244.頭狩
タタラと別れたあと、宿に戻ってハイジと一緒にどんな技術者を連れて帰ろうか相談する。
期限を二週間後としてしまったので、それまでに本隊への連絡と、別行動をしているハクとソニアと合流しなければならない。
「割と忙しくなっちゃったね」
「残念」
僕もハイジともう少し交流を深めたかった。
仕方ないことなのかもしれないけど、無人島を出てから忙しくなっている気がする。
本当なら無人島に居たときの方がやることは多かったはずなのに。
「パン屋のお姉さんも連れていきませんか?」
「なんで?」
確かにあのパンが毎日食べられるのなら嬉しいけど。
「ゴッテスフルスのパンはビルネンベルクのものとかなり違うので、ゴッテスフルスから連れていく技術者が欲しがるかなと」
なるほど。
日本人が長期間、海外で生活すると味噌が恋しくなるようなものかな。
「さすがハイジ。パン屋のお姉さんも口説いて連れていこう」
「ふふふ。口説くなんて、ヴォルフも積極的ですね!」
「いや、そういう意味じゃないよ?」
これ以上婚約者を増やしたら僕もひとりひとりと仲良くなる暇もなくなって悲しくなっちゃうよ。
「まあ、パン屋のお姉さんは私に遠慮していたみたいなんで、ヴォルフに複数の婚約者がいることがわかったら、婚約者になりたがるかもしれないですけどね」
そうなのか。
僕は気がつかなかったけど……。
「あとは出来れば鉱山技師はほしいですよね」
「そうだね」
ゴッテスフルスは鉱山開発が盛んで鉱山技師も結構いるはず。数人ならヘッドハンティングできるだろう。
「鉱山技師と出会うには……」
「タタラに聞いてみるのが一番だと思いますよ」
そりゃそうだよね。
鉱山技師以外には鉱石から金属を精製する冶金技師も必要だ。もしかしたらタタラが出来るかもしれないが。
「でも一番気になるのは精霊の使役方法だよ」
これについては機密中の機密であるため、今回の潜入で情報が集まるとは思っていない。
「ライラが居れば何かわかったかもしれないですね」
確かに何かわかったかもしれないけど、わかる前にライラが怒りそうだし。
精霊は仲良くなってゴッテスフルスに協力してたわけじゃないのは空中戦艦を壊したときに、クロの依り代が壊されたことから明白だった。
「ライラには別の仕事があるし、仕方ないよ」
実際はノームあたりが僕と連絡とって、オベロンを呼ぶのが良さそうだけど、オベロンは森の王だし、鉱山はどうなのかな?
「とりあえず、明日はパン屋のお姉さんにお仕事を紹介してもらうから、早めに寝ましょう」
ハイジはちょっと残念そうだった。
「そうだね」
ハイジとそういうことになるんじゃないかって、一瞬身構えた僕は自意識過剰だったようだ。




