247.救援
ライラから教えを受けたユキノは、北の妖精、ノーム、ドライアード、それにウンディーネをオベロンから借り受け、妖精の軍隊を編成した。
訓練が必要かな?と思ったが妖精同士は遠隔で意思を通じ会わせることが出来る上、魔法で遠隔攻撃できるので基本的にはヒットアンドウェイで戦うらしい。
接敵されたら逃げるのが基本だそうだ。
それに妖精は死を恐れない。
僕たち人間と違い、輪廻転生できるかも?という不確かな情報ではなく、必ず輪廻転生できるのだ。
個という意識も希薄で自我が芽生えるのはユキノやライラなど、ある程度強い力を持った特別な存在だけだ。
「では、奪還してきます!」
精霊兵士に対抗出来るのは妖精だけなので、先発隊としてユキノを隊長に僕たち人間の軍隊の露払いをしてもらうことになった。
「クロが居ればユキノについてもらったんだけどなあ」
『いますよ』
クロの依り代は見つかっておらずシメキタの辺りから離れることは難しい。
タルにフリーデンから調達してもらったほうがいいかもしれない。
だが、今は帝都から逃げてきた人たちの受け入れで、その辺の実務をよく知っているタルやライラ、それにサリーまでもが総出で対応している。
それさえなければユキノに隊長など任せなかったものを……。
「ヴォルフの不安はよく分かるけど……」
「ここは信じるしかないな」
カルラとドーラも僕と同じ気持ちのようだ。
下手に精霊兵と対峙して、戦うことになってしまったら負けは確定してしまう。
一応、ドライアードの部隊が後詰めとしてユキノの部隊の後ろにいてくれるが、この辺は木や森が少ないため、ドライアードの部隊は思うような力を出せない。
僕たちが逃げたとしても精霊兵から逃げ切れるかわからないのだ。
「じゃ、行ってきます!」
ユキノは二度目の掛け声をかけると、妖精たちをつれて行った。
「オベロンの方はどうかな?」
『まだ返事はないです』
ライラから返事がある。
ライラを経由してオベロンに精霊の力を借りられないか頼んでいるのだが、まだ返事はないようだ。
精霊は基本的に人間に興味がない。妖精にすら気まぐれで付き合う程度なので、2つ離れている人間なんて知覚していないも同じなのだ。
今回、精霊を使役した方法は不明だ。しかし精霊に何らかの危害を加えているのだから人間が恨まれてもいいはずなのだが、山の噴火は単に精霊が怒った結果で現れた自然現象で、人間は直接関係ないらしい。
これは精霊に人間という存在を説明するところから始めないと、力を借りるほど説得するのは難しそうだ。
精霊兵を呼び出したのはゴッテスフルスの黒幕に違いないことはわかっていた。
しかし、その目的がわからない。
回復魔法が目当てなら、ゴッテスフルスを攻めている帝都に来る方が僕に接触できる機会が多いだろう。
それにビルネンベルクは僕の祖国と言えども、王都にはちょっとしか滞在したことがない。
そこまで情がないのが本音だ。
あいつはそこを知っているはずなのだが、ビルネンベルクの王都をおとすことを優先した。
それに続報はないものの、王都以外が落とされていないのも不思議だ。
僕はユキノの先発隊とは別に言い様のない不安に襲われていた。
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