246.噴火
シメキタでゴッテスフルスの帝都が溶岩に埋もれていくのを見ていた。
クロの話によれば帝都の人々は地下で蒸し焼きになっているのではないかということだ。
地下に避難していた理由は今となってはわからないが、噴火を予想していたのかもしれない。
「えらいことになった」
タタラが僕の横で呟いた。
「不幸中の幸いではあるが、長年暮らしてきた街が滅びるのは忍びないな」
溶岩は人間が歩く速度よりは遅い流れなので、運がいい人は逃げることも出来るだろう。
そのうちシメキタに流れてくるかもしれない。
「タルとライラにシメキタを任せるね。ここに避難してきた人を保護してあげて」
僕が警告すれば、或いはもっと逃げることができた人も多かったかもしれない。
原因は精霊を使役したゴッテスフルス自体なのだが、僕にももっとできることがなかったのか、と反省してしまう。
こういうところを割りきれないと為政者としてはやっていけないんだろう。そういう点では僕は為政者には向いていない。
悔やんでいてもしかたがない。
「今できることをやりましょう」
僕の心の声を代弁してくれるかのようにカルラが言った。
それに黙って頷く。
あの噴火でゴッテスフルスの黒幕や皇帝が死んだとは考えにくい。
皇帝は安全なところに逃げているだろう。
ゴッテスフルスの黒幕は……。
そう考えていたところで、スーが手紙を持ってきた。
封印は宰相のものだ。
封印を破って、中身を取り出す。
「なんて書いてあるの?」
スーやカルラが覗き込んでくる。
手紙には王都陥落が綴られていた。
カルラの顔が青ざめる。
カルラを座らせると、僕は続きを読む。
王都は突然現れた不死の兵士との交戦により防衛隊は壊滅。
不死の兵士にはレーザーも武器もダメージを与えることができず、なす術はなかったようだ。
相手からの攻撃は物理的にも精神的にも通ってしまい、あっという間に切り崩されたらしい。
「恐らく精霊の欠片ですね。意思を無くし、操られているのでしょう。精霊なら物理的に精神的、つまり精霊界からの頑丈でも攻撃することが可能ですし、人間界からの干渉は受けませんから」
どういう仕組みなのか首を捻っていると、ライラが補足した。
ライラの説明だけ聞くと、絶望的に思える。
しかし、ライラも神様であるタルも悲観的になっていないようだ。
「精霊なら妖精からの攻撃は通ります。ユキノを貸してください」
「わかった」
そう言いながらユキノの顔を見る。
ユキノは黙って頷く。
その表情には僅かに怒りの色が見えた。




