第3話 血風の戦士その3
3–3 血風の戦士その3
「まったくよぉ…なんなんだあいつは…」
「例の殺人犯…とみて間違いないでしょうね。あなたの肋骨を三本折って意識を断ち切るような実力をもった」
あのオフィスを離れて約三時間経過。
俺たちは篠宮さんの家で一旦体制を立て直すことにした。
「ったく、あの程度で能力使うんじゃねーよ」
「あの程度…ね。折れた三本の内二本が肺を掠めてた癖して、よく言うわよ」
「あれは不意打ちだったからだ…次は必ずぶっ殺す」
「まぁ、怪我だけはやめてよね。私だって手当をする程の手間で使える能力じゃないんだし、次大怪我したら治せる保障はないわよ?」
「ふん、誰が怪我なんてするかよ」
時計の針は、四時近くを指していた。
「とりあえず今日は一旦解散にしましょう。あの女を見つけたらすぐに連絡して」
「わかりました」
その日はそれで家に帰ることとなった。
「今日、柚月くんはその女を見たんだよね」
「はい、確かにこの目で。今思えば、セーラー服を着ていた所や背格好からして学生かもしれません」
「ここら辺では、中学が一つ、高校が三つね」
「恐らく高校生だと思います。しかし、高校生…僕達と同じくらいの年頃で殺人犯なんて…」
俺には信じられなかった。
それも女が。
「ありえない話では…ないのかも。二人の話から察する戦闘力と、『みんな消えた』という言葉」
「ええ、そう言ってました」
「一つわからないことがあるのよね」
「ええ、なぜあのロッカーの中にいたのか」
「恐らく私達が入ってきたことは早い段階で気づいていたはず。なのになぜ…」
あの威圧的な眼光。
周囲を圧し殺す様な空気の奔流。
未だに目に焼き付いている。
「じゃ、ここで」
「ええ、また明日」
T字路で別れると、周りの家から美味しそうな匂いが漂ってきた。
ジュルリ…
「腹減ったな…」
なんだか色々疲れる一日だったな。
帰って、今日はぐっすり寝よう。
そう心に決めて、俺はポケットに手を突っ込んだ。
夕日が眩しい。
まだ春風が鼻を擽る季節、日暮れは早い。
軽くも重たくもない足取りで、俺はいつもの道を帰った。
これで第3話は終了です。次回4話に続きます。