。


 位置関係から考えると山脈の中腹にいるようだ。たぶん、どこかに川があり、あの山脈から流れた水が湖にたまっているんだと思う。なんにしろ飲めそうな水が見つかったので湖に向かってみる。


 湖に向かう途中で明らかに人の手が入った道があった。片方は湖に向かっているが、反対方向はどこに続いているかはわからなかった。


 湖に向かって歩いていく。


 あまり時間をかけて歩いてしまうと、寝る場所を作ることができなくなってしまうので、空を飛んでいくことにする。


 そこそこの速度で小一時間も飛行すると湖についた。


「おお!」


 湖を覗き込むとものすごい透明な水だった。深いところを泳いでいる魚が丸見えになっている。数も多く、おいしそうな見た目をしていた。川魚は泥臭いと言われているが、これほど透明で透き通った水に住んでいるのなら、そんなこともなさそうだ。


「これは幸運だったのでは」


 ただ気になることはあった。


 これだけの良い条件が整った湖。そして、人の手が入った道。


 湖の周辺には集落らしきものは見えないから、おそらくは道の反対側に集落があるのだろう。


 どんな性格の人たちが住んでいるかわからないので、うかつなことはできないが、少しの飲み水と少しの魚ぐらいならばれないと思った。


 一応、警戒して道とは反対側の岸にキャンプを作ることにする。


 とは言っても。


「日没までもう少しかぁ」


 とりあえず、草をならして隠れて寝れそうな場所を作る。


 青臭いが致し方がない。


 お腹が減っているので、魚を一匹見つけると、魚の動きを相殺するエネルギー変換魔法をかけ、その上で魚を手元に引き寄せる。魚は身動きもできずにふわふわとこちらに近づいてくる。


 簡単に魚を手に入れることができた。


「ではレンチン!」


 葉っぱの上において、少し時間がかかるが魚をそのまま蒸してみる。


「ほかほかの魚蒸しの出来上がり!」


 塩味はないものの臭みがまったくなくて、身も柔らかくとてもおいしかった。


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