311.実戦
カルラ先生は先に上がって待っている。
白いドレスのようなフワフワした服なのに激しい衝撃や高熱、低温を無効化する超絶チート防具を身に付けていた。
もちろん、クララの作品であり、一点ものだ。
「カルラ先生だけズルいですよ」
「何が?」
「そんな魔法の防具をつけられたら勝てるわけないじゃないですか?」
わざと挑発したのだ。もちろん、カルラ先生はビルネンベルクの第三王女という身分の高い方なので、安全に気を遣うのは当たり前だ。
「わかった。これあげるよ」
カルラ先生はばっと脱いで私に投げつけてくる。怒ったかと思ったが、そうではなかったらしい。因みに脱ぎ捨てると水着のような戦闘服を着ていた。
「有り難くお借りします」
これを来ていれば、服がボロボロにされることもないぞ。
めいいっぱい、やられることができる。
「さて、それ来ていれば本気でやっても大丈夫だよね。格闘戦と言わず何でもありでやろう!」
ものすごい笑顔だ。
戦闘狂と影で言われているだけある。
「わかりました」
なんでもありなら、適当な魔法を受けて失神した振りをすればいいのだ。
私に有利な条件と言えた。すぐ負けるにはだけど。
「じゃ、覚悟はいい?」
負ける覚悟なのか、殴られる覚悟なのか。
普通は「準備はいい?」と確認するものではないのだろうか。
私はエネルギー変換魔法でゆっくりと浮き上がる。
位置エネルギーを運動エネルギーへ変換する。するとどういうわけか釣り合いが取れるので、ほとんど魔力を消費することなく浮き上がることができる。
そして、モコ様から聞き齧った「空戦エネルギー理論」を思い出す。
色々細かな理由を言っていたが、私が覚えられたのは「高い位置にいる方が強い!」だけだ。
初めて聞く言葉が覚えきれなかっただけで、私がバカなわけじゃない……はず。
「どこまで上がるの?」
カルラ先生に声をかけられて気がつく。
カルラ先生よりも身長ひとつ分、上に来ていた。
「ここから開始させてください」
これぐらいのハンディは貰ってもいいだろう。
「じゃ、行くよー」
開始の合図もそこそこにいきなり凄いスピードで突っ込んでくる。
しかし、それは予想出来たことなので、私は上昇して逃げる。
下から追ってくるカルラ先生から逃げるためにどんどん上へ行く。
「どこまで行くの~」
どこまで行けばいいんだろう。
高い位置が有利なことはわかったけど、どうすれば……。
しばらく上がると気温が下がってくる。
私は魔法の防具を着ているので平気だけど、カルラ先生は寒そうだ。
「ちょっと!」
流石に寒さに耐えきれなくなったのか、スピードをあげてくる。
「あれ……スピードが上がらない」
私はカルラ先生の位置エネルギーと運動エネルギーに干渉し、追い付かれないようにした。
こうやって逃げ続ければ……。
いや、これは勝てるんじゃない?
ここまで位置エネルギーを溜めることができたら、それを全部使えばカルラ先生をどうにでもできる。
丸焼き、氷付け、落下など、この位置エネルギーを何に変換しても勝てそうだ。
もちろん、私のエネルギー変換速度はそこまで早くないので、そうなる前に対策されるだろうけど。
「カルラ先生」
「なに?」
「先に帰ります」
「え? ええ!!」
私は位置エネルギーをすべて変換しながら、急降下した。




