252.継承
王位継承権はこの戦争でカルラが第一位となった。僕はちょっと思うことがあり、王位継承権を辞退している。
一時は生存が危ぶまれたバルド将軍は王となり、ビルネンベルクを治めることになる。
ゴッテスフルスの血筋が他国に逃げたり、噴火で亡くなったりして、国を治める人が居なくなってしまったので、ゴッテスフルスは荒れ果てていた。
ジラフ王子はその惨状に心を痛め、ゴッテスフルスを治める領主の地位を望んだ。
結局、直接会うことが叶わなかった宰相は、ジラフ王子についてゴッテスフルスへ行ってしまった。
会えない理由は結局聞けてない。
南ビルネンベルクは結局独立せずにバルド将軍の治世下に入る。ただし、今回の件で南ビルネンベルクにも強力な海軍を置いた方がいいだろうと言うことになり、僕の兄たちを中心に海軍の再編成と訓練をすることになった。
クロはタルの使っていた古い依り代を見つけて、また動けるようになった。今度の依り代は見た目が日本人形なので美少女だ。
タルはフリーデンに帰らないらしく、未だに僕たちについてきている。主祭神が帰らなくていいのかな?
さて、僕たちはと言うと、ドーラとシャルがいた無人島に戻っていた。
婚約者たちも一緒だ。
「無人島についてこなくても良かったのに」
僕とカルラとアイリが流れ着いた無人島。最初は脱出することを考えて行動していたのに、結局戻ってきてしまった。
「それはヴォルフが決めたことですから」
前にここにいたときは生きていくだけで精一杯だったけど、強くなった今なら何の問題もなく暮らしていける。
それにドーラやビルネンベルクから譲り受けたホバーがあれば色々な町へ行くことも可能だ。
もはや無人島暮らしますとは程遠い。
「それで無人島で何をするんですか?」
シャルが顔を赤らめて訪ねてくる。
それを聞いて僕まで赤くなってしまった。
決して邪な気持ちがあったわけじゃないけど……そうか。無人島に僕たちしかいないのだから、邪魔するものは何もないのか。
「そ、そういうことも追々するとして、まずはみんなが住める家を作らなきゃ!」
何張りかテントは分けてもらってあるが、ずっとそれを使って生活するわけにはいかない。
「そうですね!」
はりきった元気な声をあげたのはサリーだ。
サリー以外もみんなやる気に満ちているようで、早速斧や槌を取り出してホバーへ乗り込んでいる。
「行動はや!」
それに乗り遅れまいと、ミーやスーもリュックを取り出していた。どうやらみんなの食料を取りに行こうと思っているようだ。
『くれぐれも童貞を捨てるでないぞ』
僕の指に指輪としてついているニーベルが忠告する。
『そういうことはもう少し先かな……』
カルラのお父さんである先代のビルネンベルク王の墓前で挨拶はしたものの、カルラはまだ14歳だ。成人するまで待つので少なくともあと2年は先になる。
「これからは忙しくて多分それどころじゃないよ」
僕が考えているのは、この無人島に新しい国を作ること。そして、ここに色々な国の留学生を集めた学校を作り、相互理解が出来る土壌を形成することを目的にしていた。
それがカルラの目指す国の理想像に繋がるからだ。
相手の国の特産や技術、自分の国に足りないこと、それらを認識すれば互いに助け合い、先に進むにはどうしたらいいかはっきりとわかるはずだ。
中にはそういう知識を悪用しようとする人たちもいるかもしれないが、前世の歴史を振り返って見てもそういう戦略を長期的に成功させた例は一度もない。
必ず助け合う戦略を選択した人たちが生き残っている。
僕はまだ若輩者ではあるが、そういう事実を芯にして学校を作っていこうと思う。幸いなことに僕の婚約者たちは優秀な人が多いのだから。
これで第1章「無人島サバイバル」はおしまいです!
第2章は構想を練っている最中なので、始まるまで長い時間が開きます。
そして、今日(10/25)から「異世界でプログラマは役に立たない!」を投稿しました。
そちらもよろしくお願いいたします!




