228.徹底
僕たち、第一軍が防護柵に手間取っている間に、第三軍がシメキタへ侵入することに成功した。
『山側の防御が崩壊しました』
第一軍の遊撃隊にいるユキノから連絡があった。
『今から第一軍が攻めている方向へ進軍します。クロの支配地域を西側へ片寄らせてください』
「わかった。クロ!」
『聞いてました』
クロの支配エリアが取り返されるような動きはないけど、まだ油断はしない方がいい。
「クララは奪取したホバーでタレットを東側はばら蒔いて」
『わかりました』
クララが新しく作ったタレットには防御機構が備わっている。簡単に制御を奪い取ったり、上書きして無効にしたりできない。
またレーザー対策として、タレットの自爆機構を追加してある。手榴弾のように爆発自体ではなく、それによって飛び散る鉄片がダメージを与えるタイプだ。
タレットが無効化されるには時間がかかるし、無効化される前に地雷源ならぬタレット源の中を突っ切るのも難しいだろう。
「10分ごとに100m進む」
『了解』
クロとユキノから返事が来た。タイミングをあわせて進軍する方が相手の戦力が大きく移動しないでいい。
このまま行けば、相手は逃げ道をなくし早々に降伏すると思われた。
『ゴッテスフルスの帝都から大船団。ホバー千機、見たこともない空飛ぶ船が10機以上!』
第二軍の後方部隊から悲鳴に近い報告が来た。
『ふた手に別れて撤退』
バルド将軍の判断は速かった。見たこともない戦力と交戦するには状況が悪すぎる。
「第一軍と第二軍はタイミングを合わせて撤退する。10m30秒」
全軍の指揮権は僕が持っているので、この命令はジラフ王子の命令より優先される。
『合流する』
ジラフ王子も意図はわかったようで撤退を開始してくれるようだ。
シメキタの北にいる第二軍はシメキタの東と西に別れて、南にいる第一軍と合流する。第三軍は第一軍を支援しつつ撤退していくと思う。
撤退の難易度が高い東側はバルド将軍が率いているようだ。
「まさか空中戦艦まで作っているとは……」
前世ではとても考えられなかった兵器だ。
空中に浮くには揚力か浮力に頼るしかない。
浮力に頼れば機敏に動くことは不可能になる。前世では気球や飛空船がそれに当たる。
それに浮力を確保するには軽い気体を使うことになり、多くのケースで爆発しやすい気体を使うことになる。
それに空気に対する浮力はどんな気体を使っても微々たるものなので、重い兵器を載せることは出来ない。
揚力に頼れば機敏に動くことは可能だが、常に前進し続けなければならない。燃料を消費することもあるが、何より制空権を確保するには何機も飛行機が必要になる。
仮に大型の飛行機を作ったとしても問題解決には繋がらない。
今も続けられている報告によれば、空中戦艦はホバーと足並みを揃えて進軍している。
武装もホバーに搭載されているものと比較にならないぐらい大口径で多種多様なようだ。防御に関してもそれなりの機材は積んでいるだろう。
「これは電子戦で勝つしかなさそうかな……」
パワードスーツとタレット、それに鉄猪では空中戦艦に勝つことは難しいと思われた。
何より対空兵器はホバーを想定したものしかなく、空中戦艦のような大型の兵器には通用しないだろう。
カルラのメテオーアやドーラのブレスが辛うじて対抗できる兵器だと思うけど、相手の数が多すぎる。
クロを連れて戦艦に侵入し、制御を乗っ取るのが一番効果が高そうだ。
「カルラ、クロ。ドーラにのって空中戦艦に乗り込む。ドーラ、一旦、第一軍と合流して」
『承知した』
補給線を支えていたドーラを呼び戻したので、地上部隊はビルネンベルクまで撤退してもらうことになる。
ここからは少数精鋭で白兵戦だ。
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