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300.空腹


 無人島だった島に魔法学園が出来て早三年。


 私がヴォルフ先生に連れてこられたのは3か月前だ。


 南ビルネンベルクも、さらに南の田舎町にいた私は、サトウキビの農業に精を出す少女だったのだけど、ヴォルフ先生がカルラ様を連れて視察にこられたときに、回復魔法の素質があると見抜かれた。


 町では魔法使いなんてひとりもいなかったため、町をあげてのお祭りになり、盛大な見送りをされてしまった。


 しかし、蓋を開けてみれば全然魔法など使いこなせぬ田舎センス。全く覚えられない魔法体系に、止めは優秀な学友たち。劣等感の固まりになるのに時間はかからなかった。


 もう自主退学も視野にいれなければならないかと思い始めた頃だった。


「なんで、こんなところに扉が……?」


 この学園は出来て3年しか経っていないのだが、日々増改築が繰り返されているため、良くわからない部屋などが出来ている。


 先生たちもどこが増築されているか知らないようで、たまに迷子になると言う。


 迷子になったら目を閉じて「ノームサンノームサン学園の入り口までお連れください」と言う呪文を唱えると脱出できる。


 私も何十回かお世話になった。


 そして、また迷子になったので最後の呪文を唱えようかどうか迷っているときに扉は現れた。明らかに開けちゃダメな装飾がしてある。


 ここだけ岩肌が露出し、豪華な扉がズーンと立っている。良く見れば岩肌と扉はくっついておらず、扉の背後には何もない。


「ノームサンノームサン学園の入り口までお連れください」


 開けない方がいいのだから、もうここには用はない。脱出の呪文を唱える。


 ――ごめん。今忙しい。そこで待ってて。


 頭の中に声が響く。


 呪文を唱えて返答があったのは初めてだった。


 いつもなら何も返答なく、すぐに脱出できるのに。


 そもそも、この呪文て誰かへ連絡するだけの呪文だったらしい。その誰かが助けてくれるのを待つしかないようだ。


「お腹減ったなあ」


 お昼ご飯を食べ損ねており、完全に空腹だった。このまま明日まで待てと言われたら、死ぬかもしれない。




 などと、冗談で考えていただけなのに、もう夕食の時間もとうに過ぎ去ってしまった。


「うう、ひもじい」


 田舎にいたときは空腹なんかしょっちゅうだったのに、今では空腹が耐えられない。


 ここに来てからの生活は本当に快適だった。今さら田舎の生活に戻れるのだろうか。


 無理じゃない?


 なんとかして、成績あげないと……。でも、今はその前に空腹で死んじゃうかも。


 死を覚悟し始めたとき、扉から話し声が聞こえた。そして、どこから匂ってくるのかわからないけど、魚介スープと香辛料の良い匂い。


 多分、扉の向こうからなんだろう。


 私は誘われるように扉を開けた。




「びっくりしたのよ」


 扉の向こうは飾り気のない部屋だった。黒板と机と椅子が少し。中央には声を発した黒髪ポニーテールの女の子。


 年齢は私と同じぐらいだけど、学園の制服のような服を着ている。魔法学園の生徒だろうか。


「この娘は異世界から来たと言うの? 明らかに『魔力』を感じるのよ」


「南ビルネンベルクから来たミリア・バーミリオンと申します」


 先輩なのかもしれないので、ちゃんと挨拶しないと。


「! い、今、なんて言ったのよ?」


「え、ミリア・バーミリオン……」


「その前なのよ?」


「南ビルネンベルク」


「戦略級美少女魔導士なのよ!」


 両肩を強く掴まれ大声で叫ばれた。それはカルラ先生の称号では……?


「わ、私はおちこぼれなので、そんなたいそうな称号ではありません!」


 ちゃんと否定しておかないと。


「何をいってるのよ? 『戦略級美少女魔導士の育て方D』は一作目の良いところはそのままに育てられる美少女がたくさん出てくるのよ。超名作なのよ」


 分けの分からないことを捲し立てられて、空腹も相まって私は目を回してしまう。


「ぐるる」


 私のお腹がいい音を立てた。それと同時に力が抜けて床に座り込む。


「ああ、お腹が空いてるのよ。モコ様がシーフード味のカップラーメンを作ったところなのよ。食べるがいいのよ」


 そういうとモコ様という神様は私に糧をお恵みくださった。とても美味しかったです。





 不定期更新で申し訳ないのですが、第二章開始です。


 第二章はおちこぼれ魔法使いの学生ミリアの話です。第一章で活躍したヴォルフの作った魔法学園で魔法を学ぶ初心者魔法使いが、日本の戦術オタクの力で成り上がることが出来るのか?!的なストーリーです。


 第一章の登場人物は主に先生として登場します。お楽しみをお楽しみにね!




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