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301.美味


 シーフードカップラーメン……なんという美味なのでしょう。魚介の生臭さがいっさいなく、旨味だけが凝縮された濃厚なスープ。そして、その旨味たっぷりのスープを吸った柔らかい麺。


 学食で食べるスパゲッティも美味しかったけど、これは別格だね。


「それで、ミリアはどうやってこっちの世界へ来たと言うの?」


「えっと、話せば長くなるんですが……」


 大きな海の中心に浮かぶ元無人島で、希代の魔法使いたちを集めて魔法学園が開かれたこと、そこに学園長のヴォルフに誘われて入学したこと、回りが優秀すぎてついていけないことを話した。


「ミリアは全然落ちこぼれではないのよ?」


 モコ様は優しい笑顔でおっしゃった。艶やかな黒髪が揺れる。


「成績をあげるなど簡単なことなのよ。モコ様に任せるのよ」


 豊かな胸をドンと叩いて、頼もしい限りではあるのだけど、そろそろ帰らないと門限に間に合わなくなりそうだ。


 しかし、今ここを離れたら確実に戻ってこれなくなる。


「あの、モコ様……」


 素直に状況を説明すると、モコ様はポケットからチョコレートを取り出した。


「扉の前にひとつ置いて帰るのよ。次に来るときに『ノームサンノームサンチョコレートの場所まで運んで』と呪文を唱えれば来れるのよ」


 さすが、モコ様。転移魔法の使い方をご存じだった。


「分かりました。明日はお休みの日なので、朝からこれます!」


「明日は水曜日だからモコ様が休みじゃないのよ。でも、放課後に来るといいのよ」


「はい。では、放課後に!」


 私はモコ様に言われた通り、チョコレートを扉の前に置いて、帰還の呪文を唱えて寮に帰った。なお、今度はちゃんと来てくれた。


 もしかしたら、忘れ去られていたのかもしれない。



◆ ◆ ◆



 次の日はお休みなので、学友たちはドラゴンであるドーラ先生の背中に乗って、ブラウヴァルトへ買い物にいっている。


 温泉にはいって一泊してくる予定らしいので、私は別の用事があると断っていた。温泉は美肌効果もあるらしく、学園の先生のほとんどは同行している。


「ソニア先生は行かなかったんですか?」


「そうよ。今日はヴォルフと島デートの日なの。この島にも温泉はあるのよ」


「へえ、どこですか?」


「ほら、実習で怪我したときに行くじゃない」


「え、あれって露天風呂じゃないですか!」


 南の森の中には怪我を直す効用がある温泉がある。


 しかし、囲いなど何もない露天風呂なので、男子学生は覗き放題だ。


「ふふ。だから、今日なのよ。学生はみんなブラウヴァルトへ行っちゃったじゃない?」


 いえ、私が残ってますが……。


「ヴォルフと二人で温泉でしっぽりよ」


 何をいっているか私には分からないけど、ソニア先生の表情を見ているといけないことをするのだと言うことはわかった。


 ヴォルフ先生は19歳で、ソニア先生の年齢は詳しくわからないけど、大人の女性であることは確かなので、デートで温泉、しかも混浴となれば、そのあとの展開は決まっているも同然だ。



「が、頑張ってください!」


「ええ、言われなくても今日こそは寵愛を受けて見せるわ!」


 大きな胸をぶるんと震わせて宣言したソニア先生は戦いに望む騎士のような勇ましさがあった。


「あ、それでミリアは何をしてるんだっけ?」


「 私は学園の探索をしようと……」


「男の子と?」


「いえ、ひとりでです」


 さっき、学生は全員外出していると言ったばかりなのに。私をからかっているんだろうか。


「ヴォルフが新しいお嫁候補をつれた来たと思ったのに」


「ち、違いますよ! 私がヴォルフ先生となんて天と地が避けてもあり得ません!」


 ソニア先生は私の肩を軽く叩く。


「最初はみんなそう言うのよ」


「ええ~」


 こんなおちこぼれをお嫁に貰いたがる人なんているんだろうか。





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