231.同期
「侵入者だ!」
ゴッテスフルスの兵士に見つかって、艦内に警報が鳴り渡るかと思ったが、そんなことはなく、単に兵士たちが騒いでいるだけだ。
「警報がならないけど、クロが何かしてるの?」
『いえ、まだなにも』
どうやらこの兵器は急造されたものらしく、内部の設備も揃っていないらしい。
空中戦艦の運用を実用レベルにするには、圧倒的な経験値不足なのだろう。
「じゃあ、カルラ。タレットで無力化をお願い」
「はい。わかりました」
言うが早いか、カルラはタレットを整備室の上に20個ほど浮かせると、兵士たちをレーザーでうち始める。
レーザーは光ってから避けるのは事実上、不可能な上に、宰相派の無人化技術で避ける方向とタイミングを予測して発射しているため、常に動き続けていても当たってしまう。
前世では誘導弾が主流の空中戦だったけど、レーザーに充分な威力が期待できる、この世界ではわざわざ高エネルギーを相手の近くまで持っていく必要がない。
「制圧完了です。進みましょう」
カルラを先導して僕は整備室に降りる。そこそこの機械があるが、ほとんどはホバーを載せる台座だ。
カルラもそうだけど、魔法を使って修復した方が機材も部品も積まないで済む。空中戦艦の軽量化のために人間が生活するのに必要なもの以外はあまり積んでいないのだろう。
もし材料が不足してきたら、故障が酷いものや台座を材料にすればいいし。
「下の階層へ降りる階段は、ないみたいですね」
その代わり、単なる穴が空いている。ちょうど台座が通れるぐらいの穴だ。
恐らく台座を使って兵士の昇降もするのだろう。
「あの穴から突入するしかなさそうだね」
下には大勢の兵士がいると思われる。
穴を覗いた瞬間から攻撃を受けるかもしれない。
それに穴の位置は空中戦艦の端に寄っており、動力源へすぐに行けそうにないようだ。
「思ったんですけど」
カルラが遠慮がちに話す。
「真ん中に穴を開ければ動力源へ直接行けるんじゃないですか?」
僕は ポンと手を打った。




