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【17万PV】戦略級美少女魔導士の育て方  作者: 小鳥遊七海
第1章 無人島サバイバル
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202.侵略

 多少の問題があったものの、僕たちはシメキタ攻略の準備を終えて出発した。


「シメキタは交易都市なので、防備は緩い方だね」


 貿易都市というものは外部からの侵略を想定して作られていない。大抵の場合、交通の便の良い平地に作られて、お飾り程度の塀で囲まれているだけだ。


 この辺はいくら機械化が進んでも長い歴史がないと、解決できる問題ではない。なにしろ、城壁を作ろうにも平地ゆえに回りには巨大な石がない。


 川があれば多少はマシなのだろうけど、それでも何万人が生活するような都市を囲う城壁を作るとなると、十年程度ではどうにもならないだろう。


「特に空からの防備はないに等しいね。自分の国は空を飛べる兵器があるのに」


 レトが首をかしげた。


「だからこそですよ。シメキタは何の防備もないですけど、あのホバーが何機も配備されています。ドーラでも撃退されることは必死です」


 リンダにそう言われると、非戦闘時に都市を制圧できるスーを連れてくれば良かったかなと考えてしまう。


 しかし、スーの能力で都市を制圧しても、継続するための戦力に欠けるので、別の問題が発生するだけだ。


「ホバーを最初に無力化しておきたいよね……」


 そりゃ、対ホバーを想定しての陣営だけど、ここ最近は想定外の事態が続いている。それも命の危険のあるようなことが。


 目に見えるリスクを排除できるのなら、それにこしたことはない。


「いい案があります!」


 クロが僕の肩で手を上げた。


「ホバーに魔法を書き込んでしまいましょう!」


 所謂ハッキングというものだけど、それが出来たら対魔法兵器に関しては最強過ぎるのではないだろうか。


 逆に考えれば、こちらのタレットを操られるリスクがあるわけで、もしハッキングまがいなことが出来るのならこちらも対策を考えなくてはならない。


 アーティファクトは一度書き込んだものは上書きできないのがセオリーであり、以前にクロと戦ったときに勝てたのは「空き」があったからだ。


「ホバーの残骸を分析したところ、空きがかなりあります。こちらの有利になるような術式を仕込んでおけるでしょう」


「それって一台当たりどれぐらいの時間がかかるの?」


「ほんの少しです。私が既にシメキタの大部分を把握済みです」


 まだシメキタが見えていないのだけど、クロの計算ノードがたくさん出来ているらしい。便宜上、計算ノードと呼んだけど、それはセンサーの役割も持っているため、カルラのインテリゲンよりも高度な情報収集が可能なようだ。


