226.制圧
シメキタの防備は当然ながら僕が率いる第一軍の方が一番厚くなっている。
その次にバルド将軍の率いる第二軍が封鎖している帝都と繋がる街道方面。
一番薄いのが、山岳地帯と繋がる街道方面だ。
ここはジラフ王子が指揮をする第三軍が封鎖している。パワードスーツを配備する余裕ごなかったため、戦力的には一番弱い。
しかし、第三軍の背後には山しかなく、これを突破して逃げられる人数はたかがしれている。
籠城されたら厄介ではあるが、山間部に食糧の生産拠点がないため、多くの兵士は養えない。
必然的に逃亡のルートからは外れる。
よって、主に攻めいるのは僕たち、第一軍と第三軍ということになる。
作戦としては、第一軍が正面から攻撃して敵の主力を引き付け、第三軍が防護柵を抉じ開ける。
そこから第三軍と第一軍の遊撃隊が侵入して占領するという作戦だ。
兵士の人数からして、市街戦に突入することは考えにくい。ゴッテスフルス側が焦土作戦を敢行することを考えているのなら話は別だが、焦土作戦をやったところで、シメキタは交易拠点のため効果は薄いし、帝都の隣に位置する街のため、ここに敵が拠点を形成することをよしとはしないだろう。
『防護柵の手前から投擲を試みていますが、対空防御は固いですね。ホバーがほとんど打ちおとしたり、跳ね返したりしています』
第一軍の先鋒隊長が報告してくる。
第二軍や第三軍も同じような状況のようだ。タレットを使ったレーザー攻撃に至っては無力化されている。
『突撃しますか?』
今までほとんど犠牲を出してこなかったけど、この戦いは犠牲を覚悟しなければならないかもしれない。
「ホバーに乗ってるのって人間だよね?」
スーが僕に聞いてくる。
「そうだけど、結構離れていると思うよ」
スーは菌と話が出来るのだが、今まで至近距離に限られていた。
「これぐらいならいけそう。あの空を飛んでるのならもう少し進めば大丈夫」
スーは菌と話せる以外は普通の人間と変わりない。体力なんかは僕より低いぐらいだ。
「じゃあ、ナターシャを護衛につけるね」
「任せてくれ」
ナターシャは胸をドンと叩く。
「行ってくる!」
スーはナターシャを引き連れて天幕を出ていった。
これで正面の主戦力が削れるため、第三軍方面が手薄になっていくはずだ。
「クロもそろそろ電子制圧に出撃してもらおうかな?」
相手が継続的に計算ノードを潰していなさそうなので、クロが至近距離へ移動して計算ノードを作っていけば、ホバーなどを無力化出来るようになる。
そうすればますます正面戦力を増強するために、第三軍方面から兵力を回す必要が出てくるだろう。
「では、カルラとレトをお借りします!」
クロの護衛としてカルラ、助手としてレトが同行する。
「必ずや任務を達成してきますね!」
カルラもレトも士気が高い。
この戦いでゴッテスフルスとの決着がつけば、ゆっくり時間を取れるようになるというのが大きいようだ。
何に時間を使いたいのかはあまり考えないことにする。
ゴッテスフルスの黒幕がビルネンベルク王都にいるのに、こんなところへ来ていていいんですかね……




