235.帝都
奪取したホバーを使った急造のホバー部隊の偵察によると、帝都に人影が見えないそうだ。
人が暮らすしている跡はあるようなんだけど、要領を得ない。
「まさか黒幕がゴッテスフルスの人々を消したわけじゃないですよね?」
カルラがこう考えるのには訳がある。
空中戦艦には人間が少なかった。整備室に人はいたし、艦橋にも人影は見えた。
しかし、墜落した空中戦艦から人間の遺体は見つからなかったのだ。
幽霊ではない……と思うんだけど……。
僕の知る知識を総動員して考えれば、転送したのではないかと思う。
異世界転生小説で有名なダンジョンから脱出するために使われる転移魔法やアイテムなんかがこの世界でもあれば可能性はある。
もしそれが安価に手に入るものなら、船に脱出装置が着いてなかったのも頷ける。
「これは実際に乗り込んで見るしかないね」
このままモタモタしていてもゴッテスフルスに準備する隙を与えるだけだ。
「ふと思ったんですけど、ゴッテスフルスの人たちは鉱山技師が多いと聞きます。地下に潜んでいるということは考えられないでしょうか?」
「その可能性もあるね……」
カルラの推測が正しければ帝都の奥へ進んだあとに全方向から攻撃される最悪な状況になる。
地下への入り口を先に探すべきだろう。
帝都の人が全員隠れることが出来るなら入り口は複数あるだろうし、地下の範囲も大きいのだろう。
「ノームに頼めばいいのでは?」
ユキノが僕の後ろから声をかけてきた。
「ノームを呼ぶ時間がないと思うけど」
「忘れたんですか? 妖精界はどこにでも繋がってるんですよ」
そう言えばそんなことも言われたな……。
「じゃあ、ライラとユキノでノームに協力を仰いで。出来るなら新しい入り口を作ってそこから潜入したい」
「奇襲ですね!」
奇襲だけど、一般市民がいるのでピンポイントでいきたい。
「最初は構造を把握しなきゃ。奇襲より偵察が先だね」
迷路みたいになっているのなら最初にマッピングが必要だ。
こういうときにクロなら抜群の記憶力があるので、余裕なんだろうけど、クロは後方の主力と一緒に行動している。
これは物理的にネットワークを守らなきゃならないので必要なことだ。
藁人形の代わりになる入れ物をがあればいいんだけど、今のところクロのメインルーチンが全部入るようなものは見つかっていない。
「潜入部隊は誰にしよう?」
「ここは私たちにお任せあれ」
ハイジとハク、それにソニアが前に出てきた。
「話は聞かせてもらったわ!」
「ここは商人の腕の見せ所ですね」
ソニアもハイジも張り切っているようだ。
「じゃあ、任せちゃおうかな?」
ソニアだけだと戦闘力がなくて不安だけど、魔法が使えるハクやハイジが一緒なら窮地に陥っても乗り越えられるだろう。
とりあえず、新しい入り口をノームに作ってもらうのを待つとしよう。