「選択肢としては、ホバーの要である風を起こす機能に干渉し飛べなくさせる、魔力の供給路に細工し爆発させる、遠隔操作により私が操作してろかくする、の3つがあります」


 最後のが一番いい案のような気もするけど、何台あるかだよね。たくさんあるようだから、人数分貰えばいいような気がする。


 あとは飛べなくさせればいいだろう。


「7台はろかくして、あとは飛べなくすることが出来る?」


「今すぐに実行してもいいですか?」


「そうだなあ……」


 今すぐにしてしまうと、こちらが到着する前に別の方法で対処されてしまうかもしれないので、相手がこちらを発見する直前が望ましいと思う。


 問題はそれがどの程度の範囲かということだけど。


「ゴッテスフルス軍の警戒網がどの範囲かわかる?」


 ここはクロの情報網を活用する場面だよね。


「そう広くはないようです。ビルネンベルクとの国境のちょうど中間辺りです」


「わかった。その直前で夜営の準備をするから、夜明け前に無力化とろかくをお願い。ろかくしたホバーで進軍する」


 風林火山は有名だけど、これほど風と林と火を具体的に実行する作戦もそうはないだろう。


 最後にシメキタを占領して「動かざること山のごとし」となれば完璧だ。



◆ ◆ ◆



 夜営地点に着くとぼんやりとだけど、シメキタの明かりが夜空を明るくさせていた。


 交易都市なので、商人たちが旅の疲れを癒すような施設もたくさんあるんだろう。


 僕は行ったことがないけど、兄たちはザッカーバーグにある『夜の町』によく行っていた。


 僕もなんとなく、そこに何があるのかはわかっているけど、今行ったらきっと半殺しにされそうなので、興味を持たないようにするしかない。


『童貞をくだらん女で捨てるなよ』


 ニーベルが僕の精神に話しかけてくる。


 妖精同士ならこういう会話方法も取れるみたいだけど、そういえば妖精にこういう風に話しかけられたのははじめてな気がする。


 接触していればテレパシーみたいな会話も出来るんだろうか。


『そういうのは僕にはまだはやいよ。それにその前にやることあるしね』


『わかっているならいい』


 ニーベルはまた黙ってしまった。


 ニーベルは何をするにも大量の魔力が必要になるらしく、常に静かだ。


 とても世界を支配できる指輪とは思えない。


「酒はありそうだな」


 ドーラが物欲しそうな目で街の灯りを見ている。


「シメキタを占領してもまだ戦いの日々は続きそうですし、お酒をたくさん飲むのはもう少しあとになりそうです」


 カルラがドーラに樽を渡しながら言った。


「そうだな。今は酒よりも戦いの方が優先だ」


 そうは言ってもいつも戦いばかりしているわけにもいかないことは僕もわかっている。シメキタは単にゴッテスフルスと宰相派の繋がりを調べるための行動なので、それが分かればお土産を買ってすぐにヴァッサーへ退却するまでだ。


「無事シメキタを占領出来たらお土産にたくさんお酒や名産品を買おう」


 シメキタで焦土作戦とかやられると買えなくなるので、ここはスマートにいきたい。


 焦土作戦とは、進軍してくる敵に補給や休憩場所を与えないように文字通り街や田畑を焼き払ってから退却する作戦だ。


 これは余程深いところへ進軍してくるようなことでもない限りやらないし、何より住民が敵に回る。


 生産能力が中世よりマシと言っても基本は人がいないと何も作ることができない。


 前世で言う「緑の革命」というところはでは至っていない。


 もっとも、この世界は広く、人口が少ないため、極論すれば狩猟や漁だけでも生きていけないことはないだろう。


 日本人だけで世界中の魚を食べ尽くしてしまうようなことは起こらないだろうし、砂漠化もほとんど進んでいない。


 これには何かしらの理由があるのだろうけど、僕にはまだその理由はわかっていなかった。


「では、明日に差し支えないようにすぐにお休みしましょう」


 夜の見張りにはカルラのインテリゲンとクロがいるので、見張り番は要らなかった。


 こういう細かいけれど、頻繁に必要になる便利スキルはチートだよなあと思う。


「ヴォルフにお話があるので、ちょっとこっちへ来てくれませんか?」


 みんなが自分のテントへ向かっている中を夕飯縫うようにしてカルラが近付いてきた。


「なに?」


「ちょっとこちらへ」


 カルラは要件をみんなの前で言いたくないようだ。


 僕は大人しくカルラの後について夜営地から離れた場所へ歩いていく。


 カルラの後ろ姿を見ていると、無人島で初めてあったときよりも大人っぽい体つきになったような気がする。


 うまく言葉では言い表せないんだけど、おしりが少し大きくなって細い腰が強調されていると言うか、女性らしさが増していた。


「カルラって、大人っぽくなったよね?」


「え?! なんですか、急に!」


 ばっと振り向くと、恥ずかしいのか顔に手を当てている。


 夜の暗い中ではあるが、頬が赤くなっているのがわかった。


「……き、今日はエッチなことはダメですよ」


「い、いや、そういう意味ではなかったんだ。ごめん」


「ふふ。シメキタは夜の繁華街が多いと聞きます。ヴォルフが行きたいのならそういうお店に一緒に行きますか?」


 カルラといくと言うと、キャバクラのようなところではないだろうし……あ、ラブホテル的な?


 江戸時代にはお茶屋さんと言えば、そういう部屋も貸していたらしいし、この世界にもそういう場所があることは何となく知っていた。


 しかし、カルラはまだ13歳だし、そういうことは早い気がする。


 この世界の結婚適齢期は早いと言っても大体十六歳だ。


 子供を産むのには体力が必要なので、個人差はあるものの十六歳を迎えるまではそういうことをしないのが常識ではある。


「ま、まだやめておくよ」


 今まではカルラのお父さんであるビルネンベルク王に挨拶するまではと思って断っていたが、ビルネンベルク王は亡くなっている。さらにカルラの母親も既に他界しているため、僕たちの結婚に反対できるような人はほぼいない。


 僕の方は王都から正反対のところにあるザッカーバーグ領の三男なので、何の問題もない。むしろ、大喜びだろう。


「私は待ちきれないです。少しだけいいじゃありませんか」


 夜の月明かりに照らされて、赤く上気した頬がより僕の劣情を煽ってくる。


 カルラが好きなので、すぐにでもエッチなことをしたいと思っている。


 でも、最初に決めたことを破るのはいけないことのような気がしていた。


 前世の倫理観に照らし合わせても13歳としてしまうことはいけないことなんだけど。


 僕は雑念を振り払うように首をふった。


「もう少しだけ待ってて。カルラが十六歳になるころには僕がこの国をカルラへ贈るよ」


 僕の台詞を聞いてカルラは更に赤くなった。






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