249.奇襲
ランゲンフェルトについた僕たちは宰相との軍議を開く。
宰相本人に会えるかと思っていたけど、いつだかに会った人形の方が出席していた。
この場にはジラフ王子はおらず、僕とカルラ、ユキノに、宰相の代理の人形だけだ。
ほとんどの王族や貴族は王都に囚われたままとなっているらしい。
「宰相は大丈夫なの?」
この場に人形しか来ていないことを考えると、僕が嫌われていることを除いても心配だ。
「大丈夫です。身の安全は確保しています。この場では言いにくいですけど、ヴォルフに直接会うことは避けたい理由があるもので」
「直接会ったらヴォルフの魅力にやられてしまうかもしれませんからね」
カルラが小声で僕に囁くのだが、それが本当なら今まであった女性はみんな僕の魅力?にやられてなければおかしくない?
そこまで僕も自惚れていない。
「それで本題に移りますが精霊兵の対処はユキノの妖精軍に任せてもいいのですね?」
「はい。お任せください」
ユキノはこの前から普段のおどけた様子がなく、真面目に受け答えしている。
精霊とは程遠い妖精ではあるが、尊敬すべき精霊に対する仕打ちに起こっているようだ。
「わかりました。では妖精軍が対処出来ない事態が起きたときのために、人形の軍隊も同行します」
予想できたことであるが、宰相はどうやら自動化を極限まで進めた機械兵を用意できていたようだ。
そりゃ、今目の前にいる人形と鉄猪の制御技術を見れば予想つくけど、こんなにもはやく実用化されるとは思ってみなかった。
前世では情報を隠すことは難しいし、最新技術を発展させるためには他で同じ研究をしている研究者と交流することが必要だ。
ここは異世界で自動化に必要な技術は宰相だけが知っている。
それでここまで完成度を高めたのはひとえに宰相が優秀だからだろう。
異世界転生小説で知識を仕入れたような僕とは違う本物の知識だ。
「それは心強いです」
妖精を介しての現状把握には限りがあるので、人形が同行して状況を把握してくれるのはとても都合がいい。
どうせなら僕が操れる人形がほしいけど、そこまで用意してもらえる時間はないだろう。
「では、本日の昼頃、王都奪還作戦を決行する!」
「おー!」
カルラとユキノが声をだし、宰相の人形も拳を突き上げてくれた。
流れ的に僕が号令を掛けたが、よかったのかな?




