234.複製
僕とカルラが空中戦艦から飛び降りると同時に甲板が歪に膨らんで爆発した。
並べて置かれていたホバーが吹き飛んでくる。
パワードスーツの自動防御機構が働き、半自動で腕が動いてホバーを受け流す。
カルラはタレットやハイジに教わったであろう風の魔法を使って受け流していた。
しかし、敵の脱出用に残しておいたのに……。
空中戦艦の下部にある艦橋を見るが特に混乱は見てとれない。
「クロ、大丈夫?」
通信回線を通してクロに呼び掛ける。
『ダイジョブ。となりの精霊もタスケル』
そう聞こえるが早いか、期間の回りに浮いていた空中戦艦が複数、爆発した。
「え?」
思わずカルラと顔を見合わせる。
「クロ?」
クロがやったのだろうか? しかし、どうやって?
『ゲンゴ機能にソンショウ。直前のニンムを継続中』
クロの大まかな仕組みはクロの本体である藁人形がメインコンピュータで、その辺の「空いている」石などの無機物が外部計算リソースとなっている。
クロの言語の殆どは外部計算リソースが担当していたと思うのだが……。
『回復完了しました。藁人形を消失したため、中枢機能を外部リソースに再構築しました。継続中の任務は5分以内に完了する予定です』
藁人形が無くなってしまったのか。
「わかった。クロの本体って移動できるようになる?」
『適切な入れ物を見つけるのに時間がかかりそうです。しばらくはシメキタ周辺を帝都方向へ制圧しながら移動します』
これから帝都へ行く予定なので、あまり問題ではないけど、少し心配だ。
この世界ではネットワークが充分に発達しておらず、ネットワーク的な逃げ場がほとんどない。
その上にネットワークと物理世界が密接に関わっており、物理的な破壊でネットワークも容易に破壊される。
「こちらもなるべく制圧しながら進むからクロも気をつけて進んで」
『はい。わかりました』
最後の空中戦艦の爆発を見届けると、僕とカルラはビルネンベルク軍に合流した。




